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フリーランス薬剤師のはいたっちです!!
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白金製剤のオキサリプラチン(エルプラット)は、大腸癌や胃癌など、様々ながん種に対するキードラッグです。FOLFOX療法やXELOX療法など、非常に多くの患者さんに使用されている薬剤です。
オキサリプラチンの代表的な副作用にはしびれ(末梢神経障害)があり、この副作用があまりにも有名なため、過敏症が起こりやすいという事実があまり知られていません。
しかし過敏所は、時に致死的ともなり得る、非常にやっかいな副作用です。
本記事では、エルプラットの過敏症に対する対策をまとめていきます。
そもそも、過敏症の既往は、オキサリプラチンの禁忌事項です。
本記事はオキサリプラチンの使用を勧めるものではありません。
治療のリスクとベネフィットをしっかりと考慮しましょう。
オキサリプランチン(エルプラット)のアレルギー反応?
白金製剤であるオキサリプラチン(エルプラット)は、大腸がんや胃がんなどのキードラッグであり、『なくてはならない』薬の1つです。
オキサリプラチンの特徴的な副作用には、しびれ(末梢神経障害)があます。
この副作用が非常に有名なため、見落とされがちなのですが、実は…オキサリプラチンは『過敏症』にも注意が必要です。
アレルギー反応や過敏症というのは、すべての薬剤で起こり得る反応のひとつですが、オキサリプラチンをはじめとする白金製剤は、過敏症が起こりやすいことが知られています。
また、オキサリプラチンの過敏症は6~8コース目に起こりやすいという報告もあります。
『1コース目に過敏症が発現しなかったから安心』と油断せず、しっかりと経過観察を行う事が重要です。
では、そんなオキサリプラチンの過敏症予防は、どのようにしたらよいのでしょうか?
- ステロイド?
- レスタミン?
- ファモチジン?
具体的な論文を紹介しながら、オキサリプラチンの過敏症対策を考えてみたいと思います。
ストップ&ゴーはアレルギーが起こりやすい?
オキサリプラチンの“しびれ”を予防するために、ストップ&ゴー(≫詳しくはこちら)という対策が行われることがあります。
STOP&GOとは、エルプラット入りのFOLFOXを行った後に、エルプラットを抜いたFOLFOX(5FU+LV)を行い、またエルプラット入りのFOLFOXに戻すという方法です。
この方法によって、治療効果は変わらずに、しびれを抑制できるということが明らかとなっています。
そのため、多くの施設でストップ&ゴーが行われているのですが、ここで注意すべきことがあります。
オキサリプラチンの再開時には過敏症に注意
参考文献によると、オキサリプラチンがフリーの期間(オキサリプラチンを中断した期間)がある事によって、過敏症の発症リスクが上がると報告されています。
ストップ&ゴー(約9か月のオキサリプラチンフリー期間)を実施された患者では、継続してFOLFOXを施行された患者より、過敏症の発症率が高かったというデータです。
また、この研究では、多くの患者が、オキサリプラチン再開後2-3コース目で過敏症が発症しています。
FOLFOXの前投薬にレスタミンは必要か?
では、このようなオキサリプラチンの過敏症を防ぐには、『どのような前投薬』をするのが良いのでしょうか?
この疑問を解決すべく、ひとつ論文を紹介します。
内容の詳細は参考文献をご確認ください。
参考文献≫Management of allergic reactions to oxaliplatin in colorectal cancer patients.
ファモチジン+デキサメタゾン+ジフェンヒドラミン
こちらの報告では、2段階の前投薬が設定されています。
全ての患者にステップ1の前投薬を行い、それでもグレード1/2の過敏症が発現した場合には、ステップ2の前投薬に移行するというストラテジーです。
グレード3以上の過敏症が発現した場合は投与中止です。
また、ステップ2の前投薬を施行後、アレルギー反応が起こった場合にも投与中止です。
ステップ1
- 40㎎ファモチジン内服
- 8㎎デキサメタゾン注射
- 4サイクル目以降は50mgジフェンヒドラミン内服を追加
ステップ2
- 40㎎ファモチジン内服
- 20㎎デキサメタゾン注射
- 50mgジフェンヒドラミン内服
- オキサリプラチン投与時間延長(2→4時間)
過敏症に注意すべきはオキサリプラチンだけではない
以上がオキサリプラチンの過敏症対策です。
最も重要なことは、過敏症はどの薬剤でも起こり得るということです。
- エルプラットだけ過敏症に注意すればよい
- ストップ&ゴーの症例だけ注意すればよい
- 前投薬をしているから安心
こういう“勘違い”が最も危険です。
『過敏症が起こってもすぐに対応できる体制の構築』
これが最も大切です
オキサリプラチン(エルプラット)のDI情報
オキサリプラチンの基本情報を紹介します。
参考書籍≫がん専門・認定薬剤師のための がん必須ポイント 第4版
エルプラットの適応がん種
- 治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌
- 結腸癌における術後補助化学療法
- 治癒切除不能な膵癌
- 胃癌
- 小腸癌
エルプラットはしびれに注意!
オキサリプラチンは特に『しびれ』に注意が必要です。
参考書籍:がん必須ポイント
がん専門・認定薬剤師を目指す方や、がん化学療法認定看護師を目指す方におすすめの書籍が、『がん専門・認定薬剤師のための がん必須ポイント 第4版』です。
がん専門薬剤師が10名近く在籍するという、薬剤師界隈では有名な、岐阜県の大垣市民病院が作成しています。
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