訪問看護に興味はあっても「訪問看護はきつい」「訪問看護は離職率が高い」という噂を聞いて、転職をためらう人もいるのではないでしょうか。
しかし何がきついのか、なぜ離職率が高いのか、本質を理解せず何となく敬遠してしまうのは、仕事選択の幅を狭めているかもしれません。
訪問看護に転職⇒仕事がきつい⇒早期離職
そんな図式がすべての看護師に当てはまるわけではありません。
「訪問看護こそ私の天職」と思って生き生きと仕事をしている人も大勢います。
訪問看護がきついという理由がわかれば、それに対して自分がどれだけ折り合いをつけられるか考えることができます。
本記事では、訪問看護はなぜ「きつい」といわれてしまうのか、その理由について深堀りして考えます。
病院との違いや訪問看護に転職する際のポイントについても解説します。
ぜひ参考にしてください。
「訪問看護がきつい」病院との違い
訪問看護師は病院で何年か経験を積んだ後、訪問看護に転職する人がほとんどです。
同じ看護師の仕事でも訪問看護と病院では自分の立ち位置や仕事のやり方がまるで違います。
訪問看護の世界に入った後で病院とのギャップに気づく人も多く「病院での経験が通用しない」「病院のほうが自分に合っていた」と早期離職してしまうケースが多いのです。
訪問看護への転職を考える前に、まず病院との違いを知る必要があります。
メインで働く
病院の中でメインとなる存在はドクターであり、看護師はドクターの指示の下で働きます。
いいドクターがいる病院は人気が高く、病院の評価は主にドクターによって決まります。
看護師が病院の評価に影響することはドクターほど大きくありません。
一方、訪問看護の場合、看護師が一人で利用者宅に出向き看護業務を行います。
看護師の働きぶりがそのままステーションの評価につながります。
看護業務の他に、利用者さんとのコミュニケーション力や礼儀なども見られます。
たとえば訪問時間に遅れたのに何も連絡がなかったとか、薬剤をこぼしたまま帰ってしまったとか、病院では目立たなかった人間性が訪問看護ではあらわになりやすいのです。
利用者さんから事業所へ「看護師を交代させてほしい」と連絡が入ることもあり、担当看護師は精神的なダメージを受けることがあります。
体力を消耗する
当たり前ですが訪問看護には移動が伴います。
病院だと移動の範囲はナースステーションと患者さんの部屋くらいですが、訪問看護は1日に5〜7件利用者さんの家を訪問します。
車での移動もありますが、都市部の場合電動自転車を使います。
雨の日も風の日も気温が40度の日も氷点下の日も自転車をこいで訪問に向かいます。
訪問場所が離れていると移動だけで体力を消耗します。
また病院は常に空調が効いており、快適な気温に保たれていますが、訪問看護の場合、暑い寒いは利用者さんの住居によって違います。
中にはエアコンがない家もあり、汗だくの中で看護業務をすることになります。
気温の変動は体力を奪われ体調にも影響を及ぼします。
教育体制が整っていない
大きな病院の場合プリセプターと呼ばれる人がいて、新人に対して一定期間マンツーマンで仕事内容を中心に指導してくれます。
プリセプターがいない病院でもナースステーションには看護師が常駐しているので、分からないことはその場ですぐに確認することができます。
一方、訪問看護ステーションは相対的に規模が小さく、全事業所のうち約半数が5人未満のスタッフで経営しています。
人員に余裕がなければ新人をしっかり教育することはできません。
1回先輩と一緒に訪問し一通り手順を覚えたら、次から一人で訪問するケースもあります。
一人で利用者さんと向き合う中で自分の対応に不安を覚えたり、自信を持てなくなったりすることがあります。
誰かの意見を仰ぎたいと思っても周りの看護師がいつも忙しそうだと気軽に相談することもできません。
相談したいときに相談ができない環境では不安や孤独感が募り「訪問看護はきつい」と感じてしまいます。
「訪問看護がきつい」イメージとのギャップ
訪問看護に対してのんびりしたイメージを持って転職した場合、実際働いてみて「思っていたのと違う」「こんなはずじゃなかった」と感じることがあります。
期待が大きい分、裏切られたような気持ちになり「訪問看護はきつい」と感じてしまいます。
ではどのようなイメージギャップがあるかくわしく見ていきましょう。
夜勤はないけどオンコールがある
確かに訪問看護に夜勤はありませんが、24時間対応のオンコール体制をとっているステーションがほとんどです。
当番制でオンコール携帯を持ち、利用者さんやご家族からかかってくる電話に対応します。
電話のみの対応で終わることが多いですが、緊急性が高いと判断したら実際に訪問して様子を見に行きます。
オンコールは待機時間を自由に使えるというメリットもありますが、いつ電話が鳴るともわからないので、精神的に落ち着かず夜もよく眠れないという人もいます。
連絡調整などで残業することが多い
訪問が終わったらすぐ帰れると思っていたのに、ケアマネや病院との連絡調整があり、毎日1時間くらい残業しているという人もいます。
ケアマネによっては、昼間の訪問中は担当看護師が不在のため連絡を控え、訪問が終わった頃を見計らって電話を事業所にかけることがあります。
また確実に担当看護師が事務所にいる昼休みに電話をかけてくることも多く、落ち着いて昼ごはんを食べられない日も。
また訪問看護師は、毎月利用者さんの数だけ訪問看護報告書と訪問看護計画書を作成する必要があります。
月末月初は書類作成に追われ残業時間が多くなります。
訪問看護師は給料が高い
10年ほど前のデータでは、訪問看護師の平均給与は282,337円で病棟看護師より4万円ほど低い給与水準となっています。
現在は訪問看護師の需要が拡大し、かなりの売り手市場にあるため、病棟看護師との差はもっと縮まっているかもしれません。
訪問看護師は土日祝が休みの所もあり夜勤がないという条件下での給与比較なので給与水準は高いといえます。
しかし仕事の忙しさ、責任の重さに対し給与が見合っていないと感じている訪問看護師も少なくありません。
福利厚生が手厚かった病院から転職した人は、今までもらえていた手当がなくなり、余計に待遇面で不満に感じる傾向があります。
訪問看護に転職する際のポイント
訪問看護は大変なことも多いですが、利用者さん一人ひとりにしっかり寄り添うことができ、直接感謝されるやりがいのある仕事です。
訪問看護は比較的休みが多く、年休120日以上というステーションも少なくありません。
休みが学校と同じなので、お子さんのいる看護師は子どもと一緒に過ごす時間も増えます。
最近ではステーション内の教育制度を整え、看護師が相談しやすい環境づくりに力を入れている法人もあります。
電子カルテの導入やiPadの使用などペーパーレス化が進んでいれば、ちょっとしたすきま時間に訪問看護報告書や訪問看護計画書を作成でき残業を減らすことができます。
訪問看護で働くなら職場選びが大切
働きやすさを手に入れるには職場選びが重要です。
訪問看護に少しでも興味があるなら、訪問看護師として働くという選択を考えてみてはいかがでしょうか。