こんにちはHitouchです。
@hitouch_life
抗菌薬の「乱用」というと語弊がありますが、「適切」に抗菌薬を使用しないという事は、薬剤耐性菌を蔓延させる事に繋がります。
一方で、抗菌薬の「適正使用」には課題も多いのが現状です。
使えば耐性菌が増える、使わなければ治療ができない。
どこまでが「適正使用なのか」という判断も非常に難しいです。
また、製薬メーカーやその利害関係者であれば、大規模な「使用制限」には反対するはずです。
臨床的、社会的背景が複雑性を増しているのが現状です。
そんな中で興味深い論文を見つけました。
Global increase and geographic convergence in antibiotic consumption between 2000 and 2015.
2000年から2015年における抗生物質消費の世界的な増加と地理的収束
抗菌薬の世界消費量は増加しているらしい
【文献要約】
2000~15年に世界での抗菌薬使用量が65%増加。
増加要因は主に低所得国と中所得国だと考えられる。
方法
- 2000年-2015年
- 76か国の抗菌薬売上高を使用
- 抗菌薬1日投与量(DDD)を算出
- GDPを使用し所得別に国を分類
- 抗菌薬使用量を調査
結果
2000~15年に抗菌薬の世界消費量は65%増加し、DDDは211億から348億になった。
調査期間中、高所得国での抗菌薬消費量がもっとも多かった。
一方で、世界的な増加は主に低・中所得国での抗菌薬消費量の増加と関連していた。
2015年にもっとも消費量が多かった6ヵ国のうち4ヵ国が低・中所得国であった。
消費量の増加は、4種類の抗菌薬(広域ペニシリン系、セファロスポリン系、キノロン系、マクロライド系)のすべてでみられた。
さらに、新世代の抗菌薬クラス(カルバペネム系、グリシルサイクリン系、オキサゾリジノン系)でもみられた。
低・中所得国では1人当たりの国内総生産(GDP)の増加と抗菌薬消費量の変化に正の相関が認められたが、高所得国では相関は認められなかった。
あとがき
以前より学会や専門家の中では、抗菌薬使用に関しての懸念が広がっています。
努力が実を結び、少しずつですが、抗菌薬の「適正使用」が推進されてきています。
日本では、医師、薬剤師、看護師等が連携して、抗菌薬適正使用チーム(AST)を結成し、各医療機関で抗菌薬の適正使用を推進しています。
総合病院では適正使用が推進される一方で、小規模病院やクリニックになるとどうでしょう。
基本的に「風邪」に「抗菌薬」は効きません。
しかし「抗生剤」を希望する患者や、患者家族は多いはずです。
そのような患者を目の前にして、抗菌薬を処方しないというのもなかなか難しい話です。
今回ご紹介した論文は、GDPを利用することで、所得別に抗菌薬使用量の変化を把握しています。
新興国では、抗菌薬流通がスムーズになっているでしょうし、抗菌薬を利用できる患者も増えている事かと思います。
抗菌薬だけではなく、医療サービスそのものが増加していることが推測できます。
加えて、深刻な環境汚染によって、感染症自体も増加しているかもしれません。
抗菌薬使用量の増加は、薬剤耐性菌の出現に寄与します。
抗菌薬をいつまでも「抗菌薬」としてあり続けさせるためにも、適正に使用していく事がとても重要です。
このままでは抗菌薬は「抗菌薬」ではなくなるかもしれません。
抗菌薬が効かない耐性菌はもうそこにいるかもしれません。
Sincerely,
Hitouch
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