こんにちは!
フリーランス薬剤師のはいたっちです!!
>>詳しいプロフィールがこちら
読者様からご質問をいただきました。
私が担当している高齢者施設で、毎晩3時間ほど叫んでいる患者さんがいるそうです。
不穏状態に効果的な薬はないでしょうか?と施設職員さんに相談されるのですが、いい回答ができずに自己嫌悪です…。
薬剤師としてなにかできることはないでしょうか?
せん妄の中でも、高齢者のせん妄というのは、原因の特定が非常に難しいといわれています。
特定の因果関係もなく発生する高齢者の不穏症状を、せん妄と定義するのか、認知症によるせん妄症状と評価するのかは、専門医でも難解な問題だと思います。
そんな高齢者のせん妄に対して、薬剤師ができることを考えてみたいと思います。
Contents
せん妄(不穏)患者は薬で眠らせればOK?
『高齢者のせん妄に対して薬剤師ができること』をイメージすると、せん妄に効果的な薬を提案するということが頭に浮かびますよね。
抗精神病薬や抗不安薬(ベンゾジアゼピン)を使用して、一時的にせん妄や不穏症状を緩和する方法を提案したくなります。
しかしちょっとまって下さい!!
せん妄の原因がはっきりしていないのに、闇雲に薬剤の追加を提案するというのは危険です。
薬剤性のせん妄の可能性を考慮する
ベンゾジアゼピン系やオピオイドによる薬剤性のせん妄が、せん妄全体の20%以上を締めているという報告も存在するように、せん妄の原因が薬である可能性を見過ごしてはいけません。
せん妄の原因がベンゾジアゼピンによるものであった場合、“寝かせよう”として投与する睡眠薬によって、かえってせん妄症状が増悪する可能性があります。
そのため、“寝かせる”ための薬剤追加提案はおすすめできません。
医療・介護スタッフが疲弊する
とはいえ…
それは現場にいない薬剤師だから言える“綺麗事”であり、現場のスタッフの気持ちになれば、『すぐにでもなんとかしてほしい』というのが本音なはずです。
医師が原因を特定してくれれば解決に向かうのでしょうが、それが難しいからこそ、今の“大変”な状態になっているのでしょう。
そんな時に薬剤師が協力できることは…
せん妄の被疑薬を見つけること、もしくは薬剤性のせん妄を否定することだと思います。
薬剤師なら薬剤性のせん妄を疑うべし!
疾患よりも薬の名前を先に覚える薬剤師だからこそ、薬剤性のせん妄を真っ先に疑うべきです。
医師や看護師が病態から原因を特定している間に、薬剤師は処方薬から原因を特定してみてはどうでしょう?
それでこそチーム医療です。
処方内容を調べて、せん妄の原因となる薬剤を抽出し、その薬剤が原因である可能性を試算します。
無論ピンポイントに原因が分かることは少ないでしょう。
様々な状況が複雑に絡み合って、せん妄という症状が発現しているのですから、薬剤師が処方内容を見ただけで原因が分かるほど簡単なことではありません。
しかし、だからといって何もしなければそこまでです。
薬剤師としてできる『減薬』の処方提案
処方内容からせん妄の原因にアプローチすると、AとBとCという薬剤がせん妄の原因となる可能性が報告されています。
どの薬剤もせん妄発現以前より使用しており、原因であるという確証はありません。
しかし、現在の患者さんの状態として、仮に薬剤Aを中止しても急激に状態が悪化する可能性は低いでしょう。
以上より、被疑薬の可能性が高いとはいえませんが、Aを一旦中止してみるのも悪くないと考えます。
上記のように、被疑薬を中止するリスクと、被疑薬である確率を天秤にかけて、期待値を伝えるということは大切です。
添付文書を見て、『AとBとCに可能性がある』というだけなら、Googleで調べたほうが確実です。
総合的に考えて期待値を算出するというのは薬剤師だからできることです。
以下に『せん妄の原因となる薬剤』を紹介しておきます。
せん妄の原因となる薬剤一覧
参考資料>>当院でのせん妄に対する取り組み
抗不整脈薬 | ジソピラミド・リドカインなど |
---|---|
抗生剤(抗菌薬) | アミノグリコシド・セフェム・VCMなど |
抗コリン作用 | アトロピン・三環系抗うつ薬・抗ヒスタミンなど |
抗けいれん薬 | フェニトイン |
抗ウイルス薬 | アシクロビル・ガンシクロビル |
H2ブロッカー | シメチジン・ファモチジンなど |
β遮断薬 | プロプラノロール・チモロールなど |
NSAIDs | イブプロフェン・インドメタシンなど |
ステロイド | ステロイド |
GABA作動薬 | ベンゾジアゼピン系 |
麻薬性鎮痛薬 | オピオイド |
オピオイドやベンゾジアゼピン、ステロイドが好発です。
H2ブロッカーなどもせん妄を発現することがあります。
必ずH2ブロッカーを処方しなければいけないという状態は限定的です。
PPIへの変更や、場合によっては一時的な中止を検討してみても良いのかもしれません。
せん妄に対して薬剤師ができることは?
せん妄に対して薬剤師ができることは、“寝かせる薬”を提案するだけではありません。
薬剤性のせん妄を疑うということも大切です。
以下に各抗精神病薬の詳細をまとめておきます。
それぞれの特徴を把握しておきましょう。