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【抗菌薬の使い方】デ・エスカレーション(de-escalation)とは一体何?

 

近年、薬剤耐性菌(AMR)による感染症は、無視することができないレベルにまで拡大しています。

参考記事

【AMRとは】抗菌薬の使い過ぎで毎年70万人が死んでいる

 

薬剤耐性菌の蔓延を抑制するためには、抗菌薬の適正使用が欠かせません。 

 

抗菌薬を適正使用するための方法の1つに、デ・エスカレーションという手法があります。

 

本記事では、デ・エスカレーションの目的や、その具体的な方法を解説します。

 

おすすめ読者様

  • 病院で働くスタッフ
  • 開業医
  • 調剤薬局のスタッフ

 

デ・エスカレーション(De-escalation)とは?

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感染症診療において、超急性期(初回診断時)の状態で『原因菌(起炎菌)』を突き止めることは困難です。

 

患者の臨床症状を診て、『肺炎かな?』『菌血症かな?』『尿路感染かな?』というように感染臓器の探索を行います。

 

例えば、こんな症例です・・・

高齢者肺炎の原因菌は?

  • 高齢者。
  • 全身状態不良。
  • インフルエンザのシーズンでもないのに、38度台の発熱がある。
  • 咳がある。
  • レントゲンで炎症像が確認できる。
  • 白血球やCRPが高い。
  • 脱水がある。
  • 基礎疾患にCOPDがある。
  • 3週間ほど前に近医にてクラビットが処方されている。

参考

【薬の説明】レボフロキサシン / LVFX(クラビット)ってどんな薬?

 

このような症例の場合、“少なくとも”肺炎があるという事は分ります。

 

しかし、肺炎だけではなく、尿路感染症もあるかもしれないし、菌血症もあるかもしれません。

 

ましてや、『どの菌による感染か?』なんて分りません・・・

初期治療(エンピリックセラピー)とは?

感染症患者が『どの菌に感染しているのか?』という事は、患者の過去の保菌状況や、様々な疫学データから、ある程度推定できますが、実際の原因菌は細菌培養してみないと分りません。

*)培養したからといって必ず原因菌が分るわけではありません

 

しかし、培養の結果が出るには数日かかります。

 

数日間待ちますか??

 

それはできません、全身状態不良の高齢者です。

 

すぐにでも抗菌薬治療を開始すべき症例です。

 

このような場合に行われるのが、初期治療(エンピリックセラピー)です。

 

想定される原因菌を幅広くカバーするような、スペクトラムの広い(いろんな菌に効く)抗菌薬を投与します。

 

はいたっち

なんだかわからないなら、どの菌にでも効く抗菌薬を使っとこう!!

 

この考え方がエンピリックセラピーです。

エンピリックセラピーのデメリット

『どの菌にでも効く抗菌薬があるのなら、常にそれを使えばいいじゃん。』ということなのですが、そんなに単純なことではありません。

 

どの菌にでも効く抗菌薬というのは、薬剤耐性菌(AMR)を出現させやすいことがわかっています。

 

はいたっち

この人も、あの人も、原因菌がわからないし、どの菌にでも効く抗菌薬を14日間使っとこう!!

 

こんなことをやってしまうと、耐性菌の温床を生み出すことになります。

 

ではどうしたらいいのか?

 

そんな時に使うのがデ・エスカレーションです。

デ・エスカレーションとは?

まずはエンピリックセラピーで、幅広い菌を攻撃します。

 

その間に細菌培養を行い原因菌を検出したり、治療によって病態の改善を図ります。

 

その後、『判明した原因菌にターゲットを絞った抗菌薬に変更する』という手法が、デ・エスカレーションです。

 

 

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デ・エスカレーションのメリット

デ・エスカレーションには様々なメリットがあります。

薬剤耐性菌(AMR)の発現抑制

デ・エスカレーションによって、ターゲットを絞った治療を行う事で、AMRの発生を抑制することが可能です。

CD腸炎(クロストリジウム・ディフィシル)の発症抑制

広域抗菌薬(いろんな菌に効く抗菌薬)は、CD腸炎という副作用を発症することがあります。

*)狭域抗菌薬でもあり得ます

 

広域抗菌薬によって、腸内細菌(善玉菌)が死滅してしまうので、普段は大人しいクロストリジウム・ディフィシルという菌が、悪さをすることがあります。

 

デ・エスカレーションすることで、CD腸炎のリスクを減らすことができます。

医療コストの削減

一般的に、広域抗菌薬というのは薬価が割高です。

 

そりゃそうですよね。

 

『何にでも効く』なんて、そんな夢のような薬を使っているわけですから、お安いわけがありません。

 

デ・エスカレーションすることで医療コストを下げることが出来ます。

*)耐性菌感染症を抑制することができれば、大幅な医療費削減になります。

 

 

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デ・エスカレーションの方法は?

デ・エスカレーションのメリットが分っていても、『本当に抗菌薬を切り替えても大丈夫なのか?』という不安があります。

 

メロペネムからタゾバクタムピペラシンに切り替えたって、デ・エスカレーションにならないよね?』なんていう疑問もわいてきます。

 

どんな時にデ・エスカレーションができるのでしょう?

デ・エスカレーションができるとき

感染巣が明らかな時

感染巣が明らかで、他の感染症が否定されている時にはデ・エスカレーションを検討すべきです。

適切な検体から原因菌が判明している時

適切に採取された検体(他の細菌の混入が否定できる)から、原因菌が判明していれば、その菌をターゲットにした治療に切り替えられます。

初期治療の経過が良好で、患者状態が悪くない

患者の臨床症状が改善していて、経過が良好な場合は、デ・エスカレーションが検討できます。

患者をフォローアップできる時

デ・エスカレーション後、すぐに外来治療を行うには十分な注意が必要です。

 

治療変更後の反応や副作用などをフォロー可能な状況で行いましょう。

 

はいたっち

デ・エスカレーションばかりをねらうのではなく、患者にとって最適な治療を選択する過程で、デ・エスカレーション“も”考慮するという事が大切です。

 

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【この記事の執筆者】

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ABOUT ME
瀬古高行
医療と経済の架け橋である「医療経済学」を研究。テクノロジーとアイデアでヘルスケア関連の問題を解決すべく情報発信を行う。医療・介護サービスのDX化推進に向けたコンサルテーション事業に従事。株式会社femto代表取締役。
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