腎性貧血の治療薬である『エリスロポエチン製剤(ESA)』といえば、ネスプやミルセラなどの注射薬しか存在しませんでした。
しかし、ESA製剤の高用量投与による心血管イベントリスクや、注射薬であるが故の煩雑さなど、様々な問題がありました。
そのため、医療現場では経口剤の開発が望まれており、製薬メーカーは必死に腎性貧血治療薬を創薬しようと励みました。
その結果!ついに世界初の新薬が登場しました!
世界初のHIF-PH阻害薬『エベレンゾ』に関してご紹介します。
エベレンゾの3つの特徴とは?
- 世界初のHIF-PH阻害薬
- HIF-αの分解を抑制しHIF経路を活性化
- 確かなEPO産生増加作用
エベレンゾの3つの特徴に関して、以下に詳しく紹介していきます。
世界初のHIF-PH阻害薬
エベレンゾは低酸素誘導因子(HIF)代謝酵素(PH)を阻害することで、赤血球の造血を促す腎性貧血治療薬です。
HIF-PHを阻害することでエリスロポエチン(EPO)の産生が増加します。
その結果、赤血球の造血につながり、腎性貧血の治療が出来るというわけです。
HIF-PHとは?
HIF-PHとは低酸素誘導因子‐プロリン水酸化酵素です。
英語では(Hypoxia Inducible Factor-Prolyl Hydroxylase)であり、それぞれの頭文字を取ってHIF-PHです。
HIF-αの分解を抑制しHIF経路を活性化
エベレンゾに関して、もう少し詳細な作用機序を紹介します。
生体内にはHIF-αとよばれる転写因子が存在しており、これが活性化することで、EPOの増加や、鉄利用(鉄吸収や鉄輸送)の促進につながります。
つまり、HIF‐αがHIF経路を活性化させる重要な因子です。
このHIF-αの分解を抑制し、HIF経路を活性化させるのがエベレンゾです。
結果的に内因性EPO産生増加や鉄利用の亢進が起こり、赤血球の産生が促進されます。
確かなHb値(ヘモグロビン)改善作用
エベレンゾの臨床試験では、血液透析を施行中の患者を対象に、ダルベポエチンアルファ(ネスプ)を対照薬として切り替えの有効性を検証しています。
ベースラインからの平均Hb値は、エベレンゾ群とダルベポエチンアルファ群で差はなく、比劣性が確認されました。
つまり、経口腎性貧血治療薬としての臨床効果が確認されたということです。
Hb値改善の他にも、鉄利用の亢進が確認されています。
透析患者に投与しやすい週3回内服という用法設定も良いですね!
エベレンゾ(ロキサデュスタット)の基本
以下、簡単にエベレンゾ(ロキサデュスタット)のDI情報をまとめておきます。
効能効果
透析施行中の腎性貧血
血液透析患者ではヘモグロビン濃度で10g/dL未満、腹膜透析患者ではヘモグロビン濃度で11g/dL未満が投与開始の目安とされています。
用法用量
赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合
通常、成人には、ロキサデュスタットとして1回50mgを開始用量とし、週3回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1回3.0mg/kgを超えないこととする。
赤血球造血刺激因子製剤から切り替える場合
通常、成人には、ロキサデュスタットとして1回70mg又は100mgを開始用量とし、週3回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1回3.0mg/kgを超えないこととする。
薬価
2020年2月現在
- エベレンゾ錠20mg:387.4
- エベレンゾ錠50mg:819.2
- エベレンゾ錠100mg:1443.5
注意点など
リン酸結合ポリマー・多価陽イオン含有経口製剤(カルシウム・鉄・マグネシウムなど)との併用で作用減弱が報告されています。
当該薬が併用されている場合は、『前後1時間以上の間隔をあけて』エベレンゾを服用する必要があります。
下剤のカマや透析患者のカルシウムなど、注意すべき併用薬は多いです。