2021年6月に承認となった、新規心不全治療薬である、ベリキューボ (一般名 ベルイシグアト)について解説していきます。
ベリキューボの作用機序
本剤は、心筋収縮力、血管緊張、心臓リモデリング等の生理機能の調節に関わる環状グアノシン一リン酸(cGMP)を生成する可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)を、一酸化窒素(NO)非依存的に、またNOを介して刺激し、cGMPの生成を促進する。
添付文書より
慢性心不全患者さんは、NO酸性の低下やsGCのNO感受性低下によって、血管機能・冠血流・全身血流などに異常をきたしています。
全身の血管の機能が低下することで、血流全体の機能が落ち込み、それを補うために心筋に負荷がかかり、さらに心不全が進行するという悪循環が生じています。
また、NOやsGC、cGMPなどに関与する経路をNO-sGC-cGMP経路と呼び、この経路にトラブルが生じることで、血管や血流のみではなく、心筋硬化の更新や炎症の出現、心筋が肥厚するなどの悪影響が出現します。
このNO-sGC-cGMP経路をターゲットとする薬剤がベリキューボです。
可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激剤ベリキューボ
ベリキューボは可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激剤に位置づけられており、選択的かつ特異的にsGCに結合することで薬効を発現します。
ベリキューボの2つの薬理作用
- sGC直接刺激作用
- NOのsGC感受性亢進作用
ベリキューボの薬理作用は主に2つです。
sGCを直接刺激する作用と内因性一酸化窒素(NO)に対するsGCの感受性を高める作用の2つの作用機序により、濃度依存的に環状グアノシン一リン酸(cGMP)の産生を増加させます。
最終的にはcGMPの産生を更新させることで心不全に効果を表しますが、その作用経路はsGCへの直接的な刺激とNOに対するsGC感受性亢進という2つの作用に分かれています。
ベリキューボのエビデンス
ベリキューボのエビデンスはVICTORIA試験(国際共同第Ⅲ相試験)によって検証されています。
ACE阻害薬、ARB、β遮断薬及びMRA等の慢性心不全の標準治療を受けているLVEFの低下した慢性心不全患者さんを対象に、ベリキューボ又はプラセボが1日1回食後に経口投与されています。
ベリキューボは2.5mgより投与を開始し、投与2週間後に5mg、投与4週間後に目標維持用量で ある10mgに増量した。なお、血圧、忍容性等に応じて、2週間程度の間隔で1日1回2.5~10mg の範囲で用量を調節した。投与期間は最終来院までとし、可能な限り継続した。
主要評価項目:心血管死又は心不全による初回入院の複合エンドポイント発現までの期間
VICTORIA試験の結果
画像)適正使用ガイドより
【DI】ベリキューボの使用方法・副作用
効能効果
慢性心不全
ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
効能効果に関連する注意
左室駆出率の保たれた慢性心不全における本剤の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。
用法用量
通常、成人にはベルイシグアトとして、1回2.5mgを1日1回食後経口投与から開始し、2週間間隔で1回投与量を5mg及び10mgに段階的に増量する。なお、血圧等患者の状態に応じて適宜減量する。
添付文書に厳密な容量調節の基準が定められていますので、使用時には添付文書を必ず一読しておきましょう。
副作用
重大な副作用としては低血圧(7.4%)が報告されています。
また、めまいや頭痛、貧血なども低頻度ではありますが報告があるため、注意が必要です。