「寝たきりの親をはじめて介護するから、陰部洗浄の方法がわからない」と悩んでいませんか?
はじめて行うことは、右も左もわからない状態のため、不安や心配が尽きませんよね。
そこで本記事では、陰部洗浄の手順を知りたい介護初心者の方に向けて、わかりやすく手順を解説していきます。
陰部洗浄を行うにあたっての留意点や行う頻度、必要なものもあわせて紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
陰部洗浄は健康にも関わる重要な作業
毎日続く寝たきり状態の介護は、介護者の負担も大きく、欠かさずに入浴や体を拭く介護をするのは難しい時もあります。
また、要介護者の体調によっても入浴が難しいこともあるでしょう。
そのような時に行うのが陰部洗浄です。
陰部洗浄は、尿路感染症やオムツかぶれなどを引き起こさないために必要です。
毎日体全身を拭いたり入浴できたりする場合は、清潔に保てるため特別陰部洗浄を行う必要はありません。
陰部洗浄に必要なもの
陰部洗浄に必要なものは以下の9つです。
- 39度程度のお湯が入ったシャワーボトル
- 石けん
- ガーゼ
- オムツ(必要な方のみ)
- タオル
- 使い捨ての手袋
- バスタオル
- 綿毛布
- 防水シーツ
- ビニールエプロン
オムツと書かれている項目は、陰部洗浄時の水の処理に使い、便器まで移動できない場合に必要です。
詳しい使い方については、後ほど紹介します。
基本的な陰部洗浄の手順
基本的な陰部洗浄の手順を紹介します。
- 環境を整える
- 陰部や臀部を洗う
- 洗い流す
- タオルで水気を拭き取る
- オムツを履かせて終了
手順1.環境を整える
ズボンや下着を脱ぐため、要介護者が寒く感じる場合があります。
体を冷やさないよう、まずは室温を調整しましょう。
ベッドで行う場合は、ベッドが濡れないようお尻の下に防水シーツを敷きます。
ベッドの上かつオムツ交換の途中で行うのであれば、使用済みのオムツを使うことも可能です。
移動できるようであれば、便器で洗浄を行っても問題ありません。
介護者は、使い捨ての手袋とエプロンを着用してください。
手順2.陰部や臀部を洗う
ズボンやオムツを脱がせたら、膝を立て、軽く足を開けさせます。
ガーゼを濡らして石鹸で泡立てたら、陰部や臀部を洗っていきましょう。
洗う際は、尿路感染症を起こさないよう、洗う箇所を変えるたびにガーゼの面も変えていきます。
肛門を洗った場合は、大腸菌などがガーゼに付着するため、肛門を洗ったあとはガーゼを捨て、新しいガーゼを使わなければなりません。
ですので、肛門を洗うのは最後に回すことをおすすめします。
手順3.洗い流す
陰部や臀部を洗い終えたら、シャワーボトルで泡を洗い流していきます。
陰部は刺激に弱い上に高齢者は肌が弱くなるため、洗い流すお湯の温度は、39℃程度のぬるめにしておくのがポイントです。
お湯で洗い流す前にお尻拭きで泡を軽く拭き取っておくと、洗い流しが楽になります。
手順4.タオルで水気を拭き取る
しっかり洗い流し終えたら、乾いたタオルで優しく水気を拭き取っていきます。
拭き取る際は摩擦を起こさないよう、ポンポンと押さえるようにして水気をとっていってください。
水気を拭き取ったあとは、保湿ケアも行いましょう。
手順5.オムツを履かせて終了
水気の拭き取りや保湿ケアが完了したら、オムツとズボンを履かせて終了です。
【男女別】陰部洗浄の方法を解説
男性と女性では陰部洗浄の方法が少し異なるため、それぞれ分けて解説します。
女性の洗い方
まず外陰部の汚れを、シャワーボトルで洗い流します。
次に、泡立てたガーゼを使い、恥骨部やそけい部、大陰唇、小陰唇の順に洗っていきます。
大陰唇と小陰唇は汚れが溜まりやすいため、丁寧に洗ってください。
また、大陰唇を洗う際は尿路感染を防ぐため前から後ろにかけて一方向に洗い、小陰唇を洗う際は指で大陰唇を開いて内側から外側に向かって放射状に洗っていきます。
男性の洗い方
性器を持ち上げ、尿道口から下に向けてシャワーボトルで洗い流します。
次に包皮をずらし、尿道口や亀頭から陰茎の根元まで洗っていってください。
陰嚢の裏側などのシワになっている部分は、汚れが溜まりやすいのでシワを伸ばしながら丁寧に洗っていきましょう。
陰部洗浄の頻度
陰部洗浄は入浴できない日に1回だけ行います。
オムツの中は蒸れやすく雑菌が繁殖しやすいため、入浴できない場合は陰部洗浄で簡易的に洗って清潔に保ち、感染症予防に努めます。
陰部洗浄の留意点
陰部洗浄を行うにあたって、いくつか留意点があります。
どれも非常に大切なことなので、しっかりと押さえながら行っていきましょう。
- 要介護者の自尊心や羞恥心への配慮を怠らない
- 石けんは低刺激のものを使う
- たっぷりの湯量で洗い流す
- 保湿ケアもしっかりと行う
- 肌の状態もチェックする
留意点その1.要介護者の自尊心や羞恥心への配慮を怠らない
陰部洗浄は、他の介護や介助に比べて羞恥心が大きくなる介護です。
できることなら、要介護者自らがしたいと思います。
そのため介護者は、要介護者の自尊心や羞恥心への配慮を怠ってはなりません。
具体的に心がけることとして「カーテンを閉める」「素早く済ませる」「露出させる箇所は最小限に留める」が挙げられます。
素早く陰部洗浄を終わらせる工夫は、例として以下の方法があります。
- 泡で出てくるボディーソープを使う
- 陰部洗浄準備のときにガーゼを泡立てておく
- ズボンやオムツを脱がせる前に介護者は手袋やエプロンを着用しておく
- 必要なものを近くに置いてすぐ使えるようにしておく
留意点その2.石けんは低刺激のものを使う
陰部は刺激に弱いため、石けんが染みたり、色素沈着を起こしたり、最悪の場合炎症を起こしてしまったりすることがあります。
そのため、陰部洗浄で使用する石鹸は、ベビー用や敏感肌用を謳った低刺激のものを使いましょう。
留意点その3.たっぷりの湯量で洗い流す
泡や汚れの洗い残しは、皮膚トラブルを起こす原因になります。
洗い流すときは、たっぷりの湯量で洗い流しましょう。
また、洗い流す前にある程度おしりふきなどで、泡を拭き取っておくのもおすすめです。
留意点その4.保湿ケアもしっかりと行う
陰部洗浄が終わったら、必ず保湿ケアもしっかりと行いましょう。
石けんを使ったりお湯を使ったりすると、肌に必要な潤いも一緒に流されてしまいます。
もともと陰部は皮脂が分泌されないため、バリア機能が非常に低く肌トラブルを起こしやすい部位です。
保湿ケアをすると刺激によるダメージから肌を守ることができ、肌トラブルを未然に防げます。
留意点その5.肌の状態もチェックする
陰部洗浄を行うときは、肌状態のチェックも必ず行いましょう。
オムツ交換のときにも肌の状態はチェックできますが、オムツ交換のときに隅々まで見られチェックされるのは、要介護者にとって恥ずかしくストレスに感じてしまうかもしれません。
陰部洗浄でチェックを行えば、もともと隅々を見ながら洗浄を行っていくのでチェックしやすいです。
万一、床ずれやオムツかぶれ、感染症と思われるような腫れなどが見られた場合は、医療機関に相談しましょう。
床ずれはベッドと体が接する部分にできやすく、消えない赤みが特徴です。
陰部洗浄の手順や留意点をマスターして健康を守ろう
陰部洗浄の手順や留意点、行う頻度について紹介しました。
陰部洗浄を行うのは、入浴できない日に1回のみでよいです。
基本的な陰部洗浄の手順と留意点を以下にまとめます。
【手順】
- 環境を整える
- 陰部や臀部を洗う
- 洗い流す
- タオルで水気を拭き取る
- オムツを履かせて終了
【留意点】
- 要介護者の自尊心や羞恥心への配慮を怠らない
- 石けんは低刺激のものを使う
- たっぷりの湯量で洗い流す
- 保湿ケアもしっかりと行う
- 肌の状態もチェックする
正しい手順と留意点をマスターし、要介護者の健康を守りましょう。