ヘルパーは、利用者さんに薬を飲むように声をかけたり、薬を飲むときに介助したり、日常的に薬に関する業務を行っています。
そのため、利用者さんやご家族に「薬カレンダーに入れておいて」と頼まれたことはありませんか。
結論からいうと、タイトルにあるように、ヘルパーが薬カレンダーに薬をセットすることはできません。
そこで、訪問介護で薬カレンダーセットをしてはいけない理由と、ヘルパーができる服薬介助について解説します。
また、服薬介助時の注意点や処方通り内服するためのサポート方法も紹介します。
訪問介護で薬カレンダーセットをしてはいけない理由
ヘルパーが薬カレンダーに薬をセットしてはいけない理由は、薬をセットすることは「服薬管理」であり「医療行為」にあたるからです。
ヘルパーができるのは「服薬介助」で、服薬介助は医療行為にはあたりません。
「服薬介助」と「服薬管理」は似ていますが、明確な違いがあります。
服薬介助
服薬介助とは「水や薬の準備、薬を飲むための声かけや介助、内服できているかの確認、後片付け」の一連の介助をいいます。
別々に処方されている何種類もの薬を準備したり、個包装(PTPシート)から薬を取り出したりすることは「服薬管理」であり、医療行為のためヘルパーはできません。
加えて、以下の条件が満たされている場合に、ヘルパ-が服薬介助を行えます。
- 利用者さんの体調が安定していること
- 医師や看護師により副作用の経過観察が必要ではないこと
- 内服薬の誤嚥や、座薬を入れる際の出血の可能性など専門的な配慮が必要ではないこと
服薬管理
服薬管理とは、看護師や薬剤師が、医師や他職種と連携して利用者さんが医師の指示通り内服できるようにサポートし、処方通りに内服できているかを確認することです。
「医師の指示通り内服できるようにサポートする」ことは、薬カレンダーや薬ボックスに配薬することだけではなく、飲み忘れが多い利用者さんが処方通り内服できるように、医師や他職種で連携して内服回数を減らす、貼付薬への変更を検討するなど、多岐にわたります。
服薬介助とは
服薬介助と服薬管理の違いを確認したところで、ヘルパーができる服薬介助について、具体的にみていきましょう。
【ヘルパーができること】
ヘルパーができる服薬介助は以下の通りです。
- 内服用の水を準備する
- 一包化されている薬を準備する
- 声をかけて薬を飲んでもらう、介助して飲ませる
- 飲み忘れやこぼしたり落としたりしていないか確認する
- 薬袋やコップなどの後片付け
- 内服後体調に変化がないか確認
【ヘルパーができないこと】
上記でも説明してきたように、以下は医療行為にあたるため、ヘルパーではできません。
- 薬カレンダー・ボックス等に薬をセットする
- 個包装(PTPシート)から錠剤を取り出して介助する
- 市販薬や飲み忘れた薬を医療職の指示なく内服させる
- 利用者さんやご家族の希望で処方薬を増やす、減らす、内服させない
- 病状が安定していない、または専門的な配慮が必要な利用者さんへの服薬介助
ただし、利用者さん自身が行うのを見守り、正しくセットしたり内服したりできるようにサポートをすることは、ヘルパーでも可能です。
たとえば、利用者さんが薬を薬カレンダーにセットしているのを見守り、間違って入れてしまった場合にヘルパーがセットし直すことはできませんが、声かけで入れ直してもらい、正しくセットできているのを確認することはできます。
同様に、PTPシートから薬を取り出すのを見守り、飲みこぼしや飲み忘れがないかのチェックもできます。
服薬介助の注意点
ヘルパーが服薬介助を行う場合、以下の点に注意して安全性を確保することが重要です。
- 誤嚥:とろみ水やゼリーでの内服の工夫、姿勢に気をつけて誤嚥を予防する
- 飲み残し:口の中に残っていないか、薬を落としていないかの確認
- 薬の飲み合わせ:食品によっては薬の効果を弱めたり、強く作用してしまったりするため、利用者さんが飲んでいる薬と食品の関係を学んでおく
例)NGの組み合わせ
- 血圧を下げる薬とグレープフルーツ→血圧が下がりすぎてしまう
- 血液をサラサラにする薬と納豆→薬の効果を弱める
- 認知症の薬とカフェイン→興奮作用が高まる
ヘルパーが活躍!訪問介護でできる服薬サポート
利用者さんが薬を飲み忘れること、自身で薬の管理が難しいことはよくあるケースです。
身近に接しているヘルパーだからこそ把握できている生活状況や精神状態、利用者さんの行動パターンにより、どこに薬カレンダーや貼り紙を設置すればよいのか提案したり、試行錯誤しながら利用者さんが飲み忘れない対策をしていったり、ヘルパーができることは多くあります。
飲み忘れ対策
毎日処方通りに内服するためには、薬が見える位置にあって、飲み忘れたことに気づける環境を整えることが大切です。
そのため、薬カレンダーは有効な手段のひとつといえます。
また、薬カレンダー以外にも、利用者さんがよく目につく場所に「今日の薬は飲みましたか?」などわかりやすい貼り紙をしておくのも効果的です。
また、携帯電話を利用していれば携帯電話のアラームを内服時間に鳴るように設定したり、薬の時間を教えてくれたりする専用のアラームなどもあります。
飲み過ぎ対策
飲み忘れとは反対に、飲んだことを忘れて飲み過ぎてしまうパターンもあります。
飲み過ぎの場合は、次のような工夫をしてみましょう。
- 薬カレンダーの位置を常に目に入らないところに設置する
- 飲み終わったら空き袋を薬カレンダーに戻して内服の完了をわかるようにする
- 行動を忘れないための貼り紙をわかる位置に貼る
- 内服後「飲み終わりました」というメモをわかる位置に貼る など
日付がわからないときの対策
薬カレンダーに薬がセットしてあっても、日付や曜日がわからず飲み忘れたり、飲み過ぎてしまったりするパターンもあります。
いつも本人が新聞を置いている場所の近くに薬カレンダーを設置する、薬カレンダーのそばに大きく日付と曜日と時間が表示されるデジタル時計を置く、などの工夫をしてみましょう。
訪問介護で薬カレンダーセットはNG!服薬介助のルールを守って必要なサポートをしよう
本記事では、訪問介護で薬カレンダーセットをしてはいけない理由と、ヘルパーができる服薬介助について解説しました。
介護保険制度上、訪問介護でヘルパーができることとできないことは、医療行為だけではなく提供できるサービスについても細かく定められています。
介護現場では、介護保険制度上できないことで「○○ができたらもっと利用者さんが安心して暮らせるのに!」ともどかしくなる場面に多く遭遇する現実があります。
しかし、ルールは守らなくてはなりません。
それは利用者さんのためであり、ヘルパー自身を守ることにもつながります。