抗がん剤治療は劇的な変化を遂げようとしています。
人間本来の免疫力を利用する『がん免疫療法』。
テセントリクは、免疫チェックポイント阻害薬というタイプに分類される、抗PD-L1抗体です。
がん免疫療法に用いられます。
そんなテセントリクに関して、薬理作用からDI情報までを詳しくご紹介します。
- 添付文書
- 適正使用ガイド
- インタビューフォーム
- OAK試験(PⅢ)
Contents
【テセントリクの薬理作用】抗PD-L1抗体とは何か?
我々人間の体内では、免疫細胞が警備を行っています。
免疫細胞は、体内に侵入した、自分以外の異物(細菌やがん細胞など)を見つけて攻撃する役割を担っています。
しかし、がん細胞は免疫細胞の働きにブレーキをかけ、その攻撃から逃れることが分かってきました。
PD-1とPD-L1の結合
がん細胞の表面にはPD-L1という物質が発現しています。
また、免疫細胞にはPD-1という物質が存在します。
PD-L1とPD-1が結合することによって、免疫細胞の働きにブレーキがかかります。
免疫細胞にブレーキがかかることで、がん細胞が増殖してしまいます。
テセントリクの作用メカニズム
テセントリクは抗PD-L1抗体です。
がん細胞の表面に発現したPD-L1に結合することで、PD-L1とPD-1の結合を阻害します。
PD-1とPD-L1の結合を阻害することで、免疫細胞にブレーキがかからなくなります。
この結果、免疫細胞は力を取り戻し、再びがん細胞と戦う事が出来るようになります。
【テセントリクのDI情報】ドラッグインフォメーション
*)2018年11月現在
効能効果(適応)
切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
- 化学療法未治療患者における有効性および安全性は確立していない
- 術後補助化学療法における有効性および安全性は確立していない。
- 臨床試験の内容を熟知し、本剤の有効性および安全性を理解すること。
用法用量
通常、成人にはアテゾリズマブとして、1回1200mgを60分かけて3週間間隔で点滴静注する。
初回の忍容性が良好な場合、2回目以降の投与は30分まで短縮できる。
薬剤調製時の注意事項
生理食塩水250mLに添加する。
0.2又は0.22μmのインラインフィルターを使用する事。
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テセントリクの副作用(irAE)
テセントリクによる治療期間中に、特に注意が必要な副作用についてご紹介します。
テセントリクの投与により、自己免疫関連有害事象(irAE)が発現することがあります。
注意深く観察し、しっかりと対策を行うことが大切です。
免疫疾患関連副作用(irAE)とは?
irAEとは、免疫関連副作用(immune-related Adverse Events)のことです。
おもに、テセントリクなどの免疫チェックポイント阻害薬の投与により引き起こされる副作用を指します。
免疫チェックポイント阻害薬は、免疫を活性化させることで抗がん作用を発揮します。
しかし、免疫全般を過剰に活性化することで、免疫が自分自身を攻撃してしまうといった様々な自己免疫疾患を引き起こします。
それが免疫関連副作用(irAE)です。
免疫チェックポイント阻害薬は、抗がん剤の中では、副作用は圧倒的にすくないです。
しかし、副作用がないわけではありません。
頻度は少ないですが、免疫に関連した特徴的な副作用が発現します。
副作用には十分な注意をしなければなりません。
間質性肺疾患
肺胞の壁やその周辺に、炎症がおこる副作用です。
- 息切れ、息苦しい
- 咳が出る
- 発熱
肝機能障害・肝炎
肝臓の機能が低下したり、肝臓に炎症が起こる副作用です。
- 体がだるい
- 発熱
- 吐き気
- 食欲低下
- 黄疸
大腸炎
大腸に炎症が起こり、それによって激しい下痢が起こる可能性があります。
- 排便回数の増加
- 激しい下痢
- 便に血が混じる
- 腹痛
膵炎
膵臓に炎症が起こる副作用です。
- 上腹部の痛み
- 背部(背中)の痛み
- 吐き気
1型糖尿病
膵臓からインスリンが分泌されなくなり、血糖値が上昇することがあります。
悪化すると糖尿病を発症します。
- 口が渇く
- 排尿回数が増える
- 疲れやすい
- 体重が減る
- 吐き気
- 腹痛
甲状腺機能障害
甲状腺機能に異常が現われる事があります。
- 気力の低下
- 過度な疲労感
- まぶたの腫れ
- 寒気
- 体重の増減
- 便秘
- 声のかすれ
- 頻脈
- 手足の震え
- 発汗
副腎機能障害
副腎の機能が低下することがあります。
- 疲れやすい
- 体がだるい
- 気力の低下
- 体重減少
下垂体機能障害
下垂体に炎症が起こり、下垂体機能が低下することがあります。
- 頭痛
- 乳汁分泌
- 月経異常
脳炎・髄膜炎
脳や髄膜に炎症が起こる可能性があります。
- 発熱
- 頭痛
- 吐き気
- 意識障害
Infusion Reaction
投与中や後に、アレルギー反応に似た、Infusion reactionが発現することがあります。
- 悪心
- 熱感
- 疼痛
- 痒み
- 呼吸困難
- 血圧低下
休薬基準を参考にすること
副作用発現時には、適正使用ガイドを参考に、適切な対応を行いましょう。
投与の可否に関しては、休薬基準を参考にして下さい。
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テセントリクの有効性とエビデンス(OAK試験)
参考文献 OAK Study
専門的な内容になります。
試験背景・目的
プラチナダブレットによる治療中もしくは治療後に増悪した、局所進行・遠隔転移性非小細胞肺がん患者を対象とし、テセントリク投与の有効性及び安全性をドセタキセルと比較する。
試験デザイン
他施設共同ランダム化非盲検2群第Ⅲ相臨床試験
対象症例
プラチナダブレットによる治療中もしくは治療後に増悪した、局所進行・遠隔転移性非小細胞肺がん患者1225例。
*)国内症例101例
投与方法
テセントリク群
テセントリク1200mgを3週間隔で投与。
ドセタキセル群
ドセタキセル75mg/m2を3週間隔で投与。
評価項目
主要評価項目
全生存期間(OS)
副次評価項目
無増悪生存期間(PFS)
奏効率
奏功期間
安全性
有害事象
OAK試験の結果
OSを有意に延長(PD-L1発現を問わない)
PD-L1の発現を問わず、テセントリク群はドセタキセル群に対して有意なOSの延長が認められた。
【OS中央値】
テセントリク群:13.8ヶ月
ドセタキセル群:9.6ヶ月
OSを有意に延長(PD-L1発現集団)
PD-L1を発現した集団に対して解析を行った結果、テセントリク群はドセタキセル群に対して有意なOSの延長が認められた。
【OS中央値】
テセントリク群:15.7ヶ月
ドセタキセル群:10.3ヶ月
OAK試験のインパクトとは?
既存の免疫チェックポイント阻害薬である、オプジーボやキイトルーダにおいては、PD-L1が発現している集団に対しては、非常に良好な有効性を示していますが、PD-L1発現の有無を問わずに生存期間を延長したというエビデンスはありません。(非小細胞肺がん VS ドセタキセル)
テセントリクは、PD-L1発現の有無を問わずに、ドセタキセルに対して生存期間を延長させました。
今までは、PD-L1発現率を検査し、発現を確認できなかった患者は、免疫チェックポイント阻害剤をあきらめるしかありませんでした。(オプジーボはエビデンスはないが使用可能)
しかし、テセントリクの登場により、免疫チェックポイント阻害薬は、PD-L1発現を確認できなかった症例に対しても、エビデンスを獲得しました。
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