「片麻痺がある場合、麻痺があるほうとないほうどちらから履けばいい?」
そのように悩まれていませんか?
片麻痺の方は、左半身または右半身が動かない状態に加え、拘縮などのさまざまな症状が伴っていることも多く、いくつか気をつけなければならない点があります。
本記事では、片麻痺の方の正しいオムツ交換方法と留意点を解説します。
患側・健側どちらから?パンツタイプのオムツ交換方法
患側(麻痺がある側)、健側(麻痺がない側)どちらからパンツタイプのオムツを履けばいいのか解説します。
これから紹介する方法は、本人がご自身で履く場合、介助で履かせる場合どちらにも該当する方法です。
手順
手順①椅子またはベッドに座る
まず、パンツタイプのオムツをご自身で履くあるいは履かせる場合、ベッドや椅子に座って行います。
手順②オムツに足を通す
足は麻痺がある患側からオムツに通し、次に健側の足を通します。
手順③オムツを太ももまで引き上げる
ご自身で履く場合は、麻痺がないほうの手で左右交互に引き上げながら太ももまで上げます。
介助者が履かせる場合は、両手でオムツのウエスト部分の端を持ち太ももまで引き上げてください。
手順④オムツをウエストまで引き上げる
ご自身で履く場合は、手すりにつかまるか、ベッドに仰向けになってウエストまで引き上げます。
仰向けになる際は麻痺のない側のひざを立て、踏み込むように重心をかけて腰を浮かせましょう。
介助者が履かせる場合は、要介護者に手すりなどにつかまりながら立ってもらい、ウエストまで引き上げてください。
ポイント
パンツタイプは、下に降ろすことで脱がせられますが、大便をしている際は注意が必要です。
大便をしている場合、下に降ろすときに便が足に付いてしまう可能性があります。
そのような場合は、パンツ側面にあるつなぎ目をひっぱりながら破り、脱がせるほうが良いです。
オムツを破る時は、ウエスト部分からではなく太もも部分から破るとそれほど力を使わずに破れますよ。
片麻痺を持つ方のテープタイプのオムツ交換方法
片麻痺を持つ方のテープタイプのオムツ交換方法を解説します。
テープタイプは介助者による交換方法のため、ご自身で交換を行っている方は飛ばしていただいて構いません。
手順
手順①パッドのギャザーを立たせる
パッドはペタンコにつぶれている状態のため、そのまま使用すると漏れる要因に。
まずはパッドを広げて、自分から見て横向きにします。
ギャザーが自分側と奥側にあるので、奥のギャザーの内側に人差し指、手前に親指をパッドに入れて端から端までスーッと通しましょう。
手順②空気を入れる
ギャザーを立たせたら、パッドの両端をもって軽く引っ張ってください。
舟型になる程度に引っ張ることで空気が入り、よりギャザーが立ちます。
また、空気が入ることで肌にあたる部分がふんわりとするため、肌に優しくなります。
手順③パッドとオムツをセットする
パッドをオムツのギャザーからはみ出さないようにセットします。
手順④横向きに体位を変える
要介護者を横向きにし、テープを外して排泄量を確認します。
汚れを拭き取る際は、少し温めたお尻ふきで拭き取るのが良いです。
冷たいと要介護者が驚いてしまう可能性があるためです。
手順⑤汚れているパッドとオムツを丸める
汚れているパッドとオムツを、要介護者のお尻の方に向かって巻きつけながら取り除きます。
手順⑥テープタイプオムツを体の下に差し込む
テープタイプオムツの端を少し内側に丸め、下を向いている健側の下に差し込みます。
手順⑦オムツを引き出す
要介護者の姿勢を仰向けにし、健側の下にあったオムツを引き出して横に広げます。
手順⑧そけい部に合わせて広げる
要介護者の膝を立て、下に敷かれているパッドとテープタイプのオムツを山折りにして足の間に通します。
通したあと、パッドをそけい部に合わせて広げて手で抑えます。
手順⑨テープタイプオムツを合わせて留める
テープタイプオムツのギャザーを足回りに合わせ、テープを留めます。
手順⑩最終チェック
オムツのギャザーからパッドがはみ出ていないか、また身体の中心とオムツのセンターラインが合っているかチェックして完了です。
片漏れしないためのポイント
片麻痺がある方は、健側を下にした横向きの姿勢もしくは仰向けで寝るため、片漏れしやすいです。
片漏れしないために、パッドを健側のほうに少しずらしてセットしましょう。
テープを留めるポイント
テープで留める際はしっかりフィットするよう、下のテープは斜め上に、上のテープは斜め下に向かって留めましょう。
留める順番は「下左→下右→上左→上右」です。
交換時の留意点
片麻痺がある方のオムツ交換で気をつけていただきたいポイントは3つです。
- 身体の中心はお尻の割れ目に合わせる
- 横に向かせる時は患側を下にしない
- パンツタイプのサイズ選びは慎重にする
片麻痺がある方は麻痺していない側にお尻の割れ目が曲がるため、背骨を中心にしてパッドを合わせると片漏れしてしまう可能性があります。
患側は麻痺に伴い血流循環障害も起きているため、下にすると床ずれを起こすリスクを上げます。
とはいえ、オムツ交換は短時間であるため床ずれのリスクは低いです。
しかし、わざわざもともと血流が悪い部分を下にし、より血流を悪くさせることをする必要はありません。
ご自身でパンツタイプのオムツ交換をする場合、片手で交換するのは大変なことであり、やりやすい大きめのサイズを購入する方がいます。
しかし、ご自身のサイズに合っていない場合、尿もれを起こしかねないためサイズ選びは慎重にしましょう。
オムツ交換時にできる拘縮予防
片麻痺がある方は、筋肉の萎縮や関節の可動域が狭くなるといった拘縮の症状が出やすいです。
また、患側は血流循環障害が起きているため、体位をこまめに変えたとしても、床ずれを起こすことがあります。
実は、オムツ交換時にも拘縮や床ずれを予防するコツがあるので、ご紹介します。
拘縮予防のコツ
オムツ交換時は、股関節を開かせる動作が必要です。
その際、これまでの介護現場では「曲がってしまう足を伸ばして閉じてしまう股関節は開く」という方法で行われてきたのですが、実はよくありません。
というのも、より筋肉を緊張させるため拘縮が進んでしまうケースが少なくないからです。
拘縮を予防するための股関節の開き方は「足は伸ばさず曲がる方向に動かす」です。
詳しい予防法を3ステップに分けて紹介するので、実践してみてください。
股関節を開く手順
ステップ1.膝を立たせる
仰向けに寝ている要介護者の膝を立たせて曲げます。
膝を立たせることで要介護者の背中が反りにくくなり安定性が増します。
また、筋肉の緊張を和らげることも可能です。
ステップ2.膝とかかとに触れながら片足を外側に動かす
要介護者の膝が動かないようを支えながら、かかとをもち少しずつ外側にスライドさせながら片足を動かします。
同じ要領でもう片方の足も外側に動かしましょう。
足をハの字にすることで、股関節の筋肉を内股側に動かせるようになり、また筋肉の緊張も緩和できます。
ステップ3.股関節を開かせる
内側に入っている膝を左右に開き、股関節を開かせれば完了です。
片麻痺がご自身でオムツ交換する際は患側から行う
今回は、片麻痺がある方のオムツ交換方法、留意点を主に紹介しました。
パンツタイプのオムツを使用してご自身で交換を行う場合、まずは麻痺がある患側から足を入れてから麻痺のない健側に足を入れて、徐々に上にあげていきます。
テープタイプを使用し介助者が交換を行う際は、健側を下にしてオムツ交換を行いましょう。
片麻痺がある方は血流循環障害や拘縮などさまざまな症状を伴います。交換の際には転倒などに気をつけながら行ってくださいね。