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訪問看護と薬剤師の連携が注目される理由!薬の交通整理が生み出すメリットとは?

      

近年、訪問看護の利用者数は増加が著しく、訪問看護のニーズは今後も益々高まっていくことが予想されます。

訪問看護の利用者さんが増える中で、質の高いケアを維持するためには、医師・看護師をはじめ医療チーム内の連携がこれまで以上に重要となります。

そんな中、最近注目されているのが薬剤師との連携です。

看護師と薬剤師が積極的に情報交換することで、看護師の服薬管理の負担が軽減され医療チームにも多くのメリットをもたらしてくれます。

本記事では、薬剤師と連携することの有用性とメリットについて紹介します。

【訪問看護】薬剤師との連携の現状

看護師と薬剤師はそれぞれ医師とケアマネに対し、利用者さんの状況を記載した報告書を送付する義務があります。

ところが看護師と薬剤師の両者間では、特に報告の義務はなく積極的な情報交換はあまり行われていません。

お互いの専門知識は共有されないまま埋もれていることが多いです。

看護師にとって服薬管理は実務的負担と心理的負担が大きく、訪問時間の中で多くの時間を取られることがあります。

服薬管理のために本来の看護業務に支障をきたすことになれば、利用者さんにとっても重大な問題です。

最近では、こうした看護師の服薬管理の負担を減らそうと、薬剤師と積極的な連携を試みる訪問看護事業所が増えつつあります。


まだ数としては少ないですが、看護師と薬剤師が密に連絡を取り合うことで、看護師のみならず、医師や利用者さんからも「助かる」という声があがっています。

【訪問看護】薬剤師と連携するメリット


看護師が服薬管理を行う上で、負担に感じることや処方された薬について誰かに相談したいと思うことがあります。

訪問看護の現場で看護師が何に負担を感じ、どのようなことで困っているのか、なぜ薬剤師との連携が求められるのか、具体的な事例でみていきます。

薬の確認とセッティング作業


複数の科を受診している利用者さんの場合、薬の種類が多くなる傾向があります。

病院の受診日が違ったり、処方日数がまちまちだったり、薬がすぐに変わったりするので、服用薬を把握するだけでも大変です。

何種類もある薬を間違いがないようセッティングに集中すると、黙々と作業することになり、その間は利用者さんをヒヤリングできなくなります。

薬の確認とセッティングは、看護師の仕事の本質ではなく、そこに時間を取られ、本来の看護業務が時間内に終わらないとなれば、それは大きな問題です。

訪問看護事業所が薬剤師と連携し、薬の確認とセッティングの部分を薬剤師が担うことができれば、看護師の負担はだいぶ軽減され、心置きなく看護業務にあたることができます。

必要以上に薬を服用している利用者さんへの対応


利用者さんによっては少しでも体調に不安を感じるとすぐに病院を受診し、あまり必要のない薬を服用していることがあります。

「膝が痛い」「食欲がない」「よく眠れない」など、それが高齢になって起こる自然な現象であったとしても、それを受け入れることができず「何とかしてほしい」と医師に訴え、薬の処方を希望します。

その結果、多量の薬を服用し、いつまでも薬を飲み続けてしまうことが少なくないです。


多すぎる薬に利用者さんも把握しきれず「私はどの薬を飲めばいいのでしょうか」と相談されることもあります。

看護師の立場で「これは飲んで、これはやめて」という判断もできず、なかなか対応が難しいという課題があります。

利用者さんの病状と処方された薬をトータルでみてくれる薬剤師がいれば、本当に必要な薬とそうでない薬を見極め、整理することができます。

多すぎる薬について薬剤師という専門的な立場から医師への提言もスムーズに行われます。

薬に不信感をもつ利用者さんへの対応


薬は体によくない、なるべく飲まない方がよいと信じている利用者さんもいます。

医師に対しては「薬はきちんと飲んでいます」と言いながら、処方された薬をしまい込んで飲んでいないケースもないとは言い切れません。

また、がんを患っている利用者さんに対し、痛みを和らげる目的で医療用麻薬が処方されることがあります。

「麻薬」という言葉には強いインパクトがあり「中毒になるかもしれない」と服薬を拒否したり「麻薬を使うなんて自分はもう末期なんだ」と落ち込んだりする利用者さんもいます。

このような事例では、薬の正しい知識をわかりやすく利用者さんに説明する必要があります。

看護師が説明してもなかなか理解を得ることが難しい場合は、薬の専門家である薬剤師から説明してもらうことで、利用者さんも納得し薬に対する不信感を取り除くことが可能です。

看護師と薬剤師がタッグを組んで知恵を出し合い、利用者さんに向き合うことで、正しい薬の理解と適切な薬の服用につなげることができます。

処方内容について医師への提言

看護師がアセスメントをする中で、薬の量や処方内容が実態と合っていないと感じたり、服用するのが難しい薬が処方されていると気づくことがあります。

薬理作用にしか目を向けない医師だと、実際にその薬を飲めるのか、他の薬の種類や量はどれくらいなのかというところまで気が回らず、利用者さんが薬の服用に困ることもあります。

利用者さんは思っていることをなかなか医師に伝えづらいということもあり、看護師が医師に提言することも少なくありません。

しかし看護師が医師に状況を説明し薬を減らすことを提言しても、なかなか聞いてくれないことが多いのです。

看護師は薬の専門家ではないので、看護師の提言が医師には響きにくいということがあるのかもしれません。

そこで医師と看護師との間に薬剤師が入ることで、医師が耳を傾けてくれるようになり、提言が通りやすくなるというメリットが生まれます。

医師の方も患者の服薬内容を把握する重要さに気づかされることになります。

【訪問看護】薬剤師との連携で医療費削減


これまで看護師と薬剤師との連携が看護師や医師や利用者さんにメリットをもたらすことについてお伝えしましたが、他にも社会的に大きなメリットがあります。

それは残薬を減らし医療費を削減することです。

日本における残薬問題は深刻で、国民全体の残薬を合わせると年間で1,000億円以上にも上るといわれています。

そのうちの半数近い475億円分が75歳以上の在宅高齢者の残薬です。

日本は高齢化がどんどん進み、このまま残薬が増えれば、国の医療費をますます圧迫することになります。

多すぎる薬、必要性の低い薬、飲みにくい薬、処方されても放置される薬、

こうした理由で生じる残薬は医療費の無駄遣いであり、国民の健康保険料が上がる原因になります。

看護師と薬剤師が連携し薬の交通整理をすることで、無駄な薬の処方がなくなり、在宅医療における残薬を減らすことが可能です。

残薬を減らすことができれば医療費の削減にもつながります。

看護師と薬剤師との連携が未来を変える

今の在宅医療に足りないのは、薬をトータルで見て管理してくれる薬剤師の存在です。

必要な薬とそうでない薬を見極め、利用者さんや家族にわかりやすく説明し、適正な薬の処方を医師に提言できる、そのような薬剤師と連携したいと希望する事業所が増えています。

看護師と薬剤師が連携することで訪問看護の仕事が円滑に進み、利用者さんも薬を適切に服用することができ、それが医療費の削減につながるなら、こんなによいことはありません。

近い将来、訪問看護における薬剤師との連携がもっと増えれば、日本の未来はもっと良い方向に変わるでしょう。

ABOUT ME
瀬古高行
医療と経済の架け橋である「医療経済学」を研究。テクノロジーとアイデアでヘルスケア関連の問題を解決すべく情報発信を行う。医療・介護サービスのDX化推進に向けたコンサルテーション事業に従事。株式会社femto代表取締役。
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