抗がん剤による代表的な副作用である、悪心・嘔吐・食欲不振。
これらの副作用は、患者のQOLを著しく低下させるため、患者が抗がん剤による治療を拒否する代表的な要因のひとつです。
悪心や食欲不振では、骨髄抑制とは違って致死的な副作用となる事は稀ですが、患者にとって非常に苦しい自覚症状を引き起こす副作用です。
自覚症状を引き起こす副作用というのは、抗がん剤治療継続に関わる重大な副作用です。
出来るだけ悪心・嘔吐・食欲不振が発現しないように、副作用対策を行うことが大切です。
そこで本記事では、悪心・嘔吐・食欲不振の基本から、副作用マネージメントの方法までをご紹介します。
悪心・嘔吐・食欲不振の原因とは?
悪心・嘔吐・食欲不振は、抗がん剤による代表的な副作用の1つですが、抗がん剤以外の薬剤や、“がん”という病態そのものが原因となることもあります。
問診時には、抗がん剤以外の原因を見落とさないようにすることが大切です。
悪心・嘔吐の原因となる抗がん剤
制吐薬適正使用ガイドライン では、『制吐薬の投与なしで、抗がん剤投与24時間以内に発現する急性期の嘔吐発現の割合』で催吐リスクが分類されています。
高度催吐リスク(嘔吐発現割合>90%)
- AC療法
- EC療法
- シスプラチン
- など
中等度催吐リスク(30~90%)
- イリノテカン
- オキサリプラチン
- カルボプラチン
- ベンダムスチン
- など
軽度催吐リスク(10~30%)
- エトポシド
- ゲムシタビン
- ドセタキセル
- パクリタキセル
- 5FU
- など
最小度催吐リスク(<10%)
- セツキシマブ
- トラスツズマブ
- ニボルマブ
- ベバシズマブ
- ペムブロリズマブ
- など
食欲不振の原因となる抗がん剤
食欲不振は悪心・嘔吐以外に、味覚障害や口内炎が原因となる場合があります。
原因の鑑別が必要です。
味覚障害を起こしやすい抗がん剤
味覚障害を起こしやすい抗がん剤はタキサン系やプラチナ製剤などです。
フッ化ピリミジン系(5FU)なども、粘膜障害を要因とした味覚障害を引き起こします。
口内炎を起こしやすい抗がん剤・レジメン
- UFT+ロイコボリン
- FOLFIRI
- AC
- CHOP
- エベロリムス
- アファチニブ
- FOLFOX+Pmab
- など
抗がん剤以外の悪心・嘔吐・食欲不振の原因
- 消化器がん、特に胃がんの手術後には、胃切除症候群の1つとして食欲不振が発生しやすい。
- 便秘やその他消化管運動の低下によって、食欲不振が発生する場合がある。
- 大量の嘔吐の場合、消化管閉塞の可能性を疑う。
- 癌性疼痛に使用されるオピオイド(医療用麻薬)は、悪心・嘔吐・食欲不振の原因となる。
- その他病勢の進行や、転移、電解質異常等にも注意を要する。
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悪心・嘔吐・食欲不振の副作用対策
ここからは、制吐薬適正使用ガイドラインで推奨されている制吐療法をご紹介します。
副作用対策は、各薬剤(レジメン)の催吐リスクに基づいて決められており、催吐リスクの高い抗がん剤投与時には積極的に吐き気止めを使用し、催吐リスクの低い抗がん剤の場合、積極的な制吐剤の使用は推奨されていません。
やみくもに吐き気止めを使うのではなく、出来る限りガイドラインに準じた副作用対策を行うことが大切です。
高度催吐リスクに対する制吐療法
- 5-HT3受容体拮抗薬
- アプレピタント
- デキサメタゾン
中等度催吐リスクに対する制吐療法
- 5-HT3受容体拮抗薬
- デキサメタゾン
- アプレピタント(オプション)
カルボプラチンやイリノテカンを使用する際には、アプレピタントの併用を考慮しましょう。
アプレピタント併用時には、デキサメタゾンの用量に注意です。
軽度催吐リスクに対する制吐療法
- デキサメタゾン
最小度催吐リスクに対する制吐療法
通常、予防的な制吐療法は推奨されていない。
その他の制吐剤
- オランザピン
- メトクロプラミド
- ドンペリドン
- モサプリド
- 抗ヒスタミン剤
- 六君子湯
- ステロイド
- など
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