精神科の訪問看護師は精神疾患を抱えた自宅に住まれている利用者さんを支援する仕事です。
高齢化社会が進み、「病院から在宅へ復帰したい」という声も多くなり、精神科を含めた訪問看護医療は病院を退院された利用者さんやご家族さまからのニーズが高まりました。
利用者さんや家族に寄り添い、住み慣れた場所で自分らしく生活をするために、医療的な支援を提供するのは訪問看護師の役割です。
この記事では、精神科の訪問看護師のやりがいや仕事内容について詳しく解説をしますので、興味がある方は参考にしてください。
精神疾患の患者数は年々増加傾向にある
日本の精神疾患による病院受診をする患者さんの数は、年々増加していて2017年には400万人を超えました。
一方、精神疾患による入院数は減少しています。
病院ではなく、住み慣れた家で過ごしながら療養する地域包括ケアシステムの政策が進み、精神疾患の患者さんの平均在院日数は短縮しています。
精神疾患を抱えた患者さんの増加に対して、精神疾患における治療の場所は医療機関から在宅治療へ移行しているため、訪問看護師は活躍が期待される職業のひとつです。
精神科の訪問看護師の仕事内容
訪問看護師は訪問看護ステーションに所属して、医師の指示に基づき利用者さんの自宅に伺います。
1回の訪問時間は30分から90分以内と定められており、バイタルや服薬管理を行いながら、利用者さんと話しながら問診をして様子を把握します。
利用者さんが問題なく日常生活を過ごせるように、地域の保健師や相談員、ケアマネージャーとも上手く連携して利用者さんの自立を促す役割も担っています。
支援が必要な利用者さんが抱えている病気は統合失調症やうつ病などが挙げられますが、医療処置が必要なケースは少ない傾向にあります。
利用者さんの年齢層は比較的若い年齢層が多くを占め、男女比は同じくらいの割合になっています。
利用者さんが社会復帰を目指すことや、病状の悪化を予防するために精神科の訪問看護師を利用するなど、ケースは様々です。
利用者さんとの触れ合いの中で困っていることを探り、解決に向けて一緒に取り組む姿勢も必要です。
精神科訪問看護師で働くメリットの一つとして、夜勤がなく定時で帰れることが挙げられます。
病院での勤務では夜勤や残業がありプライベートの時間がしっかり確保できないことで離職される方が多くいますが、訪問看護師はよほどのことがない限り定時で帰ることができます。
職場によってオンコール対応や直行・直帰ができるかなどのルールが異なるので、転職を考えている人は注意が必要です。
精神科看護師の魅力
精神科看護師は今後、需要が高まっていく職業の一つです。
しかし、ほとんどの方が病院勤務からの転職になるかと思われますので、精神科訪問看護師として働くメリットを3つ紹介します。
興味がある方は参考にしてください。
- 専門性が高い看護師になれる
- 一人の人と向き合うことができる
- プライベートが充実する
詳しく解説していきます。
①専門性が高い看護師になれる
在宅医療はニーズが高まり続けているため、精神科に特化した経験は貴重なものになります。
薬物治療について詳しくなることや、精神科ならではの医療ケアも学ぶことができるためキャリアアップにも繋がります。
病院での業務では現場に看護師が何人もいますが、訪問看護師は一人で対応することが多く自己判断力が求められますので責任感を持つことが大切です。
②一人の人と向き合うことができる
病院の勤務ではやらなければいけないことが多く発生して時間に追われることがほとんどになりますが、精神科の訪問看護師は一人の利用者さんのために時間をつくれるのが特徴です。
利用者さんは話をじっくりと聞いてほしい時があるので、そんな時はゆっくりとコミュニケーションを取ると安心してくれることでしょう。
外出することが許可されていれば、一緒に公園に散歩へ出かけるといったサービスを行うことも可能です。
③プライベートが充実する
精神科訪問看護師は、基本的には夜勤がなく定時で帰宅できる事業所がほとんどです。
「病院勤務と比べて、身体的にも精神的にも楽になった」という声も多く、週末に休みを作ることや休日出勤の代休も確保しやすいステーションも多いので、プライベートを充実させたいと思っている方にはピッタリかもしれません。
以上の3つのポイントが精神科訪問看護師のメリットになります。
しかし、いきなり訪問看護師になることは難しいです。
まずは病院勤務を経て医療系経験を積み、訪問看護の道に進むことをオススメします。
精神科訪問看護師に向いている人の特徴
訪問看護は医療処置を利用者さんの自宅で行うことがあり、病院のようなホームで業務ができる安心感がないため「転職したいけど不安」と思われている方も多くいます。
向き、不向きはあるかもしれませんが難しい技術を要求されるわけではないので、訪問看護師はやる気次第で挑戦ができます。
以下では精神科訪問看護師に向いている人の特徴を紹介します。
- 感情的にならない人
- 医療技術が少し苦手な人
- 報連相ができる人
詳しく解説していきます。
①感情的にならない人
利用者さんの中には、幻聴や幻覚が悪化して暴言を吐かれる方もいます。
看護師の対応や言葉で利用者さんの精神症状が悪化するリスクもあるため、臨機応変に対応をしなければなりません。
中には「なんでこんな言葉を投げつけられなければいけないんだ」と感情的になってしまう方もいますが、感情的になってしまえば火に油を注ぎ、収集がつかなくなります。
看護をする立場の者は暴言に至る背景を考えていく必要があり、感情的になりやすい方は不向きといえます。
②医療技術が少し苦手な人
精神科訪問看護ではコミュニケーションが主体となるため、難しい医療技術を求められることは多くはないです。
しかし、抗精神薬の種類が多くあるため薬の作用と副作用を理解しておく必要があります。
高齢の利用者さんは脱水や排便のコントロールを観察する必要がありますが、点滴や酸素投与される利用者さんは少ないため、医療技術に自信がもてないという方は精神科訪問看護師が向いているかもしれません。
③報連相ができる人
どの仕事においても重要なことですが、基本的に訪問看護師は一人で行動をしますので日頃からの情報は共有しておかなければいけません。
病院での勤務は困ったことがあれば先輩や医師に確認することができますが、訪問看護師は一人で決まった件数を回らなければいけません。
時間がないからと言って、利用者さんを後回しにして放っておくことで利用者さんの症状が悪化して入院してしまうケースも珍しくないです。
そうならないためにも日頃から情報を共有しておく必要があります。
以上が精神科訪問看護師に向いている人の特徴になります。
もちろん向いていないからといって、なれないというわけではありません。
利用者さんを想う気持ちがあれば、次第に訪問看護師に向いた人になれます。
真摯に人と向き合う気持ちが何よりも大切だといえます。
精神科訪問看護師の今後
精神疾患の病気は年々上昇の一途を辿り、訪問看護師の需要は高まっていくことが想定されます。
2022年以降も訪問看護の需要は高まり、求人数も多く出ていることから将来性に関しても心配はないと言えるでしょう。
しかし、心に携わる職業は思っている以上に大変です。
利用者さんの望んでいることを察知する能力やコミュニケーション能力など必要なスキルは後でも身につけることが出来るので、今は不安に感じていても大丈夫です。
大切なのは自分がどんな体系で利用者さんと関わりたいかですので、訪問看護師を目指される方はじっくり働き方や関わり方について考えてみましょう。