足浴はフットケアの1つで、足を温めながら洗浄する方法です。
足を清潔に保つだけでなく、血行促進効果やリラックス効果があるため体の状態によって全身浴ができない方にも取り入れやすいです。
また足浴は全身浴よりも血圧の変動が少ないため、体に負担がかからない入浴方法ともいえます。
今回は足浴の効果と実施方法をポイントごとに解説します。
足浴の対象者はどんな人?
まずは足浴の対象者を紹介します。
- 全身浴が適さない人
- 糖尿病の人
- 睡眠障害がある人
なぜ対象となるのか、それぞれ詳しく紹介します。
1.全身浴が適さない人
足浴は全身浴が適さない人に効果的なケアです。
病気によって麻痺がある方やケガなどで体を動かしにくい方には全身浴をするにも介助が必要であり、浴室内での転倒の恐れがあります。
心不全などの心疾患がある方は全身浴では血圧の変動が大きいため、体調不良を起こすリスクがあります。
2.糖尿病の人
また、糖尿病の方のフットケアとしても足浴はおすすめです。
高血糖状態が続くと神経障害を起こし、血管の状態も悪くなるため、足に症状をきたしやすくなります。
しかし、神経障害を起こすと足の感覚が鈍くなり、傷など足に症状があっても気づきにくいです。
傷から感染症を起こしてしまうと治りにくいため足に潰瘍ができやすく、最悪壊疽や切断といった一途をたどります。
足を守るためにもフットケアは重要であり、手軽に行える足浴がおすすめです。
血行促進により、辛い神経痛や足のしびれを軽減する効果もあります。
3.睡眠障害がある人
ほかにも足浴にはリラックス効果があるため、睡眠障害のある人の睡眠を促す援助としても利用されています。
足浴を禁忌とする人
足浴は比較的安全な入浴方法ですが、疾患によってできない場合もあるため実施前に確認が必要です。
まず、医師から足浴は禁忌といわれている人は絶対にしないでください。
他にも足に傷がある方や心疾患や感覚障害がある方はまず医師に相談しましょう。
足浴の効果
足浴には大きく分けて4つの効果があります。
ではどのような効果があるのかをみていきましょう。
足の血行促進効果
足浴により、足の加温・血管拡張が促され、血流量が増加します。
足浴による血流増加は30分以上維持されることがわかっています。
加温後にバスタオルを巻くとより効果的です。
また、足浴前後の全身の血流量や血圧は大きく変動しないため、安定した状態を保てます。
足の血行促進によりむくみを改善したり、老廃物を排出したりデトックス効果も期待できます。
血行を促進するためには運動も有効ですが、体を動かすことが難しい方に対して足浴は日常で手軽に取り入れられる方法といえます。
リラックス効果
足浴中は交感神経が働き、足浴後は副交感神経が働き、自律神経のバランスを整える効果があります。
自律神経のバランスを整えることはリラックス効果にもつながります。
リラックス効果をさらに高めるには、ラベンダーオイルなどの香りづけをすると良いでしょう。
特に寝つきが悪い方は睡眠前に足浴を行うことで入眠促進効果も期待できます。
足を清潔に保つ
足の衛生状態が悪いと水虫などの感染症を起こしやすくなります。
足は複雑な部分であり、しっかり洗えていると思っていても、洗い残しが多いです。
洗い残しがあると雑菌が繁殖し、においの原因にもつながってしまいます。
指と指の間など雑菌がたまりやすいため、しっかり洗うことが大切です。
足を清潔に保つことで感染症予防を期待できます。
足の状態を観察する
足浴は利用者さんの足の隅々まで観察できる良い機会です。
足の傷や巻き爪などがあれば処置が必要です。
意思疎通が難しい方だと、足に病変があっても伝えきれていない場合があります。
足浴の際に介護者が足を観察することによって、病変の早期発見・治療につながります。
足浴の準備
足浴の際、必要なものをまとめました。
足の状態によって必要なものを取り入れましょう。
【準備するもの】
- 両足入る程度の洗面器やバケツ
- 足首程度つかるだけのお湯
⇒38~41℃程。足浴時に熱く感じない程度に調節してください。
- 石鹸(固形でない泡状のもの)
- タオル
⇒足浴後に水気をふき取る用と入浴後冷えないように温める用の2つあると良いです。
- かけ湯できる入れ物(ピッチャーやペットボトル)
- 防水シーツ
- ひざ掛けなど足上を温めるもの
- クッション
【必要に応じて準備するもの】
- 好きな香りのアロマオイル
⇒ラベンダーやベルガモットなどの香りはリラックス効果が高くおすすめです。
- 保湿剤
- 爪切り
足浴の方法
足浴に必要なものがそろったらさっそく足浴しましょう。
足浴する方がリラックスできているかを観察しながら行うことがポイントです。
「お湯加減はいかがですか」「気持ち悪いところはないですか」などの声掛けをしましょう。
①足浴のセッティング
足を入れる容器に38~41℃のお湯をはり、容器の下には床が汚れないように防水シーツを敷きます。
お湯が冷めないようにお湯は足浴する直前に準備しましょう。
②利用者さんに声をかけ準備
利用者さんに足浴をする旨の声掛けをしましょう。
足浴が始まるとトイレなど自由に行動できなくなるため事前に済ませてもらいます。
足浴ができる状態になったら、座った状態で裸足になってもらい衣類が濡れないようにまくります。
膝から上には冷えないようにひざ掛けをかけてあげてください。
また、利用者さんの膝の下にクッションを入れて足が安定するようにしましょう。
寝たきりの利用者さんも寝たまま膝を曲げて足浴することが可能です。
無理やり起こして足浴をすると、体勢を変えた際や座位を維持できずに傾いた際に、ケガにつながるリスクがあります。
足浴は安定した姿勢で行うことが大切なので、無理せずベッドに寝たまま行うことをおすすめします。
ベッドに仰向けに寝た状態で膝を曲げ、ベッドに防水シーツを敷きます。
防水シーツの上にお湯を張った容器を用意し足浴しましょう。
③足浴を始める・足の洗浄
足にお湯をかけてお湯加減を調節します。
いきなり容器に足を入れるとやけどしてしまう恐れがあるため注意し、片足ずつゆっくりと石鹸を使って足を洗浄していきます。
石鹸は、固形石鹸だと洗い残しが出やすいため泡状の石鹸を使ってください。
傷口に染みていないか確認しながら洗浄しましょう。
指と指の間やかかとは洗い残しや汚れが多い部分なのでしっかりと洗ってください。
洗い終わった足は、もう片方の足を洗い始める前に、冷えないようタオルで巻いて保温しましょう。
④足を温める
洗浄後のお湯を綺麗なお湯に張り替えて足浴していきましょう。
30分程度行うと血行促進に効果的ですが、難しい場合は利用者さんに合わせて時間を設定します。
時間が経つとお湯は冷めてくるため、適宜お湯を継ぎ足しましょう。
アロマオイルなどを入れると、リラックス効果を高めることができます。
⑤足浴終了
足浴が終わったら乾いたタオルで足を拭きます。
足を拭く際も指と指の間は水気が残りやすいため、しっかりと拭き上げます。
足浴後の皮膚は乾燥しやすいため、必要に応じて保湿クリームを塗りましょう。
また、足浴によって爪が柔らかくなっている間に爪を切りましょう。
爪切りの処置は、足や爪に病変がなく状態が安定している場合のみ行いましょう。
処置が終わった後は、靴下をはいて温まった足が冷えないようにします。
また、足浴後には、体が温まったことで発汗します。
入浴後の脱水を防ぐために水分摂取をしてください。
足浴は効果とやりがいを得られる素敵なフットケア
今回は、足浴の効果や実施方法を紹介しました。
足浴は体に負担がかかりにくく、手軽にできるフットケアです。
足浴によりリラックスや血行促進効果が得られることはもちろんのこと、利用者さんと介護者との間にコミュニケーションが生まれ信頼関係の構築にもつながります。
足浴を通して利用者さん・介護者ともに心温まる時間を過ごしましょう。