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フリーランス薬剤師のはいたっちです!!
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がん化学療法患者は、強力な殺細胞系抗がん剤の投与により、自己免疫が低下しています。
一方で、近年登場した免疫チェックポイント阻害薬を投与されている患者では、自己免疫が増強していることも予想されます。
こんな複雑ながん化学療法中の症例に対して、ワクチンの摂取はどのように考えたら良いのでしょうか?
インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなど、ワクチン接種を検討する場合について考えてみたいと思います。
Contents
がん化学療法中にワクチンの摂取は推奨されるか?
化学療法前にインフルエンザワクチンを接種することが勧められる
- 化学療法を受ける患者には,化学療法前にインフルエンザワクチンを接種することが勧められる。
- 肺炎球菌ワクチンについては,インフルエンザワクチンに比べ有用性に関する情報は乏しいものの,接種することが望ましい。
乳がん診療ガイドラインによると、化学療法前のインフルエンザワクチンの摂取が推奨されています。
*)化学療法の内容(レジメン)にもよりますので、一括にすることはできませんが、乳がんGLではこのような記載となっています
化学療法開始前2週間前までに摂取を!
インフルエンザワクチンの接種時期については、化学療法開始前(2週間前)までの摂取が望ましいということが記載されています。
すでに化学療法導入中の患者においては、nadir(白血球が最も低くなるタイミング)の時期を避けて投与することを検討しましょう。
肺炎球菌ワクチンもケモ開始前の投与が望ましい
乳がんGLにおいて、肺炎球菌ワクチンに関しても化学療法開始前の投与が望ましいと記載されています。
がん化学療法患者には生ワクチンは原則使用しないこと!
米国感染症学会による『免疫不全者に対するワクチンガイドライン』によると、がん化学療法や放射線治療など、免疫抑制状態が予想される患者に対する生ワクチンの投与は4週間以上前に行うことが基本だとされています。
加えて、がん化学療法中はワクチンに起因する感染症のリスクのため、生ワクチンの接種は原則禁忌とされています。
参考≫Rubin LG, et al:Clin Infect Dis. 2014;58(3): e44-100.
免疫チェックポイント阻害薬投与時のインフルエンザワクチンの予防接種は?
近年、オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害薬による治療が増加しています。
これらの薬剤は『自己免疫を増強する』というものであり、従来の化学療法とは180度考え方が異なります。
これら免疫チェックポイント阻害薬の治療を受けている患者さんにおいて、インフルエンザワクチンの予防投与はどのように考えたら良いのでしょうか?
欧州臨床微生物・感染症学会(ESCMID)より
ESCMIDによると、ニボルマブ・ペムブロリズマブ・アテゾリズマブ投与患者のワクチン摂取は通常通りで良いとされています。
irAEが増加するという報告もあるようですので、まだはっきりしていないようです。
日本国内学会等の見解が待ち遠しいですね。
参考文献≫ ESCMID Study Group for Infections in Compromised Hosts (ESGICH) Consensus Document on the safety of targeted and biological therapies: an infectious diseases perspective (Immune checkpoint inhibitors, cell adhesion inhibitors, sphingosine-1-phosphate receptor modulators and proteasome inhibitors).
がん化学療法患者へのワクチンの摂取まとめ
- インフルエンザや肺炎球菌などの不活化ワクチンは摂取推奨
- 投与時期はケモ開始2週間前までが理想的
- ケモ中に生ワクチンは原則使用しないこと
- 免疫チェックポイント阻害薬投与時のインフルエンザワクチンの摂取は通常通りでよい?(さらなる研究が必要)