近年、薬剤耐性菌(AMR)による感染症は、無視することができないレベルにまで拡大しています。
参考記事
薬剤耐性菌の蔓延を抑制するためには、抗菌薬の適正使用が欠かせません。
抗菌薬を適正使用するための方法の1つに、デ・エスカレーションという手法があります。
本記事では、デ・エスカレーションの目的や、その具体的な方法を解説します。
おすすめ読者様
- 病院で働くスタッフ
- 開業医
- 調剤薬局のスタッフ
デ・エスカレーション(De-escalation)とは?
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*)めちゃめちゃ分りやすいです
感染症診療において、超急性期(初回診断時)の状態で『原因菌(起炎菌)』を突き止めることは困難です。
患者の臨床症状を診て、『肺炎かな?』『菌血症かな?』『尿路感染かな?』というように感染臓器の探索を行います。
例えば、こんな症例です・・・
高齢者肺炎の原因菌は?
- 高齢者。
- 全身状態不良。
- インフルエンザのシーズンでもないのに、38度台の発熱がある。
- 咳がある。
- レントゲンで炎症像が確認できる。
- 白血球やCRPが高い。
- 脱水がある。
- 基礎疾患にCOPDがある。
- 3週間ほど前に近医にてクラビットが処方されている。
参考
【薬の説明】レボフロキサシン / LVFX(クラビット)ってどんな薬?
このような症例の場合、“少なくとも”肺炎があるという事は分ります。
しかし、肺炎だけではなく、尿路感染症もあるかもしれないし、菌血症もあるかもしれません。
ましてや、『どの菌による感染か?』なんて分りません・・・
初期治療(エンピリックセラピー)とは?
感染症患者が『どの菌に感染しているのか?』という事は、患者の過去の保菌状況や、様々な疫学データから、ある程度推定できますが、実際の原因菌は細菌培養してみないと分りません。
*)培養したからといって必ず原因菌が分るわけではありません
しかし、培養の結果が出るには数日かかります。
数日間待ちますか??
それはできません、全身状態不良の高齢者です。
すぐにでも抗菌薬治療を開始すべき症例です。
このような場合に行われるのが、初期治療(エンピリックセラピー)です。
想定される原因菌を幅広くカバーするような、スペクトラムの広い(いろんな菌に効く)抗菌薬を投与します。
この考え方がエンピリックセラピーです。
エンピリックセラピーのデメリット
『どの菌にでも効く抗菌薬があるのなら、常にそれを使えばいいじゃん。』ということなのですが、そんなに単純なことではありません。
どの菌にでも効く抗菌薬というのは、薬剤耐性菌(AMR)を出現させやすいことがわかっています。
こんなことをやってしまうと、耐性菌の温床を生み出すことになります。
ではどうしたらいいのか?
そんな時に使うのがデ・エスカレーションです。
デ・エスカレーションとは?
まずはエンピリックセラピーで、幅広い菌を攻撃します。
その間に細菌培養を行い原因菌を検出したり、治療によって病態の改善を図ります。
その後、『判明した原因菌にターゲットを絞った抗菌薬に変更する』という手法が、デ・エスカレーションです。
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デ・エスカレーションのメリット
デ・エスカレーションには様々なメリットがあります。
薬剤耐性菌(AMR)の発現抑制
デ・エスカレーションによって、ターゲットを絞った治療を行う事で、AMRの発生を抑制することが可能です。
CD腸炎(クロストリジウム・ディフィシル)の発症抑制
広域抗菌薬(いろんな菌に効く抗菌薬)は、CD腸炎という副作用を発症することがあります。
*)狭域抗菌薬でもあり得ます
広域抗菌薬によって、腸内細菌(善玉菌)が死滅してしまうので、普段は大人しいクロストリジウム・ディフィシルという菌が、悪さをすることがあります。
デ・エスカレーションすることで、CD腸炎のリスクを減らすことができます。
医療コストの削減
一般的に、広域抗菌薬というのは薬価が割高です。
そりゃそうですよね。
『何にでも効く』なんて、そんな夢のような薬を使っているわけですから、お安いわけがありません。
デ・エスカレーションすることで医療コストを下げることが出来ます。
*)耐性菌感染症を抑制することができれば、大幅な医療費削減になります。
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デ・エスカレーションの方法は?
デ・エスカレーションのメリットが分っていても、『本当に抗菌薬を切り替えても大丈夫なのか?』という不安があります。
『メロペネムからタゾバクタムピペラシンに切り替えたって、デ・エスカレーションにならないよね?』なんていう疑問もわいてきます。
どんな時にデ・エスカレーションができるのでしょう?
デ・エスカレーションができるとき
感染巣が明らかな時
感染巣が明らかで、他の感染症が否定されている時にはデ・エスカレーションを検討すべきです。
適切な検体から原因菌が判明している時
適切に採取された検体(他の細菌の混入が否定できる)から、原因菌が判明していれば、その菌をターゲットにした治療に切り替えられます。
初期治療の経過が良好で、患者状態が悪くない
患者の臨床症状が改善していて、経過が良好な場合は、デ・エスカレーションが検討できます。
患者をフォローアップできる時
デ・エスカレーション後、すぐに外来治療を行うには十分な注意が必要です。
治療変更後の反応や副作用などをフォロー可能な状況で行いましょう。
デ・エスカレーションばかりをねらうのではなく、患者にとって最適な治療を選択する過程で、デ・エスカレーション“も”考慮するという事が大切です。
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