訪問看護師の現場では、薬の管理を任されるケースが多くあります。
疾患や認知能力、身体の機能、療養環境により薬の処方は異なります。
在宅の療養では症状を抑えるために、服薬の時間を守ることが大切です。
訪問看護師は今後、高齢社会を迎えるにあたって需要が高まっていく見通しになっているので管理方法の向上は必須になります。
ぜひ、現場で役に立つ内容になっていますので参考にしてください。
訪問看護の薬の管理
服薬管理を看護師が行うには、ケアマネージャーからの依頼を受けた時に行います。
ケアマネージャーからの依頼を受ける時は、大きく3つのポイントがあります。
- 自己管理が困難な場合
- 体調管理が必要な場合
- 認知能力や身体能力の低下により自己管理に支援が必要な場合
「利用者さんが自分でできているか」を確認するには、介護士の介入でも行うことができますが、内服薬のセッティングや体調の変化の観察を行うには看護師が必要です。
訪問看護の薬の管理で重要なことは?
訪問看護の業務で多い薬の管理ですが、介入方法によっては利用者さんに不快な思いを抱かせてしまい、今後の信頼関係に影響することがあります。
適切な看護介入をするために、薬の管理で重要なことを紹介します。
- 時間に余裕をもって訪問する
- 大切な薬を管理しているという気持ちをもつ
- 主治医と服薬状況を共有する
それぞれ詳しく紹介します。
➀時間に余裕をもって訪問する
利用者さん自身の管理が難しいとされている以上、初回訪問の際には多くの残薬があることが想定されます。
初回訪問の際には時間がかかる場合があるので、前後のスケジュールに余裕を持たせて、十分な時間を確保できるように調整できるようにしましょう。
➁大切な薬を管理しているという気持ちをもつ
また、訪問看護の利用には賛同しているものの、今まで自身で管理をしていたことを否定されている気持ちになる方もいらっしゃいます。
薬は治療に必要不可欠なものになり、利用者さんの大切な私物の一つです。
看護師は大切なものを管理させていただいているということを忘れてはいけません。
管理する薬は丁寧に取り扱い、相手の気持ちに寄り添えるようにする配慮も時には必要です。
➂主治医と服薬状況を共有する
処方している主治医とも現状の服薬状況を共有することで、今後の療養方法にも柔軟に対応することが可能です。
かかりつけの主治医は定期的に服薬をしていることを想定して診察をしています。
在宅での状況を把握するには、診察時の聴取では情報が少ない場合があるため、訪問看護師が自宅での状況や状態を伝えることでも、今後の治療方針を決める判断材料になります。
訪問看護の服薬管理方法について
薬の管理方法は思っている以上に難しく、苦労をされている看護師が多いです。
この記事では現場で行う工夫について4つ紹介していきますので、現場にも役立ててみてください。
- 利用者さんと共に服薬の管理をする
- 利用者さん自身に合った服薬セッティングで過剰内服を防ぐ
- 服薬状況に応じて主治医に処方調整を依頼する
- 過剰摂取にならないように整理する
上記について解説をしていきます。
①利用者さんと共に服薬の管理をする
ケアマネージャーからの服薬管理の依頼で自宅の訪問が始まると、「自分でできなくなった」と自信喪失される方もいらっしゃいます。
例えば薬の袋が連なっているものを切り取る作業や、いつ飲むものなのかを記入する作業などがあります。
一緒に作業をすることは、手指のリハビリや共同作業により利用者さんの自尊心も守ることができます。
訪問看護はただ任された仕事を行うだけでなく、相手に寄り添うことも大切です。
➁利用者さん自身に合った薬のセッティングで過剰内服を防ぐ
在宅でのセッテイング方法にはいくつかの方法があります。
- 服薬日をカレンダーに書いておく
- 1週間分の薬をケースに入れて保管する
- 1日分の薬をケースに保管する
- 1日分の薬を卓上の目立つところに置いておく
壁掛カレンダーや、卓上カレンダーに記しておくことで日常的な習慣にすることができます。
薬ケースはコンパクトに収納でき、持ち運びがしやすい反面、高齢や疾患を持たれている利用者さんにとっては取り出しにくいものもあります。
認知症を持たれている方など、誰が触っても扱えるタイプが望ましいです。
管理で注意しなければならないのが過剰摂取で、注意が必要なご家庭や利用者さんであれば、より慎重に支援を行うことが必要です。
③服薬状況に応じて主治医に処方調整を依頼する
自己管理が難しくなる原因の一つに、薬の種類の把握と飲むタイミングなどが挙げられます。
特に高齢になると多くの疾患を抱えて、薬の量が増えていくことが要因の一つです。
主治医が処方されている薬を飲めていないことを把握せずに診察を受けると、症状の改善が見られないとの見解になり、不必要な追加処方されることにも繋がります。
必要であれば、薬をシートでなく一包化するなどの対応により、飲み忘れのリスクを減らすことも可能です。
特に飲む日付を書くことも効果的で、後になって確認をすることもできるため、いつ飲み忘れたのかを1日の終わりに確認できます。
④過剰摂取にならないように整理する
訪問看護の開始時には、多くの残薬を持っていることがあります。
服薬する種類が多い利用者さんは、持っている薬が多くなることがあるため、訪問看護の介入時に、残薬の整理と必要なものの整理整頓が必須になります。
整理には輪ゴムやジップロック、付箋などを用いて1週間分の服薬にまとめたりすると管理がしやすいのでオススメです。
古い袋は破れていたり、汚れているものがあれば利用者さんとケアマネージャーの同意を得たのちに処分することも必要です。
使用できる残薬がある場合は、かかりつけの主治医や薬剤師に相談して残薬から使えるように調整もできます。
自己判断で処理をすると後になって問題になるかもしれないので、必ず利用者さんとケアマネージャーに確認しましょう。
訪問看護師による薬の管理は利用者さんを尊重しないといけない
高齢化が進み続ける一方、日本では訪問看護師の需要はどんどん高まっています。
薬管理の支援を行うことにより、安心して日常生活を送ることができます。
しかし、ただただ管理をするだけでは利用者さんにとって寄り添った支援にはなり得ません。
人同士の付き合い方には相手にも敬意の念を持ち続けなければ、うまく付き合うことができないため、仕事と捉えるよりも自身の家族や大切な人だと思うようにすることは結果的に悪いことに陥りにくいです。
今回、紹介させていただいた工夫以外にも個々それぞれに合ったやり方も存在するため支援をする相手の言葉や状況に耳を傾け、利用者さんにとって良い形を見つけることが大切です。