中間浴とは、入浴の介助方法のひとつです。
入浴介助は、正しい知識をつけていないと思わぬ事故にも繋がりかねません。
また、介護者や利用者さんにとって体力的にも大変な作業であるため、お互いに負担が少なく安全に介助できる方法を理解しておくことが重要です。
そこで本記事では、中間浴(リフト浴)を行う目的や入浴手順、事故を防ぐための注意点を解説していきます。
中間浴とは?
中間浴とはリフト浴とも呼ばれており、上下左右に動く椅子型のリフトに乗ったまま入浴する方法です。
車椅子からリフトと呼ばれる機械に移り、リフトで浴槽まで移動します。
リフトには、足を下げたまま椅子を移動するタイプと、足を延ばして長座位のままスライドするタイプに分かれます。
自力で歩いたり立ったりはできないけれど、座った状態を維持できる人に向いている入浴方法です。
中間浴の目的
中間浴には、清潔の維持・感染症の予防・リラックス効果などの目的があります。
また、介護者にとっては利用者さんの全身の状態を観察する機会となり、皮膚異常などの早期発見にもつながるでしょう。
利用者さんとのコミュニケーションの場にもなるので、信頼関係を構築する良い機会にもなります。
利用者さん・介護者の負担軽減
身体の不自由な利用者さんの入浴介助は、利用者さん・介護者双方の体力を消耗しやすいです。
中間浴ではリフトを使用することで、双方の負担を軽減できます。
転倒リスクの回避
入浴は、身体の不自由な利用者さんにとって肉体的に負担になる動作を伴います。
実は浴槽への出入りは、転倒事故のリスクが最も高いのです。
中間浴であれば浴槽を跨ぐことがないため、転倒するリスクを最小限にできます。
利用者さんの安全を確保しつつ、歩けなくなってからも入浴を楽しむことができる方法です。
清潔維持・感染症予防
入浴することで身体を清潔に保つことができます。
においや不快感がなくなり、気分もすっきりとします。
本人だけでなく対人関係にも良い影響をもたらすといえるでしょう。
また、身体が不衛生だと、細菌や雑菌による感染症のリスクが高まります。
入浴することで、嘔吐物や排泄物などを洗い流せるため、感染源を排除できます。
すでに感染症への罹患が疑われる場合には、清拭に切り替えるなど他の利用者さんや介護者に感染が広がらないようにしましょう。
血行促進
身体が温まることや身体に水圧がかかることで、皮膚の毛細血管が広がります。
血流が滞りやすい手先・足先にたまった血液が流れやすくなるため、全身の血流やリンパの流れが良くなります。
新陳代謝の促進が期待でき、健康の維持にもつながります。
リラックス効果
普段は関節の痛みなどで身体を動かしづらい場合でも、浮力によって負担が少なく手足などを動かせることもあります。
身体がほぐれやすくなると副交感神経が働き、リラックスできるでしょう。
また、入浴での適度な体力消耗や血行促進によって、睡眠の質の向上が期待できます
中間浴の介助手順
中間浴の介助手順を解説していきます。
利用者さんに安心して入浴していただけるように、しっかりと手順を理解したうえで入浴をサポートしましょう。
衣服を脱いでもらう
まずは利用者さんに衣服を脱いでもらいます。
下半身の衣服は、リフトに移乗してから脱いでもらうようにしましょう。
お互いに慣れてくると説明を省いてしまいやすくなりますが、その都度しっかり声かけをしてください。
特に認知症のある方にはきちんと説明して理解を得ないと、恐怖から入浴拒否や暴力行為に至る可能性があります。脱衣所まで来たら、これから入浴することを説明しましょう。
また、裸を見られることへの抵抗感がある利用者さんもいます。
声かけに加えて、タオルをかけるなどの対応をしましょう。
座ったまま洗身・洗髪する
身体や頭は、リフトに座ったまま洗います。
最初に足元からかけ湯をして、お湯の温度を確かめてもらいましょう。
いきなり身体の中心部にお湯をかけてしまうと、ショックで体調が急変してしまう恐れがあります。
お湯は手足から徐々にかけていき、問題ないことを確認しながら全身を温めることが基本です。
また、自分で洗える場合は本人にやっていただきましょう。
どこから洗うかこだわりがある人もいますし、自分自身で洗うことで満足感や自立支援にもつながります。
浴槽へ入る
座ったままリフトを浴槽へ移動させ、入浴します。
リフトにしっかりと座れているか、また安全ベルトをしっかりと着用できているかを確認するようにしましょう。
事故を防ぐためにも、座った姿勢が保持されていることが重要です。
リフトの揺れによる振動や機械音によって不安を感じることもあるでしょう。
利用者さんに寄り添った声かけや、ゆっくりと丁寧に介助を進めることが大切です。
事故を防ぐために注意すること
入浴介助では事故を防ぐために細かな注意が必要です。
自分で身体を動かせないと思い込んでしまうと、大きな事故の原因になります。
また、機械を利用する中間浴では、介護者も怪我をしてしまうリスクがあります。
事故を防ぐためにも、注意点をしっかりと把握しておきましょう。
入浴前
はじめに利用者さんの健康状態を確認します。
体温や血圧は正常であるか、顔色が悪くないかを確認しましょう。
利用者さん自身が入浴をしたいかどうかを確認することも大切です。
無理に入浴を促してしまうと、体調が悪化しかねません。
必ず確認をとり、体調が悪い場合には、清拭などその時に合った入浴方法に切り替えましょう。
入浴前に水分補給をしておくことも忘れないようにしましょう。
入浴による発汗により、脱水状態になる可能性があります。
また、ヒートショックを防ぐため、特に冬場は脱衣所と浴室の両方を温めておくことも重要です。
急激な温度変化による血圧の急上昇や下降による脳出血や心筋梗塞のリスクを軽減できます。
入浴中
浴室に入ったら、まずは介護者がお湯に触れ、適温であるかどうかを確かめるようにしましょう。
特にシャワーの温度は急に変わってしまうこともあるので、常に介護者もお湯に触れるようにしておくことが重要です。
湯船に浸かる際には、お湯の高さが心臓より上にならないようにすると身体に負担が少ないです。
のぼせる可能性もありますので、時間は5分程度を目安にしましょう。
そして、介護者自身も怪我をしないように注意することが大切です。
リフトを下降させている際に、リフトと石鹼などを収納する台との間に手を挟んでしまったという事故も発生しています。
中間浴は利用者さんに寄り添った姿勢で介助する必要があるため、リフトに意識が行き届かない場合があるのです。
介護者自身も負傷事故を起こしてしまうリスクが潜んでいることを、しっかりと把握しておきましょう。
入浴後
入浴後は湯冷めをしてしまわないように、すぐに身体を拭きましょう。
また、脱水症状を防ぐためにも、入浴後にも必ず水分補給を行ってもらいます。
入浴は少なからず体力を消耗します。
ひどく疲れてしまっていないかなど、体調に変化がないか目配り・気配りを心がけましょう。
中間浴を通して、利用者さんとのコミュニケーションを図りましょう!
中間浴は、立ったり歩いたりが難しい利用者さんの入浴をサポートするためにはとても有効な入浴方法です。
また、介護者にとっては、体力の負担軽減により心に余裕ができるので、より利用者さんに寄り添ったサポートがしやすくなるでしょう。
入浴介助は利用者さんとコミュニケーションをとることができる大切な機会です。
中間浴の正しい知識を身につけて、安全安心な環境で利用者さんとの信頼関係を深める機会にしていきましょう。