訪問看護ステーションのスタッフは、サービスを提供する際に、訪問看護計画書を作成します。
訪問看護をはじめたばかりの人やはじめて訪問看護計画書を作成する人は、訪問看護計画書を作成する際、どんなことを記載すればいいのか迷うこともあるのではないでしょうか。
訪問看護計画書の作成には、様々なポイントや注意点があります。
この記事では訪問看護計画書とは何か、必要な項目や作成プロセス、ポイントなどを紹介します。
訪問看護計画書とは
訪問看護を行うには、医師が発行する訪問看護指示書が必要となりますが、それだけでは十分ではありません。
訪問看護ステーションは、指示書に基づいて、利用者さんの状態やニーズに応じた看護計画を作成し、実施・評価することが求められます。
看護計画を記録したものが、訪問看護計画書です。
訪問看護計画書には、利用者さんのニーズに応じて訪問看護の目的や内容、方法、期間などを具体的に記載します。
目的
訪問看護計画書の目的は、利用者さんの健康状態や生活状況を把握し、適切な看護・リハビリテーションを提供することです。
利用者さんの自立支援やQOL(生活の質)向上のために何を目標とするか、何が問題となっているのか、具体的に何をするのかなどを明確にします。
定期的に作成・発行することにより、訪問看護サービスの質や効果を評価し、改善する役割を果たします。
また、訪問看護計画書は利用者さんやご家族、医師、ケアマネージャーなどとの連携や情報共有のためにも有用です。
訪問看護のスタッフが行った評価や計画、利用者さんの状況を共有できます。
作成者
訪問看護計画書を作成するのは、訪問看護ステーションの看護師やリハビリスタッフです。
利用者さんを担当するスタッフが作成します。
作成・提出日
訪問看護計画書は、初回訪問時や主治医からの指示が変更された時、利用者さんの状態が変化した時などに作成・提出する必要があります。
一般的に初回の訪問までに訪問看護計画書を作成し、利用者さんの同意を得てサービス提供を開始します。
有効期間
訪問看護計画書は、主治医や利用者さん・ご家族に定期的に提出することが義務付けられています。
具体的な期間は定められていませんが、できれば毎月作成・交付することが望ましいです。
利用者さんの状態やニーズに応じて見直しや修正を行いましょう。
訪問看護計画書の項目
訪問看護計画書に記載する項目は、一般的に以下の通りです。
利用者の基本情報
利用者さんの氏名、生年月日、要介護認定の状況、住所などを記載します。
利用者さんを特定するためやサービス提供時に必要な情報です。
看護・リハビリテーションの目標
利用者さんが抱える課題やニーズに応じて、看護・リハビリテーションの目標を設定します。目標は、主治医の指示書や居宅サービス計画書に基づいて決めます。
また、目標はSMART(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:合意がとれている、Relevant:現実的、Time-bound:期限が設定されている)なものにすることが望ましいです。
例えば「3か月後までに歩行距離を10mから20mに延ばす」などと記載します。
問題点・解決策・評価
利用者さんが達成したい目標に沿って、現在抱えている問題点やその原因を分析します。
例えば「筋力低下・関節拘縮」などです。
そして、問題点を解決するために必要な解決策や具体的な看護・リハビリテーションの内容や方法を記入します。
解決策が効果的かどうかを判断するために評価方法や基準も記載しておくと良いでしょう。
例えば「筋力トレーニングとストレッチングを週2回行う。
歩行距離は毎回測定し、10m以上増えたら成功とする。」などです。
評価には、利用者さんの問題点に対しての状況や解決策の内容についての評価を記載します。
衛生材料等が必要な処置
利用者さんに必要な処置がある場合は、その内容や衛生材料等の種類・量、変更の有無などを記入します。
例えば「褥瘡の処置を行う。衛生材料はガーゼとテープを使用する。処置は週2回行う。褥瘡の状態によって衛生材料や処置方法を変更する可能性がある」などです。
訪問予定の職種
利用者さんに訪問する日と職種を記入します。
利用者さんやご家族に訪問看護サービスのスケジュールを伝えるためや、他の職種との連携を円滑にするために必要です。
例えば「看護師:週に1回月曜日に訪問する、理学療法士:週に2回火曜日・木曜日に訪問する」などです。
備考
利用者さんに関する特別な管理が必要な場合は、方法を記入します。
例えば「認知症があり、時々暴言や暴力をふるうことがある。その場合は落ち着かせるために話しかけたり、音楽をかけたりする。」などです。
また、他のサービスの利用状況などを記入します。
例えば「デイサービスに週3回通っている」などです。
作成者名
計画書の作成担当者と管理者の氏名と職種を記入します。
計画書の責任者や連絡先を明確にするために必要な項目です。
作成年月日
計画書の作成日や修正日を記入します。
計画書の最新性や有効性を確認するために必要です。
事業所名・管理者名
訪問看護ステーションの名称と管理者の氏名を記入します。
訪問看護サービスの提供主体や連絡先が明確になります。
訪問看護計画書の作成プロセス
訪問看護計画書の作成プロセスは、以下のようにまとめられます。
アセスメントを行う
利用者さんの健康状態や生活状況、ニーズや課題、目標や期待などを評価するために、観察や聞き取り、検査などを行います。
ニーズや課題を把握する
利用者さんが抱える問題点やその原因、改善すべき点などを分析し、優先順位をつけます。
目標や期待を明確にする
利用者さんが達成したいことや望むことを明確にし、共通理解を得ます。
訪問看護計画書に必要事項を記入する
利用者さんの目標に沿って、訪問看護計画書の各項目を具体的に記入します。
訪問看護の目的や内容、期間、担当者などを記入しましょう。
訪問看護計画書を配布し、同意を得る
完成した訪問看護計画書は、複数枚印刷し、利用者さん、医師、ケアマネージャーなどに配布します。
配布の際に、計画について説明し、同意を得ましょう。
訪問看護計画書の作成のポイント・注意点
訪問看護計画書を作成する際には、以下のポイントや注意点を参考にしてください。
利用者さんやご家族の意見や希望を尊重して作成する
訪問看護計画書を作成する際には、利用者さんやご家族のニーズや課題を正確に把握し、優先順位をつける必要があります。
訪問するスタッフの専門的な視点は勿論必要ですが、サービスを提供するのは利用者さんやご家族の目標を達成するためです。
利用者さんやご家族の意見・希望を尊重し、情報収集を行いながら希望に添える計画を作成しましょう。
目標はSMART原則に基づいて設定する
目標は、前述したSMART原則に基づいて設定しましょう。
SMARTとは、Specific、Measurable、Achievable、Relevant、Time-boundの頭文字をとったものです。
Specificは、具体的を意味します。
誰にでもわかりやすい、具体的な内容を記入しましょう。
Measurableは、測定可能という意味です。客観的データがとれる測定可能な目標にすることで、目標がどの程度達成されたかをわかりやすくします。
Achievableは、合意がとれていることを意味します。利用者さんやご家族、医師、ケアマネージャーから同意を得て、計画に沿ったサービスを提供しましょう。
Relevantは、現実的という意味です。
どんなに立派な目標を設定しても、実現されなくては意味がありません。
利用者さんやご家族の希望や現状を把握し、実現可能な範囲で目標を設定する必要があります。
Time-boundは期限が設定されていることを意味します。
いつまでに目標を実現するかを記入しましょう。
概ね、短期目標は3ヶ月以内、長期目標は1年以内に達成できるものが望ましいです。
内容や期間は目標に沿って具体的かつ実行可能なものにする
内容は、目標に沿って具体的かつ実行可能なものにします。
利用者さんの現状を把握し、無理のない範囲でできることを設定しましょう。
期間は、目標達成までに必要な時間を見積もり、適宜見直しをします。
短期目標をスモールステップで設定しておくことで、直近で実現するべき目標が明確になり、長期目標を実現しやすくなるでしょう。
効果を測定する方法や指標を明確にする
作成した計画が妥当かを判断するためには、客観的な効果測定が必要です。
利用者さんの満足感が得られることは勿論ですが、客観的なデータがあれば医師やケアマネージャーにも効果が伝わりやすいでしょう。
効果を測定する方法や指標を、訪問看護計画書に記入しておくと毎回同様の方法で測定できます。
訪問看護計画書は常に最新の情報へ更新する
訪問看護計画書は1度作成したら完了ではありません。
適宜見直し、最新のものへ更新する必要があります。
利用者さんの状態変化や解決策の効果に合わせて、適宜修正しましょう。
内容やポイントを押さえて、訪問看護計画書を作成しよう
訪問看護計画書の作成は、訪問看護ステーションがサービスを提供する際に必要な書類です。
利用者さんのQOL(生活の質)向上や社会的な自立の援助を行うために、妥当な計画をたてることに役立ちます。