処方薬や市販薬は、適切に使用することで病気を治す助けになったり、病気の進行を遅らせたり、病気を予防することができます。
しかし一歩使い方を誤れば、薬の効用がマイナスに働き、場合によっては利用者さんの命に関わることもあります。
本記事では、ケアマネが薬の知識を身につけるとどのようなメリットがあるのか、またケアマネという立場で何ができるかについて解説します。
ぜひ参考にしてください。
なぜケアマネに薬の知識が必要なのか
ケアマネの資格試験でも薬に関する問題が出題されるので、ケアマネなら薬の基礎的な知識は持っていると思います。
そして多くのケアマネが、仕事をする中でさらなる薬の知識が必要だと感じ、知識を増やしたいと考えています。
ではなぜケアマネに薬の知識が必要なのか、詳しくみていきます。
①薬が正しく服用されているか確認ができる
医師や薬剤師は、薬の適切な服用について説明することはできますが、利用者さんが指示通り薬を服用しているか確認することはできません。
利用者さんの病状や性格、生活パターンをよく知っているケアマネだからこそ、確認ができ気づけることがあります。
【薬の服用についてケアマネだから確認できること】
- 薬の飲み忘れや過剰摂取はないか(認知機能が低下している方に注意)
- 自分の判断で服用を中止していないか(副作用が心配で服用しないなど)
- 服用時間を守っているか(食前なのに食後に服用しているなど)
- 間違った飲み方をしていないか(水以外で服用するなど)
②相性の悪い食品などの飲食はないか確認ができる
多くの利用者さんは薬を何種類も服用しており、医師や薬剤師が薬の飲み合わせについて確認をしています。
しかし、市販薬やサプリ・健康食品を摂取していた場合、その情報は医療職に共有されません。
もし市販薬や健康食品などの摂取があれば、医療職へ情報提供を行い、危険な組み合わせがないか確認します。
あらかじめ利用者さんやご家族に処方薬以外の薬やサプリ・健康食品などをとっていないか、聞いておくとよいでしょう。
また普通の食品でも薬によっては食べ合わせが悪いものもあり、知らずに飲食してしまうリスクもあります。
ケアマネのちょっとした声かけや医療職への情報提供で、思わぬ危険から利用者さんを守ることができます。
【薬と食品の危ない組み合わせの例】
・抗血栓剤(ワルファリンカリウム)と納豆・青汁
⇒血栓ができやすくなる
・降圧剤(フェロジピン)とグレープフルーツ
⇒めまいや頻脈を起こすことがある
・強心剤(ジゴキシン)とアルコール
⇒頭痛、めまい、嘔吐、下痢、ひどい場合は命を失う
③薬の効きすぎや副作用をいち早く発見できる
利用者さんによっては病院に行く頻度が1カ月に1度だったり、2~3カ月に1度だったりと異なります。
病院で薬が一度処方されると、次の診察まで間隔が空いてしまいます。
その間、薬を服用した影響による効きすぎや副作用が見られたとしても、よほどつらい不調でなければそのまま飲み続けてしまう危険があります。
また副作用とは気づかずに、市販薬で対処しようとするかもしれません。
ケアマネに薬の知識があれば、利用者さんの変化に気づきすぐに主治医に問い合わせ、別の薬を処方してもらうこともできます。
【薬の副作用が疑われる症状の例】
- めまいやふらつき
- 便秘
- うつ
- もの忘れ
- 食欲低下
- 排尿障害
- せん妄
「クスリはリスク」という言葉があるように、薬の作用の裏には副作用や効きすぎ、食べ合わせなど様々な危険が潜んでいます。
薬による体の不調は、利用者さんの日常生活に支障をきたし、QOL(生活や人生の質)を下げるかもしれません。
ケアマネは利用者さんのことをよく知る立場にあり、俯瞰的な視点で様々な可能性を考えられます。
薬の知識とケアマネの伝え方
ケアマネは薬についてどの程度理解すればいいのか、正しい服薬のために利用者さんにどのように伝えたらよいのか、ケアマネという立場でのアプローチ方法がよく分からず、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
薬についてケアマネがおさえておくべきポイントや利用者さんや医療職に伝える際、どのような点に気をつけたらよいのか、詳しく解説します。
ケアマネに必要な薬の知識とは
まず利用者さんが今どんな薬を飲んでいるのかを確認しましょう。
お薬手帳を見たり主治医や薬剤師に問い合わせたりして、薬の名称や量、服用時間などを確認します。
わかりやすい薬のハンドブックを1冊買って時間の合間に読むだけでも知識は増えていきます。
インターネットで調べるのもよいでしょう。
分からないことがあったらそのままにせず、すぐに調べるくせをつけることが大切です。
正しい服薬のためにケアマネができること
利用者さんがきちんと薬の服用ができない場合、どのような方法をとればよいかを考えるのもケアマネの仕事です。
カレンダー形式の薬の収納ケースで管理するのか、家族にお願いして1包ずつ渡してもらうのかなど利用者さんに最適な服用管理を考えます。
訪問看護師による服薬管理やヘルパーに服薬介助を依頼する方法もあります。
利用者さんが自己判断で服用をやめてしまうこともあります。
「薬のことで何か不都合を感じたら、すぐに知らせてくださいね」とあらかじめ伝えておくとよいでしょう。
ケアマネの伝え方で注意すること
ケアマネが利用者さんに薬について自分の考えを述べたり、こうした方が良いと誘導したりすることは絶対にNGです。
「これは薬の副作用だと思います」とか「胃に負担をかける薬なので食後に飲んだ方いいですよ」などという声かけは絶対にしてはいけません。
ケアマネの立場から大きく逸脱した行為であり、薬の服用を間違った方向にミスリードしてしまいます。
主治医や薬剤師との信頼関係も壊すことになりかねません。
たとえば薬の副作用が疑われる場合、主治医や薬剤師へ伝えることは主に以下の3つです。
- 「薬の正式な名前」
- 「薬の服用状況」
- 「利用者さんの症状」
「寝る前に飲んでいる黄色い薬なんですが」といっても正確に伝わりません。
薬の名前で伝えましょう。
薬の服用状況といつごろからどのような症状が出ているのかを正確に伝えればよいのです。
「副作用だと思うのですが」のような私見は挟まないようにしましょう。
「〇〇さんに処方された〇〇のお薬ですが、〇日前から飲み始め、最近〇〇のような症状がでているのですが、このまま飲み続けても大丈夫ですか」このような感じで伝えれば十分です。
ケアマネに求められる役割とは
薬に関してケアマネに求められる役割は、利用者さんと医療職との橋渡しです。
薬には様々な危険があり、今まで普通に飲んでいた薬であっても加齢や病気の進行などで、効き方が変化することがあります。
体の不調を感じていても利用者さんが「お医者さんが出している薬だから間違いない」と信じて疑わないケースもあります。
そんなときはケアマネが間に入り、医療職に情報提供することで適切な薬に替えてもらったり量を減らしてもらうことも可能です。
また医師や薬剤師からも信頼され「できるケアマネ」として一目置かれる存在になるでしょう。