「在宅医療の薬管理をケアマネはしてもいいのか?」
「薬管理ができていない在宅療養者が多いが、ケアマネはどうするべき?」
このように悩まれている方は多いのではないでしょうか。
実際に薬の管理ができていない現状が問題視され、深刻化しつつある状態です。
本記事では、ケアマネは在宅医療の薬管理をするべきなのかについて解説します。
薬の管理は基本的に薬剤師や看護師に任せるべき
「在宅の薬管理をケアマネもするべきなのか」は、ケアマネ同士の議論の的にもなる疑問。
結論からお伝えすると、基本的には薬剤師や看護師に任せるべきです。
その理由は3つあります。
- 医療行為にあたる
- 薬学知識がない
- 責任が取れない
そもそも、薬の管理は医療行為にあたるため、医療従事者でなければ行えません。
また、薬の飲み合わせに関する知識や飲み方、服用タイミングや服用量などの知識も必須です。
間違えてしまえば命に関わることもあり、万一のことがあっても責任が取れません。
ただ、そうも言っていられないような現状であることも確か。
在宅療養者の薬管理は困難を極めており、医療従事者とケアマネの連携が欠かせません。
在宅療養者の薬管理が深刻化している
在宅療養者の服薬管理が全国的に問題視されており、ケアマネへのアンケートで在宅療養者の家族から薬に関する相談が、ケアマネに多く寄せられていることがわかりました。
第56回研究発表で行われたアンケートの結果が下記の画像です。
なかでも薬の飲み忘れの多さについての相談内容が多いことが、アンケートによりわかっています。
アンケートの回答にはありませんが、古い薬との混在がしている状況も多く見受けられており、在宅での薬管理の難しさが課題にあがっています。
薬の飲み忘れが多い
薬の飲み忘れは家族からケアマネへの相談が最も多いことから、在宅医療での薬管理で最も問題視すべき課題といえます。
飲み忘れのリスク
服用回数は「血中の薬の濃度」と「効果持続時間」のバランスをみて決め、服用タイミングは薬の吸収特性や副作用のリスクなどを考慮して決められています。
つまり、決められた薬の回数やタイミングで摂取することで、薬の効果を最大限に引き出し、なおかつ副作用のリスクを抑制できるようになっているのです。
よって、飲み忘れが多いと薬の効果を発揮できず、疾患の改善や症状の改善・緩和が厳しくなったり、副作用を起こしやすくなるリスクがあります。
1年以上も前の薬との混在が見られる
1年以上も前の薬と新しい薬が混在している状況が多く見受けられていると、研究発表で発表されました。
古い薬が混在する原因として以下が考えられます。
- 飲み忘れによる残薬
- 薬の知識不足で破棄していない
- 認知力の低下で破棄できていない
- 服薬管理ができる人がいない
訪問薬剤師や看護師の毎日の訪問が困難であること、ケアマネによる連携が取れていないなどの理由から上記が起こると考えられます。
古い薬を飲むリスク
使用期限の切れた古い薬は効果がなくなるだけでなく、体に悪影響を及ぼす恐れがあります。
薬は、成分が変質したり分解されたりして毒性のある物質を生成したり、細菌が増殖したりするケースがあるのです。
たとえば、ビタミンB2のように日光にあたると効果が喪失する成分があったり、テトラサイクリン系の抗生物質は期限が切れることで病気になる可能性が指摘されています。
このように、古い薬は病気や感染症を引き起こすリスクがあるため、必ず破棄しなくてはなりません。
医療従事者とケアマネで連携が大切である
第56回_研究発表112では、看護師の理解力を向上させるとともに、飲み忘れを抑制するための方法、入院しているときから服薬確認の体制をケアマネと連携することが必要であると提言しています。
本来、服薬管理は医療行為であるため薬剤師や医師、看護師でなければできません。しかし、医療従事者不足もあり、毎日の訪問やこまめの訪問は困難です。
薬管理の問題を解決するには、一緒にケアを担当しているケアマネと連携し、残薬のチェックをして医療従事者に報告することが重要です。
よって、服薬管理が行き届いていない状態がみられる場合は、ケアマネが率先して看護師や薬剤師に連絡をとり、相談することが必要でしょう。
ケアマネが在宅医療の薬管理をするならどの範囲までするべき?
もし、ケアマネが医療従事者と連携して在宅医療の薬管理をするなら、どの範囲までやるべきなのでしょうか。
以降では、それを踏まえたできる範囲、薬管理に何かしら携わる場合の心構えをもう少し詳しくお伝えします。
あくまで看護師や薬剤師のフォローであるべき
薬管理をするうえで気を付けるべきことは「意識」です。
自分だけで薬管理をしようと思うことは、大きな間違いを犯すことにもつながります。
ケアマネは”介護職員”です。
あくまで看護師や薬剤師のフォローであることを忘れず、何かあればすみやかに薬剤師などに相談しましょう。
服薬の声かけ・準備
在宅療養者が薬の飲み忘れをしないよう、服薬の声かけや薬の準備をカレンダーや服薬ボックスに沿って行います。
ただし、療養者本人が認知症を患っている場合は、声かけしても薬を準備している間に薬の種類や服用量を忘れていることがほとんどです。
そのような方には薬を用意したほうがよいこともあります。
服薬の様子を観察する
服薬を促すだけでなく、服薬の様子をしっかり観察することも服薬管理をするうえで大切なことです。
たとえば、飲みづらそうでないか、誤嚥で咳き込まないか、喉をつまらせていないかなどを観察します。
高齢者は飲み込む力が弱るため、薬の形状や大きさなどによっては飲みにくく非常に苦労します。
また、普段飲んでいる薬の種類が20種類を超える方も少なくないため、飲みやすさを考えることは、飲み続けるために必須といっても過言ではありません。
服薬に関する悩みを聞く
服薬に関する悩みを聞くこともやるべき仕事のひとつ。
理由は「目で見えているものだけがすべてとは言い切れないから」です。
薬を難なく飲んでいる様子であっても、実は「粒が大きくて飲みこみにくい」「飲むのが怖い」と思っている可能性もあります。
薬剤師に薬の一包化や錠剤の形の変更など依頼・相談する
薬剤師に薬の一包化や錠剤の形の変更などを依頼・相談することも、訪問が難しい薬剤師のフォローとなります。
ケアマネの独断で薬の形状を変更したり、量を減らしたり、一包化したりすることはできません。
しかし、担当の薬剤師と連携することで、療養者にとってベストな形を目指せるのです。
まとめ
在宅医療の薬管理問題は、医療従事者不足もあり、薬剤師や看護師、医師だけで対応することは困難です。
とはいえ、ケアマネは介護職員ですので本格的な薬管理はできません。
結論としては、ケアマネは服薬介助のなかでできることをしながら、薬剤師や看護師が知りたい情報を伝えられるように療養者を観察し、こまめに状況を伝える連携が必要といえます。