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フリーランス薬剤師のはいたっちです!!
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過活動膀胱(OAB)は、尿意切迫感、頻尿や夜間頻尿を伴い、高頻度に切迫性尿失禁を呈する病態です。
40代以上の男女のOAB有病率は10%を超えているという報告もあり、多くの患者さんのQOLを低下させている疾患です。
従来はバップフォーやベシケアなどといった抗コリン薬が治療の主流でしたが、近年選択的β3アドレナリン受容体作動薬である、ベタニス(ミラベグロン)が登場し、治療選択肢が増加しました。
*)ベオーバという新薬も登場しています
しかし、このβ3作動薬は心臓への影響が懸念されており、心疾患合併症例には使いにくいという特徴があります。
今回は、OABの治療薬を紹介しながら、心疾患を合併している患者にはどの薬剤を選択すればよいか?ということを考察していきます。
Contents
過活動膀胱(OAB)治療薬のガイドライン推奨グレードは?
参考:下部尿路機能障害 冨士 幸蔵
過活動膀胱診療ガイドラインの推奨グレードを見ると、どの薬剤もグレードAで推奨されていることが分かります。
つまり、抗コリン薬もβ3作動薬も、いずれも科学的に十分根拠のある薬剤であるということです。
となると…後は患者個々に判断していくことになります。
*)主治医の“好み”が出やすい部分でもあります
ベタニスは重篤な心疾患が禁忌
重篤な心疾患を有する患者
[心拍数増加等が報告されており、症状が悪化するおそれがある。]
ベタニス添付文書(禁忌)
β3受容体は、脂肪細胞・胃・小腸・結腸・脳・前立腺・膀胱・心血管系等で発現している受容体です。
心血管系でのβ3受容体発現量は少ないことが分かっていますが、それでもβ3刺激薬(ベタニス)による影響は無視できません。
そのため、ベタニスの禁忌事項には『重篤な心血管疾患』があげられています。
ベタニスの使用上の注意事項
- 本剤の投与を開始する前に心電図検査を実施するなどし、心血管系の状態に注意をはらうこと。QT延長を生じるおそれがある。
- 定期的に心電図検査を行うこと。QT延長を来すリスクが高いと考えられる。
- 血圧の上昇があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に血圧測定を行うこと。
ベタニスの使用にあたっては心疾患系への注意事項が多いことが分かります。
臨床現場でどの程度の検査が実施されているのかは不明ですが、心血管系への影響に注意が必要なことはいうまでもありません。
ベオーバ(ビベグロン)の心血管系リスクは!?
ベタニスと同じβ3作動薬であるベオーバは、心血管系の注意事項が少ない薬剤です。
臨床試験において心血管系への影響が認められなかったことから、添付文書上での注意喚起がベタニスよりも少なくなっています。
べオーバにおいては、重篤な心疾患患者は慎重投与となっています。
心疾患を有する患者への過活動膀胱治療剤は何を選択する?
抗コリン薬も心血管系へ与える影響は無視できません。
その他の副作用の観点からも、抗コリン薬は高齢者には使いにくいというのが現状です。
心疾患のある高齢患者さんには、抗コリン薬もベタニスも使いにくい…そんな時に新薬であるベオーバという選択肢が登場したのは、非常に力強いことではないでしょうか。
心疾患のある患者さんにはコレ!というような積極的な推奨はできませんが、心疾患合併用例など、既存薬が使いにくい患者さんには、べオーバが有用な治療選択肢になるのではないかと考えます。
心疾患を有するOAB患者にはべオーバが使いやすいのではないだろうか?
べオーバとベタニスの比較はこちら
べオーバとベタニスを比較しています。
↓詳しくはこちらをご覧下さい。
- ベオーバ添付文書
- ベタニス添付文書
- 本間之夫,柿崎秀宏,後藤百万,ほか.排尿に関する疫学的研究.日排尿会誌.2003;14:266- 277.
- 下部尿路機能障害 冨士 幸蔵
- 男性下部尿路症状診療ガイドライン
- 女性下部尿路症状診療ガイドライン