多くの高齢者は複数の持病があり、薬の数や種類が増える傾向にあります。
薬は色や形状が似ていたり、名前が紛らわしかったり、服用のタイミングが違ったりする場合もあります。
記憶力や判断力が低下している高齢者にとって、薬を管理することは難しい作業です。
また飲み忘れや重複服用のリスクもあるので、周りが気を配り環境を整える必要があるでしょう。
本記事では、高齢者がスムーズに服薬できるよう薬を上手に管理する方法を紹介します。ぜひ参考にしてください。
薬を管理する前におさえるべきポイント
薬を管理する前におさえるべき重要なポイントがあります。
周りが全面的に管理し本人はただ薬を飲むだけという状況にしてしまうとプライドが傷つき、自信もなくしてしまいます。
薬を管理するにあたっては、どこまでができてどのようなところが難しいのかをよく見極め、できるところはなるべく本人に任せるようにしましょう。
薬管理をラクにする方法
薬の管理は少し工夫するだけでずっとラクになります。
市販のアイデア商品を使ったり、便利なサービスを利用したり、色々な方法を試してみましょう。
ここでは高齢者におすすめの薬管理の方法を紹介します。
目指すのは「わかりやすさ」と「シンプルさ」です。
薬管理の定番【お薬カレンダー】
飲み忘れや重複服用を防ぐ様々なアイデア商品がオンラインショップや100均などで販売されています。
●お薬カレンダーのメリット
- サイズが大きく目につきやすい
- ポケットが透明で薬のあるなしが一目でわかる
- 複数の人が服用状況を確認できる
- 目薬や塗り薬なども収納できる
お薬カレンダーは1日から31日までの日にちが表示された1カ月単位のものと、タテに「曜日」ヨコに「服用時間」が書いてある1週間ごとに入れ替えるタイプがあります。
1日に何回も薬を服用する場合は1週間タイプのものがシンプルでおすすめです。
1回ずつ薬を取り出し、薬を飲んでポケットが空になれば、ちょっとした達成感も味わえます。
ポケットが透明なので家族やヘルパーさんも一目で確認できます。
またフリーポケットがついたお薬カレンダーもあり、目薬や塗り薬なども収納可能です。
すべての薬をお薬カレンダーにまとめてしまえば、探すこともなくなり、わかりやすいでしょう。
手間が省ける【薬の一包化】
お薬カレンダーとセットで考えたいのは、薬の一包化です。
薬の一包化とは、同じタイミングで服用する複数の薬を一包ずつパッケージしてくれる薬局の有料サービスです。
希望によって「日付」「服用時間」「名前」なども印字してくれます。
薬の中には一包化できないものもあり、サービスを利用するには薬を処方した医師の指示が必要です。
医師が一包化の必要性を認め、薬局が服薬指導することで保険が適用されます。
<一包化にかかる料金>
料金計算の基準となる一包化の加算点数(1点10円)
42日分以下の場合:7日につき34点
43日分以上の場合:一律で240点
●28日分の薬を一包化した料金(1割負担の場合)
(28日÷7日)× 340円 × 0.1(1割) = 140円(10円未満の金額 端数処理 四捨五入)
●56日分の薬を一包化した料金(1割負担の場合)
2400円 × 0.1(1割) = 240円
※その他の条件で金額が多少変わることもあります。
薬の時間を知らせる【お薬タイマー】
せっかく薬をセットし、目につく場所に置いても薬の時間に気がつかなければ意味がありません。
普段は時計として使え、1日4回薬の時間をセットできます。
日付や温度・湿度が表示されるものもあり、日付や曜日、熱中症の危険なども確認することができます。
ポケットに入るような小型のお薬タイマーもあるので、外出先でも薬を飲み忘れることはありません。
ゴミの日も教えてくれる【お薬ロボット】
「色々な方法を試したけど上手くいかなかった」
「一人暮らしの親がちゃんと薬を飲んでいるか不安」
「毎日電話で薬の確認をするのが大変」
そのような方におすすめなのが、お薬ロボットです。
薬が取り出されるとメールで通知が届くので、安否確認にもなります。
お薬ロボットは薬の管理だけではなく、色々なことを言葉にして知らせてくれます。
「今日はゴミの日です」「今日は病院に行く日です」などつい忘れがちなことも声掛けしてくれるので安心です。
また、気温や人感反応のセンサーがついており、夏の暑い日、高温多湿の部屋に人がいるのを感知すると「お部屋が高温になっています」と熱中症の危険も教えてくれます。
同時に家族にも通知が届きます。
「〇〇さん、おはようございます」「〇〇さん、おかえりなさい」と名前を呼んであいさつしてくれるので、親しみもわき、生活を共にする相棒のような存在になるでしょう。
お薬ロボットはレンタルで月々約1万円の利用料がかかります。
薬の管理、安否確認、生活サポートもしてくれるお薬ロボット。
検討してみる価値はあるのではないでしょうか。
認知症が進んだ場合の薬の管理方法
色々工夫しても認知症が進行し、薬の管理が難しくなることがあります。
薬を飲んだのに「まだ飲んでいない」と言ったり「この薬には毒が入っている」と薬を飲むことをいやがったりするケースです。
この場合は、別のアプローチが必要です。
薬を飲んだことを忘れる場合
薬を飲んだことを忘れて「飲んでない」と主張されると「さっき飲んだでしょ」とつい言ってしまいたくなります。
しかし、記憶にないことなので本人の中では薬を飲んでいないことが正しいのです。
薬を飲むことを拒否する場合
認知症による妄想で「この薬には毒が入っている」「私は健康だから薬を飲む必要がない」と言って薬を飲もうとしないことがあります。
家族が「この薬は血圧を下げる薬ですよ」と言っても聞いてくれません。
そのようなときはちょっとした演技が必要です。
つられて飲んでくれるかもしれません。
また「このお薬は〇〇先生がとてもよいとおすすめしてくれた薬ですよ」など第三者の名前を出すことで飲んでくれることもあります。
家族以外の人が薬の服用をすすめると素直に聞いてくれるケースも多いので、ヘルパーさんや訪問看護師、デイサービスのスタッフなどに頼んでみるのもよいでしょう。
その場合、服用時間や回数にこだわる必要はありません。
医師に事情を説明し、服用回数を減らしてもらうなど適切な対応をお願いしましょう。
薬管理の最適な方法は人それぞれ
薬を管理する目的は、薬を正しく服用してもらうことです。
薬の管理方法において、すべての人に当てはまる最適解はありません。
本人の性格や生活環境、病状や薬の処方内容などによって管理方法は違ってきます。
色々と試して試行錯誤しながら、一番合う方法をみつけてください。