高齢で離れて暮らしている親がいる人の中には「ちゃんと薬を飲んでいるか心配だ」と思う人もいるでしょう。特に認知症の人の場合、薬の飲み忘れは非常に多いです。
この記事では、認知症の人が薬を飲み忘れる原因と、防止するアイデアについてお伝えしていきます。
また利用できる介護サービスも紹介するので、是非参考にしてください。
なぜ認知症の人は薬を飲み忘れるのか
認知症の人が薬を飲み忘れる原因として、下記の3つがあります。
- 「なぜ薬を飲まなければいけないのか」を理解していないから
- 「薬の飲み方」が分からないから
- 「食べ物ではない」と考えているから
下記にて詳しく説明していきます。
「なぜ薬を飲まなければいけないのか」を理解していないから
1つめは「なぜ薬を飲まなければいけないのか」が分からないからです。
ですので薬があっても、自分の薬だと認識せずに飲み忘れてしまうことがあるのです。
「薬の飲み方」が分からないから
2つめは「薬の飲み方」が分からないからです。
水なしで錠剤を飲もうとし、吐き出すということもあります。
「食べ物ではない」と考えているから
3つめは「食べ物ではない」と考えているからです。
「食べ物ではないから、口に入れてはいけない」という認識が残っているからこそ、薬を飲み忘れることがあるのです。
薬の飲み忘れを防止するアイデア
上記にて、薬を飲み忘れる原因についてあげました。
では、認知症の人が薬を飲み忘れない方法として、どのような方法があるでしょうか。
薬の飲み忘れを防止するアイデアとして、下記2つがあります。
- 内服チェック表を作る
- 薬の形状を変える
それぞれの方法について、詳しくお伝えしていきます。
内服チェック表を作る
1つめは「内服チェック表」を作ることです。内服チェック表の例としては、下記があります
日付 | 朝 | 昼 | 夜 |
---|---|---|---|
1 | 〇 | 〇 | |
2 | 〇 | 〇 | |
3 | 〇 | ||
4 | 〇 |
一番目立つのは「冷蔵庫」です。冷蔵庫はどの家庭にもあり、多くの人が1日1回以上利用します。
冷蔵庫の扉の部分に、目立つよう貼り付けておくと、気付きやすいです。
ただし薬を飲んだらチェックすることが理解・行動できる方でないと使用できません。
認知症の方の理解力や体の動きを考慮することが大切です。
また「薬チェック表を作るのが苦手」という人は、薬カレンダーを購入して使いましょう。最近は100均でも薬を管理できるカレンダーがあるので、手軽に買うことができます。
薬の形状を変える
2つめは「薬の形状を変える」ことです。
認知症の有無にかかわらず、高齢者は薬の服用を嫌がることが多いです。
また高齢者は認知症の薬だけでなく、血圧や他の疾病の薬を服用していることが多いです。
その為内服の量が多くなり、薬が飲み込みづらいと感じがちです。
場合によっては、飲み込んだふりをして、こっそりと吐き出すこともあるのです。
薬が飲み込みづらそうだなと感じたら、医師や薬剤師に相談し、違うタイプの剤形を試してみましょう。
アルツハイマー型認知症の代表的な薬と、各薬の特徴は以下のとおりです。
名称 | 剤形 | 服用回数 | 副作用 |
---|---|---|---|
ドネペジル | 錠剤、細粒、口腔内崩壊錠、ゼリー剤 | 1日1回 | 食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛など |
ガランタミン | 錠剤、口腔内崩壊錠、内用液 | 1日2回服用 | 食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛など |
リバスチミン | 貼り薬 | 1日1回、背中や上腕、胸部などに貼付 | 皮膚の発赤、かゆみ・かぶれ、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛など |
メマンチン | 錠剤 | 1日1回服用 | めまい、ふらつき、眠気、頭痛、便秘、食欲不振など |
高齢者の場合、認知症の薬の他にも糖尿病や血圧といった、加齢による病気の薬も併用する場合があります。
錠剤が多く、細粒やゼリー剤にできない場合は、市販の服薬ゼリーを使うという方法があります。
使い切りのスティックタイプもあるので、ショートステイを利用する場合にも使えます。
介護サービスを使って、薬の飲み忘れを防止する方法
「認知症の親がいるけれど、1人暮らしだから自己管理できるか不安」という人は、介護サービスを使う方法があります。
介護認定を受けている人は、ケアマネジャーにケアプランを作成してもらい、介護サービスを受けることができます。
介護サービスの中で薬の飲み忘れを防止する方法として、下記2つがあります。
- ヘルパーに服薬介助を依頼する
- デイサービスに行ったときに、服薬の介助をしてもらう
詳しくお伝えしていきます。
ヘルパーに服薬依頼をする
1つめは「ヘルパーに服薬介助を依頼する」ことです。
介護認定を受けている人であれば、訪問介護を利用することができます。
例を挙げると、午前中独居の高齢者宅へ訪問し、服薬介助のみ行うというサービスです。
デイサービスに行ったときに、服薬の介助をしてもらう
2つめは「デイサービスに行ったときに、服薬の介助をしてもらう」方法です。
「朝食後と記載されている薬だから、朝に飲まなければいけない」と思っている人もいるでしょう。
認知症の薬の場合、飲んだり飲まなかったりが続くと効果がなくなったり、症状が悪化する可能性があります。
ですので、必ず朝に飲まなければいけないという訳ではなく、継続して内服することが大事なのです。
ただし、飲むタイミングを変更する場合は、まず主治医へ相談をしましょう。
デイサービスにいる時間でゆとりがあるときに、服薬介助をしてもらうというのも、1つの方法です。
介護職員へ服薬介助を依頼するときにあると便利な物
訪問介護やデイサービスの職員に服薬介助を依頼するときにあると便利な物として、2つあります。
1つは「お薬説明文書」です。
お薬説明文書とは、薬局で薬を処方されるときに出される紙です。
薬の働きや注意事項、副作用などが記載されています。
前述でも記載しましたが、認知症の薬にも副作用があります。
ですので、訪問時やデイサービス利用時に副作用の症状が起こる可能性があるのです。
急変時にケアマネジャーや他職種へ状況説明するとき、普段飲んでいる薬を確認することがあります。
訪問介護を利用するときは、ヘルパーが記録を書く用紙のファイルにお薬説明文書を入れるとすぐ確認できます。
デイサービスを利用している場合は、お薬説明文書をコピーして連絡帳と一緒に保管しておくと良いです。
2つめは「薬を入れる小袋」です。
薬の種類が多い場合、介護職員が仕分けをして服薬介助をするのは大変です。
可能であれば、1回分の薬をあらかじめ仕分けし、小袋に入れておきましょう。
小袋は100均で購入することができます。
薬物療法は、早く始めて長く続けることが効果的
認知症の人が薬を飲み忘れる原因として「薬を飲む理由や、飲み方が分からない」「食べ物だと認識していない」ということがあげられます。
また薬の種類が多い場合は、一包化したり小分けにして小袋に入れておくと、スムーズに介助できます。
早めに服薬の習慣をつけておくことで、認知機能の低下を防ぐことにもなります。
上記の方法を、是非試してみてください。