介護職

薬に関してヘルパーがやってはいけない事は?基本業務の確認とできない依頼への対処法も解説

ヘルパーは、利用者さんが薬を飲むのを手伝ったり、入浴介助後に軟膏を塗ったり、薬に関する業務を担当しています。

日常的に薬の介助を行っていますが、薬に関してヘルパーがやってはいけない事が把握しきれず、利用者さんやご家族に依頼されたときにやっていいのかと迷ったことはありませんか。

そもそもケアプランに位置づけられていないことはやってはいけないのですが、ヘルパーとしてやってはいけない事を把握しておくことは、仕事をしていく上でとても重要です。

そこで、薬に関してヘルパーがやってはいけない事・やっていい事、基本業務の範囲やできない依頼をされてしまったときの対処法について解説します。

ヘルパーの基本業務とは

ヘルパーは、在宅で生活している利用者さんの自宅を訪問し、利用者さんが自立した生活を送るために必要なサービスを提供します。

提供するサービス内容は、ケアマネジャーが作成したケアプランに位置づけられていて、ケアプランにそって必要な支援を行います。

ヘルパーの基本業務は「身体介護」と「生活援助」の2つです。

身体介護

身体介護とは、利用者さんの身体に直接触れて行う介助です。

食事の介助や入浴介助、トイレまでの移動の介助やおむつ交換など、利用者さんが病気や障害などにより、一人では困難な部分をサポートします。

生活援助

生活援助は、利用者さんが身体状況などによってできない家事のサポートを行います。

具体的には、食事の準備や片付け、買い物代行、洗濯、掃除などです。

生活援助は利用者さん自身の日常生活に関わることしかできないため、家族の分の食事の準備や買い物、庭の掃除や大掃除などはできません。

薬に関することは身体介護?生活援助?

利用者さんに薬を飲んでもらう「服薬介助」は、身体介護にあたります。

服薬介助とは「水や一包化された薬を準備する、内服の介助をする、後片付け」の一連の介助をいいます。

薬に関することでも、直接介助をするわけではなく「薬局での薬の受け取り」をする場合は生活援助です。

薬に関してヘルパーが行える範囲

ヘルパーは医療行為を行うことは認められていません。

そのため、薬に関してヘルパーができる事は、医療行為にあたらないことのみです。

薬に関してヘルパーができる事

ヘルパーができる事は、以下の通りです。

  • 一包化された薬の服薬介助
  • 薬を薬局で受け取る
  • 軽微な傷、やけどの処置(汚物で汚れたガーゼ交換を含む)
  • 軟膏の塗る(褥瘡の処置を除く)
  • 湿布の貼る
  • 目薬を点す
  • 坐薬を入れる
  • 市販のディスポーザブルグリセリン浣腸の使用
  • 点鼻薬の噴霧
  • インスリン注射の単位数の確認、見守り

ただし、上記の介助を行うためには、下記の条件を満たすことが必要です。

  • 利用者さんが治療の必要がなく状態が安定していること
  • 副作用の危険性や投薬量の調整などのために、医師や看護師による経過観察が必要ではないこと
  • 内服薬の誤嚥の可能性、座薬の場合は肛門からの出血の可能性など、専門的な配慮が必要ではないこと

体調管理に関してヘルパーができる事

薬は伴いませんが、体調管理に関してヘルパーができる事も確認しておきましょう。

  • 体温計で体温を測定する
  • 自動血圧測定器で血圧を測定する
  • パルスオキシメーターで酸素飽和度(SpO2)を測る
  • ストマ装具のパウチ内の排泄物を捨てること(肌に密着したパウチの交換は除く)
  • 爪切り(爪に異常や糖尿病疾患による専門的な管理が必要ではない場合)
  • 耳垢の除去

薬に関してヘルパーができない事

ヘルパーができない事は、以下の通りです。

  • 一包化されていない薬の服薬介助(個包装・PTPシートから錠剤を取り出す、市販薬の服薬介助など)
  • 薬を薬カレンダーやボックスにセットする
  • 状態が安定していない、医師や看護師による経過観察が必要、専門的な配慮が必要な人の服薬介助
  • 専門的な判断が必要な傷や褥瘡の処置 
  • その他医療行為にあたること(摘便や点滴、注射など)

上記は医療行為にあたるため、ヘルパーではできません。

薬を薬カレンダーにセットしたり、個包装(PTPシート)から薬を取り出したりすることは、ヘルパーでも問題なくできると思われますが、できない事なので注意しましょう。

できない事を頼まれてしまった場合の対処法

ヘルパーは、上記で説明した医療行為が行えないことはもちろんのこと、ケアプランに位置付けられていないサービスは提供できません。

しかし、介護保険の細かいルールや、医療行為であるかどうかなど、利用者さんやご家族はなかなか理解が難しく、気軽に依頼されてしまう場面はよくあります。

できないことを依頼されたときに、困っているならばやってあげたいと思い、申し訳ない気持ちになったり断りづらかったりするでしょう。

しかし、できないことはしっかり断らなければなりません。

その対処法をみていきましょう。

できない理由をきちんと説明する

できないことを頼まれた場合は曖昧な返答はせず、しっかり断ることが大切です。

薬や体調管理に関する事を自己判断でやってしまったり「今回だけ」と安易にやってしまったりすると、思わぬ体調の悪化を招いて利用者さんやご家族を苦しめることになったり、大きな事故につながったりする可能性があります。

薬や体調管理に関する事ではなくても、本来できないことをやってしまったことで後々トラブルになり、事業所の責任問題に発展してしまうこともあります。

そのため、できないことを頼まれたらできないことをしっかり伝え、理由を説明することが大切です。

管理者やケアマネジャーに相談すると伝え、持ち帰る

上記のように断ったとしても「どうしてできないのか」と納得してもらえなかったり、そもそもその場で断ることが難しい状況も多々あります。

薬や体調に関する事で緊急を要する場合は、その場で管理者やケアマネジャーに連絡して指示を仰ぎます。

緊急性がない場合は「一度事業所へ持ち帰り管理者と相談して返答します」とお伝えし、管理者やケアマネジャーへ相談しましょう。

利用者さんやご家族によっては、無理だとわかっていても「困っているのにやってくれないのか」と主張されるケースもあります。

一人で対応してトラブルにならないように、対応策を事前に相談しておく、事業所内で情報を共有しておくことも重要です。

ほかの代替サービス(ボランティア・有償サービスなど)があれば提案する

介護保険の枠ではできないことでも、地域のボランティアやヘルパーの介護保険外の有償サービスなどがあれば、情報提供するのもひとつの方法です。

しかし、そのような情報提供を行う場合でも、ヘルパーが自己判断で情報提供するのではなく、管理者やケアマネジャーに相談してからにしてください。

なぜなら、ヘルパーの一存で紹介したサービスでなにかトラブルがあった場合の対応が難しかったり、責任を問われてしまったりするからです。

ヘルパーの基本業務・やってはいけない事を把握しておこう

本記事では、薬に関してヘルパーがやってはいけない事・やっていい事、基本業務の範囲やできない依頼をされてしまったときの対処法について解説しました。

ヘルパーは利用者さんの自宅を訪問して1対1の対応、もしくは利用者さんとご家族の対応をしなければなりません。

利用者さんのためにも自分自身を守るためにも、ヘルパーがやってはいけない事を把握しておくことはとても重要です。

介護保険の仕組みとしてやってあげたくてもできない事も多く、もどかしい気持ちになることもあるでしょう。

しかしルールは守らなくてはなりません。

ぜひ本記事を参考に、薬に関してヘルパーとしてやってはいけない事を把握しておいて、業務に活かしていってください。

ABOUT ME
瀬古高行
医療と経済の架け橋である「医療経済学」を研究。テクノロジーとアイデアでヘルスケア関連の問題を解決すべく情報発信を行う。医療・介護サービスのDX化推進に向けたコンサルテーション事業に従事。株式会社femto代表取締役。
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