年齢を重ねるごとに膝痛や腰痛、姿勢の崩れなど、若い頃と比べて体の衰えを感じている方は多いのではないでしょうか。
抗えない加齢による体の衰えはあるでしょう。
しかし現在感じているさまざまな不調は、もしかしたら膝の裏をしっかり伸ばすことで改善するかもしれません。
膝裏を伸ばすことが健康な体へとつながるのです。
そこで、なぜ膝裏を伸ばすことが身体機能の維持・改善のために重要なのか、また膝裏伸ばしで期待できる効果と簡単にできる方法について解説します。
なぜ膝裏を伸ばすことが重要なのか?
人間が重力に負けずにまっすぐ立つことができるのは、体を伸ばす筋肉の力があるからです。
体を伸ばす筋肉はおもに体の後ろ側にあり、膝は体を伸ばす筋力の起点となっています。
そのため加齢や病気などにより体を伸ばす筋力が衰えると、体は重力に負けてしまい、まず起点である膝が曲がってしまうのです。
膝が曲がってしまうと、連鎖的に体の不調が起こります。
膝裏が伸びないことで起きる体の不調
膝が曲がってしまうと起きる不調の連鎖は以下の通りです。
- 膝が曲がる
- 太ももの裏の筋肉が縮む
- 縮んだ太ももに引っ張られて骨盤が後ろに倒れる
- 腹筋がゆるむ
- 猫背になる
- 肩が丸まる
- 首と頭が前に出る
膝や腰が曲がって猫背の状態になると、ますます筋力を使えなくなり衰えていくという悪循環に陥ります。
転びやすくもなるので、ケガをするリスクも高まります。
また、同時に起こる可能性がある症状は以下の通りです。
- 体を伸ばす筋力が衰え、体幹に力が入らず腹圧がかからなくなる。
- 腹圧が弱くなると骨盤が後ろに倒れ、腰痛の原因になる。また内臓の血流が悪くなり機能が低下する。
- 肩が丸まり、首と頭が前に出ることで首の痛みや肩こりが出現する。また胸が縮まり呼吸が浅くなる。
- 1~4すべての影響で自律神経のバランスが崩れ、高血圧、代謝の低下、免疫力の低下などさまざまなトラブルが起きる。
膝裏伸ばしで期待できる効果
体を伸ばす筋力の起点である膝裏をしっかり伸ばすことで、不調の連鎖を好循環に切り替えることができます。
- 膝裏が伸びる
- 太ももの裏の筋肉が伸びる
- 骨盤が立つ
- 背筋が伸びて腹筋に力が入る
- 肩や胸が開く
- 首と頭が背骨の上に乗り正しい姿勢になる
好循環になれば、以下の効果も期待できます。
- 骨盤が立つことで腹圧がしっかりかかるようになる。
- 腸の血流が良くなり便秘の解消になる。
- 腸が活性化することで免疫力が上がる。
- 幸せホルモン「セロトニン」の分泌が増えて気持ちが明るくなる。(体の免疫細胞の約7割が腸に存在するため、またセロトニンも腸に多く存在するため)
- 肩や胸が開いて呼吸が深くなることで代謝が上がる。自律神経のバランスが整う。
- 姿勢が良くなり転ぶ危険が減り、歩きやすくなる。
効果的で簡単な膝裏伸ばしの方法
膝裏を伸ばすことが体のために大切だとわかったところで、次は効果的で簡単にできる膝裏の伸ばし方をご紹介します。
簡単なものばかりですので、仕事や家事の合間、テレビを見ながらなど気づいたときに実践してみてください。
イスに座ってできる膝裏伸ばし
- 膝が90度になるように、イスに浅く腰をかけます
- 右手をもものあたりに添えます
- 右膝を伸ばし、かかとは床に付けたまま、つま先を天井に向けます
- 右手をすねの方へスライドさせていき、上半身を股関節から曲げるイメージで前へ倒します
- 背筋を伸ばし、膝裏からももの後ろ側が気持ちよく伸びていることを感じながら15秒~30秒キープします
- 右足を元に戻して、左足も同様に行います
開脚して行う膝裏伸ばし
- 床に座って両足を開きます
- 膝が曲がらないように注意しながら、上半身を右側へ倒します
- 背筋を伸ばしたまま、おなかをももに近づけるイメージで倒した状態で15秒~30秒キープします
- 体を元に戻して、左側も同様に行います
タオルを使って仰向けで行う膝裏伸ばし
- スポーツタオルかバスタオルを用意して、膝を立てて仰向けに横になります
- 右足を上げて足裏にタオルをひっかけます
- ゆっくり右膝を伸ばしていきます
- 息を吐きながらかかとを天井に向かって伸ばし、タオルを胸に引き寄せるようにして膝裏から足裏全体が伸びていることを感じながら30秒ほどキープします
- 右足を元に戻して、左足も同様に行います
医師考案の高齢者にもおすすめの膝裏伸ばし
山口県にある、かわむらクリニック院長の川村医師が考案した膝裏伸ばしは、特に高齢者におすすめの体操です。
テレビや雑誌でも紹介され、高齢者施設の体操やレクリエーションに広く取り入れられています。
1回5秒でも効果があるので、無理のない範囲で毎日続けることが大切です。
壁を使った膝裏伸ばしの基本
- 背筋を伸ばして、両足を揃えて壁の前に立ちます
- 左足を前に、右足を後ろに前後に開きます
- 右足を曲げて、左足の膝裏を伸ばして壁に両手をつき、大きく息を吸います
- 左足のかかとが浮かないように気を付け、左膝裏の伸び意識し、おなかと腰に力をいれて、息を吐きながら5回壁を押します
- 腕を伸ばして壁を5秒間押し、息を吐き切ります
- 3~5をもう一度繰り返す(1回でも効果はあるので無理はしない)
- 足を入れ替え、同様に行う
足を前後に大きく開くほどストレッチ効果は高まります。
しかし最初は足を前後に開く幅が狭くてもいいので、背筋が伸びた姿勢をキープすること、後ろ足の膝がしっかり伸びていることを意識して行ってください。
続けていくうちに、徐々に足の幅を広く取れるようになっていきます。
体幹の筋肉を鍛えゆがみを直す体操
- 壁に、かかと、お尻、肩、後頭部の4か所を付けて立つ、かかとは90度に開く
- 両手の平を体の横の壁に付け、息を吐き切る
- 太ももに力を入れ、膝を寄せて膝が曲がらないように意識する
- 手のひらを返して手の甲を壁に付け、息を吸いながら腰と壁の隙間を埋めるイメージで下腹を思い切りへこませて、5秒キープする
- 2~4をもう一度繰り返す
猫背が強く後頭部が壁に付かない場合や、壁に4か所付けられなければ、無理はせずにどちらかの足を半歩前に出して行ってみてください。
息を吸うときに腹式呼吸ではなく、おなかをへこませながら吸うことで、自律神経の活性につながります。
下半身を鍛え膝裏が伸びやすい体を作る体操
- 足を肩幅以上に大きく開いて、つま先は45度外側に向ける
- 息を吐きながら膝を曲げて腰を真下に下ろし、「1、2、3」と言いながら太ももを3回叩く
- 息を吸いながら膝を伸ばして元の姿勢に戻り、「1、2、3」と言いながらお尻を3回叩く
- 2~3を10回前後繰り返す
できるだけ腰を深く下ろした方が効果はありますが、無理のない範囲で膝を曲げましょう。
背筋を伸ばし、おなかとお尻に力を入れて前傾したり後傾しないように姿勢をキープして行うことが大切です。
施設で集団体操やレクリエーションとして行うときは、童謡など誰でも歌える歌を歌いながら行うと楽しくできます。
頭と体の両方を同時に使うことは、認知症予防にも効果があるのでおすすめです。
膝裏伸ばしで健康な体を手に入れよう
本記事では、膝裏伸ばしが身体機能の維持・改善のために重要な理由、期待できる効果や簡単に取り組める方法を解説しました。
膝が目に見えて曲がっていなくても、しっかり伸ばせていない人は年代を問わず意外と多いようです。
試しに膝にしっかり力を入れ、膝裏を伸ばすことを意識して立ってみてください。
体がすっと伸びて姿勢良く立てることを実感できるはずです。
同時に自分で思っているよりも膝裏を伸ばせていないことにも気づくかもしれません。
「年を取ったから仕方がない」とあきらめる前に、自分の望む体の状態に近づけるように、ぜひ膝裏伸ばしに取り組んでみてください。