まれに重篤な乳酸アシドーシスを起こすことがあるので、患者及びその家族に十分指導すること。
メトグルコ添付文書:一部改編
メトホルミンは、糖尿病治療のキードラッグの1つです。
副作用が少ないだけではなく、非常に安価(9.9円/250㎎1錠)な薬です。
*)2018年度薬価
メトホルミンは、糖尿病治療に古くから使用されてきた薬剤ですが、近年でも多くのエビデンスが登場し、今なお多くの患者に使用されています。
メトホルミンベースの配合剤も数多く登場し、気が付くとメトホルミンを内服しているという患者も多いはずです。
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しかし、そんなメトホルミンには、重大な副作用があります。
乳酸アシドーシスです。
薬剤師であれば、『メトホルミンは乳酸アシドーシスに注意』ということを知っています。
しかし、『乳酸アシドーシスってなに!?』『どんな症状が出るの?』って聞かれたら答えられますか?
薬学部で習った知識を、より臨床で活用できるように、乳酸アシドーシスについて学んでいきましょう。
糖尿病合併症の参考記事
Contents
乳酸アシドーシスとは一体なに?
乳酸アシドーシスは、様々な原因により、血中に乳酸が蓄積した結果、血液が著しく酸性に傾いた状態です。
乳酸アシドーシスの基本を理解するポイントは3つです。
- 血中に乳酸が蓄積している
- 血液が酸性に傾いている
- その原因は様々である
乳酸アシドーシスの原因は1つではない
乳酸アシドーシスの原因は1つではありません。
いくつかある乳酸アシドーシスの原因の1つが、メトホルミンの副作用ということになります。
乳酸アシドーシスの症状
乳酸アシドーシスの代表的な症状をお示しします。
- 消化器症状(悪心・嘔吐・下痢など)
- 筋肉痛・筋肉の痙攣
- 倦怠感
- 腹痛・胸痛
症状が進行すると、昏睡に陥ることもあります。
乳酸アシドーシスの診断基準
血中乳酸値:5.0mmol/L以上
血液PH:7.35未満
参考資料
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乳酸アシドーシス発症のメカニズム
乳酸アシドーシス発症のメカニズムを紹介します。
乳酸が蓄積して血液のPHが酸性に傾く
細胞内で、グルコースからピルビン酸が生成され、ピルビン酸から乳酸が生成されます。
通常、ピルビン酸は、好気的条件下でミトコンドリア内でアセチルCoAとなり、エネルギーとなります。
そのため、正常な代謝が行われていれば、乳酸が過剰に蓄積するということはありません。
しかし、何らかの原因でこのバランスが崩れ、乳酸が蓄積すると、乳酸アシドーシスを発症します。
要するに・・・
ピルビン酸を上手くエネルギーにできなかったり
血液中に酸素が足りない(嫌気的)と
乳酸が溜まりやすくなるんだ
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乳酸アシドーシスの原因は?
では、乳酸アシドーシスの原因を具体的に確認していきましょう。
過度なアルコール摂取に伴うNAD+の減少
蓄積された乳酸は、NAD+という物質を利用して、ピルビン酸に変化します。
NAD+が上手く機能すれば、多少乳酸が蓄積しても、ピルビン酸に変化させることができます。
しかし、NAD+はアルコールの分解に使用されてしまいます。
過度なアルコール接種によって、NAD+を消費されてしまうことで、血中に乳酸が蓄積しやすくなります。
心不全・呼吸不全に伴う低酸素状態
ピルビン酸は、好気的条件(酸素がいっぱいある)で、エネルギーに変化できます。
呼吸不全によって、血中酸素濃度が低下(嫌気的条件)すると、ピルビン酸はエネルギーに変化できず、乳酸として体内に蓄積されることになります。
メトホルミン(ビグアナイド系薬)による糖新生抑制
乳酸は肝臓でグルコースに変化します。
これを糖新生といいます。
糖新生という名前の通り、体内で『糖』を作り出すシステムですので、血糖値は上がりやすくなります。
糖尿病治療薬であるメトホルミンは、この過程を阻害する作用をもっています。
つまり、メトホルミンを使用することで、糖新生が抑制され、血糖値が低下します。
その一方で、乳酸が溜まりやすくなります。
糖新生は、乳酸をグルコースに変化させるシステムだよ。
このシステムが機能しないことで、乳酸はグルコースに変化できない。
ってことは、乳酸が溜まってしまうね。
腎機能低下・脱水に注意
特に、腎機能の低下した患者や、脱水のある患者においては、メトホルミンの血中濃度が上がりやすくなりますので、注意が必要です。
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メトホルミンの適正使用に関するRecommendation
日本糖尿病学会ホームページには、メトホルミンの適正使用に関するRecommendationが掲載されています。
参考
メトホルミンの適正使用に関する Recommendation
この中で、乳酸アシドーシス発現例に多く認められた特徴が掲載されています。
これらの特徴の患者にメトホルミンを使用する際には、特に注意しましょう。
- 腎機能障害患者(血液透析含む)
- 脱水・シックデイ・過度なアルコール・生活指導が必要な患者
- 心血管疾患・肺機能障害・手術前後・肝機能障害患者
- 高齢者
Sincerely,
Hitouch
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【この記事の執筆者/編集者】
Hitouch「T」
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