「訪問看護の処方薬の服薬管理はどうするの?」
「処方薬の指導方法はどんな感じにすればいい?」
「処方薬に関する緊急対応のケースや備えておくことは?」
訪問看護師を目指している方や、まだ職に就いたばかりの方は、このような疑問や悩み、不安を抱えていることでしょう。
基本的な処方薬の取り扱い方は、医療機関ととくに大きく変わりませんが、在宅で扱うからこその管理方法や注意点、緊急対応があります。
本記事では、訪問看護でよく取り扱われる処方薬と注意点、指導方法、緊急対応のケースと準備について解説します。
訪問看護でよく取り扱われる処方薬と注意点
訪問看護でよく取り扱われる処方薬と、それぞれの各注意点を解説します。
インスリン
糖尿病患者の血糖コントロールに用いられる処方薬は、自己注射タイプのインスリンが主流です。
自己注射が困難な方には、訪問看護師として別のインスリン製剤の投与を考えなければなりません。
とくに、薬の管理をしてくれる家族がいない場合は尚のことです。
麻薬
痛みを緩和させるために麻薬成分が配合された鎮痛剤が処方されるケースがあります。
病気の種類や痛みの強さ、日常生活への影響、利用者さんの生活状況や家族の状況をチェックし、医師と相談しながら適切な使用を検討しなければなりません。
ただし、麻薬という観点から使用を拒んだり、不安に感じたりする利用者さんは多いです。
また、便秘や吐き気といった副作用が生じて処方変更を必要とする場合は、訪問看護師が薬剤師と医師との連携をはかり、検討していくことが大切です。
睡眠薬・向精神薬
睡眠障害の改善のために睡眠薬が処方されたり、うつや不安障害などを改善するために向精神薬が処方されたりしますが、適切に扱わなければ危険です。
麻薬と同じように、摂取量を急激に増減したり使い方を間違えたりすると、副作用の発症や急激に体内に蓄積された薬効があらわれたりすることがあります。
実際に、長期にわたって睡眠薬を服用した一人暮らしの高齢者が、日中に強い眠気が起きて飲食料が減少し脱水を引き起こすケースが多いです。
異変を感じたら速やかに医師に連絡することを徹底しましょう。
【形状種類別】訪問看護における処方薬の指導方法
訪問看護における処方薬の指導方法を、薬の形状種類別に解説します。
錠剤・カプセル錠の内服薬
錠剤やカプセルは喉にひっかかったり、ひっついたりする可能性があります。
コップ1杯の水または白湯を用意して飲むことを指導しましょう。
その際に、ジュースやコーヒーなどで飲むと薬の成分が変わって効果がなくなったり、副作用が出有毒になったりするリスクを伝えるのがポイントです。
きちんと理由を伝えることで、納得しやすくなります。
カプセル錠は、カプセルの中身を取り出さずそのまま飲まなければならないことも伝える必要があります。
錠剤を飲み込むのが怖く、カプセル錠剤の中身を取り出して飲もうとする方がいるためです。
散剤の内服薬
散剤を飲むのが苦手であったり不安があったりする利用者さんには、服薬ゼリーの利用をすすめてみましょう。
服薬ゼリーなどのオブラートを利用する際は、喉をつまらせないように小さめの塊で飲むことを指導してください。
塗り薬
塗り薬を使用する際は、手が清潔な状態で薬を適量取り塗布していくことを指導しましょう。
併せて、たくさん塗っても効果は変わらないことも伝えておきましょう。
もし、認知症などで記憶低下が見られる方には、適量をとった写真とコメントを残し、薬の容器に貼り付けておくのも一つの手です。
点鼻薬
点鼻薬は鼻をかんでから使用することを必ず伝えましょう。
上を向くのが厳しい利用者に関しては、仰向けになって鼻呼吸をすることも追加で伝えるといいでしょう。
点眼薬・眼軟膏
点眼薬は清潔にした手で点眼することを指導します。
眼軟膏は、処方時の指示にしたがって下記のように指導方法を変えてください。
- まぶたに塗布する形で投与する場合→清潔な手でまぶたに眼軟膏を塗る
- まぶたの裏に塗布する場合→綿棒に少量をとって水平に動かしながら塗布する
認知症の利用者さんは、投与タイミングではないときに使用する可能性があるため、保管場所の管理指導を家族に行ってください。
貼付薬
貼付薬を使用するときは、皮膚がかぶれないように毎回場所を変えて使用することを指導しましょう。
ほとんどの方は「患部に貼らないと意味がない」と思っており、別の場所に貼っても効果があることを知りません。
また、貼付薬は強力な効果があるものが多いため、他人に薬を分け与えることはしないよう指導し、また家族にも伝えておくことも大切です。
座薬
座薬の挿入は、ゆっくり口から息を吐いてからだの力を抜いた状態で行うこと、手袋をはめて挿入することを指導しましょう。
座薬が入れにくい場合は、ワセリンを薬の先端に塗る方法も併せて伝えておくといいでしょう。
舌下薬・トローチ
舌下薬やトローチは、噛み砕いたりそのまま水で飲み込んだりしないように指導してくださいう。
認知症の方は、飴と認識して食品のように舐めてしまう可能性があるため、保管場所の指導を家族に行いましょう。
また、舌下スプレー薬を使用する場合は、何度も押していないかを必ずチェックしてください。
訪問看護における処方薬に関する緊急対応のケース
訪問看護で起こりえる、処方薬に関する緊急対応のケースを紹介します。
処方薬の過剰摂取
認知症の症状で服用回数や服用数がわからず過剰摂取するケース、精神疾患により自ら命を断とうとする衝動でオーバードーズをするケースがあります。
応急処置措置の対応は、症状の状態や医師の指示に従って行ってください。
オーバードーズの場合、寂しさや過剰なストレスが原因であることが多いです。
意識が戻ったあとの心のケアについても周りと話し合い検討する必要があるでしょう。
重篤な副作用やアレルギー、相互作用の発症
薬の重篤な副作用やアレルギー反応によるアナフィラキシーショック、薬と別の何かによる相互作用が原因の体調不良など、さまざまなケースがあります。
副作用やアレルギーによるものの体調不良の場合は処方変更を検討し、相互作用が考えられる場合は薬の服用前後の飲食物を探り、指導しなければなりません。
適切に対応するために事前にするべきこと
緊急時に適切に対応するために、事前にするべきことが4つあります。
- 処方薬で起こりえるトラブルを共有しておく
- 緊急時に連携する医療機関の連絡先とアクセス方法を共有しておく
- 緊急対応ができるよう部屋を整備する
- 緊急時の行動を訓練する(家族と同居している場合)
緊急時は、どれだけ素早く適切な処置・行動ができるかがキーポイント。
処方薬で起こりえるトラブルを家族や利用者さん本人に共有し、体調の異変を感じたら速やかに相談して欲しいという旨を伝えておきましょう。
緊急道具を保管する場所を確保する、処置するためのスペース確保をするなど、いざという時のために備えておきましょう。
普段から緊急時の対応に慣れておくことで、家族が冷静に行動しやすくなります。