「訪問看護で薬を受け取れるか知りたい」
「急変時の薬の処方対応・受け取りについて知りたい」
訪問看護を受ける際、訪問時にケアやリハビリなどはしてくれますが薬は受け取れるのかわからない方もいるでしょう。
結論からお伝えすると、訪問看護サービスで来てくれる看護師や理学療法士などは原則、薬の受け取りのやりとりができません。
配達などのやりとりは急変時といった緊急性があるときのみです。
薬が欲しい場合は、訪問診療または薬剤師訪問サービスを別で利用する必要があります。
本記事では、訪問看護の利用者さんの基本的な薬の受け取り方と急変時の受け取り、費用などについて解説します。
訪問看護利用者の薬の受け取り一般的な流れ
訪問看護の利用者さんは、一般的に以下の流れで薬を受け取ります。
- 医師が診察時に処方箋を発行
- 処方箋を自分で調剤薬局に送信・または持参する
- 調剤薬局で薬を準備してもらう
- 薬を受け取りにいく・受け取る
- 薬代を支払う
- 帰宅する
上記のように、薬局で薬を受け取るほかに、訪問薬剤師のサービスを利用して薬を受け取る方法があります。
薬の受け取り方法1.調剤薬局で受け取る
調剤薬局で薬を受け取る場合は、処方箋に使用期限があったり、処方箋の発行方法によって多少の違いがあったりします。
以降では、通常の処方箋を利用する場合、電子処方箋を利用する場合、処方箋の期限、本人が調剤薬局に受け取りに行くのが難しい場合の対処法について解説します。
通常の処方箋を利用する場合
通常の処方箋でも、処方箋の発行方法が2パターンあります。
【パターン1】医師からその場で処方箋を直接もらう
一つ目は訪問診療と併用して利用し「医師からその場で処方箋を直接もらう」パターンです。
慢性疾患を持っている方は必要な薬に変化がない傾向にあるため、前もって医療機関で印刷した処方箋を持参します。
もし、実際に診療した結果、処方薬を変更しなければならない場合はその場で医師が手書きで修正し、印鑑を押します。
なかには、医師がモバイルプリンターを持参してその場で処方箋を印刷し、印鑑を押して療養者に手渡しするケースもあるようです。
薬の受け取りは、療養者本人あるいはその家族が行います。
【パターン2】医師が薬局にFAXなどで処方箋を送信する
医師が療養者に処方箋を渡すのではなく、ダイレクトに薬局へ処方箋を届けたりFAXなどで送信したりするパターンがあります。
療養者にとっては手間が省けるため便利ですが、在宅患者訪問薬剤管理指導などに該当するため、保険料が加算されます。
また、医療機関と薬局のあいだではやり取りの手間がかかるため、スムーズに進まないこともあるでしょう。
薬の受け取りは、薬剤師による訪問が主流です。
電子処方箋を利用する場合
電子処方箋を利用する場合は、診療を終えたあと、医師が医療機関で電子処方箋管理サービスを利用して処方箋を発行します。
調剤薬局は電子処方箋サービスを介して調剤を行い、療養者本人またはその家族などが薬を受け取りにいきます。
処方薬の配達サービスを行っている場合は、自宅まで届けてくれるため受け取りに行く必要はありません。
処方箋の期限
処方箋の期限は、発行日を含めて4日以内と決められています。
たとえば、6月21日が発行日であれば、6月24日が有効期限となります。
有効期限を設けている理由は「診断された病状が変わらないうちに薬による治療を行えるようにするため」です。
病状は、日ごとに悪化したりよくなったりと変化します。
リアルタイムに近いタイミングで薬を使用するためには、有効期限を設けて処方箋の発行を管理する必要があるのです。
期限が切れたらどうすればいいのか
処方箋の期限が切れると使用できないため、再度診察を受ける必要があります。
期限切れのための診察は健康保険を適用できず全額自己負担となるため、注意が必要です。
ただし、薬代については保険適用となります。
また、処方箋の紛失により期限が切れた場合の保険適用については、医療機関や薬局によって対応方法が異なるので確認してみましょう。
服用者本人が薬局にいけない場合
薬を受け取る本人が薬局にいけない場合は、下記のような方法で薬の受け取りが可能です。
- 家族に代理で受け取りしてもらう
- ケアマネージャーに代理で受け取りしてもらう
- 訪問薬剤師サービスの利用
薬の受け取り方法については、ケアの担当者や家族とよく話し合いましょう。
薬の受け取り方法2.在宅で薬を受け取る
もし、家族やケアマネージャーに薬の配達をしてもらうことが難しい場合は、訪問薬剤管理指導の制度を利用でき、薬剤師に配達をお願いできます。
ただし、在宅で薬を受け取る場合はさまざまな条件があるため、制度を利用する前に知っておかなければなりません。
以降では、定められた利用条件や訪問回数について解説します。
「訪問薬剤管理指導」の利用条件
訪問薬剤管理指導はすべての人が利用できるわけではありません。
利用可能となる対象者は以下のとおりです。
- 病気・障がい・要介護などで薬局まで足を運ぶのが困難な人
- 自宅での薬の使用や管理に不安がある人
- 医師が薬剤師の訪問が必要と認め、薬剤師に指示した場合
訪問薬剤管理指導を利用するには?サービス内容と利用するメリットについても解説
でも解説していますが、自宅で薬剤師から薬を受け取る方法をスタートさせるパターンは4つあります。
- 医師から指示を受ける
- 調剤薬局の薬剤師が医師に提案する
- ケアマネージャーや訪問看護師などのケア従事者、家族から医師に相談する
- 退院時に医療機関と調剤薬局が相談して利用を検討する
詳しくは訪問薬剤管理指導を利用するには?サービス内容と利用するメリットについても解説をご覧ください。
訪問回数
薬剤師から薬を受け取れる訪問サービスは利用できる回数が以下のように決められています。
基本 | 末期の悪性腫瘍をもつ療養者 | 中心静脈栄養法の対象者 | 緊急時 | |
---|---|---|---|---|
回数 | 月4回まで | 週2回、月8回まで | 週2回、月8回まで | 月4回まで |
基本的に、原則として4回までとなっており、それ以上は特定疾患や緊急時を除き利用できません。
よって、回数を超えそうな場合、代理人を立てるなどして対応する必要があります。
費用や適用可能な保険
在宅で薬を受け取る際は薬代とは別に訪問サービスの料金がかかり、介護保険または医療保険を適用できます。
介護保険を適用する場合「居宅療養管理指導費」が加算され、医療保険を適用する場合は「在宅患者訪問薬剤管理指導料」が加算されます。
具体的な費用については、自己負担の割合や同じ建物内でサービスを利用する人数などによって異なるため、利用前に見積もりを出してもらうとよいでしょう。
訪問看護「急変時」の薬の受け取りに関する進展
緊急時の薬の受け取り方法には大きな問題があります。
以降では、問題の内容や国をあげて検討されている内容について解説します。
迅速な対応ができない
訪問看護サービスにおいて、現在「急変時」の薬の受け取りについて「迅速な対応ができない」という問題が上がっています。
そのため、体調に変化が起きた場合は看護師が医師に相談して指示を仰ぎ、薬局まで取りに行ってから自宅に訪問する必要があります。
時間によっては最寄りの薬局は閉業しているため、24時間営業または夜遅くまで営業している薬局へ移動しなければなりません。
ときには長距離や長時間に及ぶことがあり、すぐに自宅に薬を届けられない事例も発生しているのです。
訪問看護の緊急時・急変時の薬の受け取りに関する予後
現在、迅速に緊急対応が必要な患者のために、看護師が処方箋を発行し投薬・輸液ができるよう、日本政府の規制改革推進会議で検討されています。
具体的な検討案は以下のとおりです。
- 医師が処方箋を発行できない場合は、看護師が医師の指示のもと発行可能
- 医師と連絡がつかない場合、看護師は医師の包括的指示のもと処方箋を発行可能
- 24時間営業の薬局がある場合、薬剤師は迅速に自宅へ届ける
- 24時間営業の薬局がなければ訪問看護ステーションで薬剤を配備し、看護師を使用可能にする
- 24時間営業の薬局の有無関係なく訪問看護ステーションで輸液製剤の配備を可能にする など
現在では難しい急変時の速やかな薬の受け取りも、今後は一定の条件下で可能となり迅速な薬の受け取りが可能となると予測されます。
訪問看護利用者の薬の受け取り方は2種類
訪問看護の利用者さんの薬の受け取り方は「薬局に取りに行くか」「薬を配達してもらうか」の2つがあります。
ご家族やケアの担当者とよく話し合ってから受け取り方法を決めましょう。