働きながら調理師を目指す場合、調理師学校に通うか、国家試験を受けて合格するか、どちらかを選ぶことになります。
本記事では、あなたにおすすめの調理師免許取得コースを紹介します。
調理業務の経験がある方、経験はなくても食の仕事に関わりたいと思っている方、一人ひとりの属性や目的によっておすすめのコースは違います。
また、お得に調理師学校に通う方法や国家試験の裏技なども紹介します。ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
調理業務の実務経験を確認しよう
まず、自分に調理業務の実務経験があるか確認しましょう。
2年以上の実務経験があれば、調理師学校に通わなくても国家試験に合格することで調理師免許を取得できます。
「実務経験2年以上」の証明として、今の勤務先または以前勤めていた職場に「調理業務従事証明書」の記載をお願いする必要があります。
「実務経験2年以上」対象となる施設
●飲食店営業
旅館・簡易宿泊所を含む。喫茶店営業を除く。
●魚介類販売業
販売のみは除く。
●そうざい製造業/複合型そうざい製造業
煮物(佃煮を含む)、焼物(炒め物を含む)、揚げ物、蒸し物、酢の物又は和え物及びこれらの食品に米飯やパンを組み合わせた食品を製造する営業。
●寄宿舎・学校・病院等の給食施設
継続して1回20食以上または1日50食以上調理している施設。
「実務経験2年以上」の定義
「実務経験2年以上」の定義を紹介します。
“週4日以上かつ1日6時間以上勤務し、2年以上にわたって反復継続的に調理業務に従事していること。正規職員・パート・アルバイトなどの職種は問わない。
調理業務従事証明書の発行日時点で従事期間が2年以上あることが必要。
1か月以上の長期休暇がある場合はその期間を除く。
時期が重ならない複数の勤務先がある場合は、従事期間を通算することも可能。
ただしそれぞれの勤務先から調理業務従事証明書を発行してもらう必要がある。
調理師学校と国家試験どちらを選ぶ?メリットとデメリット
実務経験が2年以上ある場合は、国家試験を受験するコースと調理師学校に通うコース、どちらも選択することができます。
実務経験が2年に満たない場合は、調理師学校を卒業して調理師免許を取得することになります。
あるいは、対象施設に転職し実務経験2年以上の実績を得た上で、国家試験に臨む方法も可能です。
調理師学校と国家試験、それぞれメリットとデメリットがあります。
下の表にまとめたのでご覧ください。
【調理師免許取得2つのコース メリットとデメリット】
調理師学校 | 国家試験受験資格 | |
---|---|---|
メリット | ・卒業と同時に免許が取得できる。 ・専門的な知識と技術が身につけられる。 ・仲間と一緒に勉強できる。 ・就職に有利。 | ・費用と時間をかけずに済む。 ・自分のペースで勉強ができる。 ・合格すれば最短で免許を取得できる。 ・他県の試験も受験可能。 |
デメリット | ・日中働いている場合は、夜間部に1.5年~2年通う必要がある。 ・学費がかかる。 ・知っていることも授業を受ける必要がある。 ・自由時間が減る。 | ・試験に合格しないと免許を取得できない。 ・自分で計画をたてて勉強する必要がある。 ・孤独になりやすい。 ・知識が偏る可能性がある。 |
調理師学校をおすすめするのはこんな方
調理師学校をおすすめする方を紹介します。
「食について本格的に勉強がしたい」
「プロから指導を受けたい」
「ペーパーテストを受けたくない」
「調理師免許を取得したら飲食業界で働きたい」
上記の目的を持っているなら、調理師学校に通って免許を取得するコースをおすすめします。
学校に通う最大のメリットは卒業すれば調理師免許が取得できることです。
確実性を求めるなら、通学するのが一番です。
調理師学校では、調理の基礎技術から応用まで丁寧な指導が受けられます。
和洋中の料理をその道のプロから学ぶことができます。
また、就職する際にも有利に働きます。
就職先を紹介してもらえたり、就職相談にも乗ってもらえたりします。
就職活動の際、専門学校卒は一通りの知識と技術を持っているとみなされます。
時間とお金をかける価値があると思うなら、調理師学校に通うことをおすすめします。
国家試験受験をおすすめするのはこんな方
国家試験の受験をおすすめする方を紹介します。
「お金と時間をかけたくない」
「自分のペースで勉強したい」
「調理師免許が取得できればそれでよい」
「自分のお店を開く予定がある」
調理師免許取得だけが目的なら、国家試験受験コースをおすすめします。
お金と時間をかけずに調理師免許を取得できます。
調理師国家試験の合格率は60%なので、計画的に勉強すれば合格できる可能性は高いといえます。
また飲食店を開業する場合、調理師免許は開業の必須条件ではありません。
「食品衛生管理者」の資格を取得すれば、調理師免許を保有していなくても開業することができます。
食品衛生管理者は1日講習を受ければ取得することができます。
自分のお店を開く予定があるなら、先に開業し自分の店で実務経験を獲得してから、国家試験を受けるという方法もあります。
お得に調理師学校に通う方法
調理師学校の夜間部に通学する場合、学費の相場はだいたい100万円前後です。
調理師学校に通うことを決めたなら、ハローワークの教育訓練給付制度「専門実践教育訓練給付金」を活用しましょう。
かなりお得に調理師免許を取得することができます。
雇用保険に2年以上加入していれば対象になります。(条件あり)
「専門実践教育訓練給付金」について
【給付金の対象者】
在職中または離職後1年以内で雇用保険に3年以上加入している人(初回の場合は2年以上でよい)
【給付金の内容】
厚生労働省が指定する学校で対象となっている講座を受講し修了すれば、受講料の50%が給付されます。(年間上限40万円)
さらに資格を取得し一般被保険者として働いていれば、20%加算され70%が給付されます。
調理師学校を選ぶときは「教育訓練給付金あり」と書いてある学校を選びましょう。
給付金を受けるには、受講の1カ月前までにハローワークで申請手続きをする必要があります。
もし専門実践教育訓練給付金の対象にならない場合でも、条件によっては他の支援制度が利用できるかもしれません。ホームページ等で確認しましょう。
もし分からなければ直接ハローワークで相談してみましょう。
国家試験の内容
【出題数・出題形式】
全60問、マークシートによる四肢択一方式
公衆衛生学、食品学、栄養学、食品衛生学、調理理論、食文化概論
【合否判定基準】
“原則として全科目の合計得点が満点の6割以上であるものを合格とする。ただし1科目でも得点が当該科目の平均点を著しく下回る場合は不合格。”
国家試験の勉強法
国家試験の勉強は問題集を解くことからはじめた方が効率的です。
おすすめの問題集は公益社団法人 日本栄養士会が編集した「調理師試験問題と解答」です。昭和38年から刊行され、多くの受験者に利用されてきました。
問題と解答が同じ見開きページにあるため、見やすく隙間時間の勉強にも最適です。
内容もよくまとまっていてこの問題集1冊だけで国家試験に合格したという人も少なくありません。
繰り返し復習し、理解を深めることが合格につながります。
国家試験に最短で合格する裏技
国家試験に最短で合格する裏技を紹介します。
国家試験は都道府県ごとに行われ、試験の日程や問題が異なります。
試験は年1回の実施がほとんどですが、神奈川県は年2回実施しています。
自分が住む都道府県以外でも試験は受けられるので、試験日が同じでなければかけ持ち受験が可能です。
たとえば東京都と神奈川県で申し込めば年に3回受験できます。
試験日に外せない用事ができてしまったり、どうしても年内に調理師免許を取りたいという場合は、他県の受験日を調べてみるとよいでしょう。
調理師免許は調理のプロである証明
料理人の中には「おいしい料理が提供できれば、調理師免許は必要ない」と判断する人もいます。
しかしおいしい料理とは、行き届いた衛生管理と調理の正しい知識の上に成り立つものです。
そこを疎かにすることは許されません。
もちろん調理師免許がなくても豊富な知識を持ち、きっちり衛生管理を行っている料理人は多いでしょう。
しかしお客さんや初対面の人にとっては、なかなか分かりにくいものです。
やはり調理師免許を持っているということが一番説得力があります。
調理師免許は調理のプロである証明だからです。
信頼と安心感を与える調理師免許は飲食業界で仕事をする上で必要な資格です。
ぜひ自分に合った資格取得コースを選んで調理師を目指してください。