介護の現場では、患者さんのオムツ交換をおこなう機会は多いでしょう。
オムツ交換は、基本的な手順を覚えてしまえば難しい介助ではありません。
しかし、患者さんそれぞれに合わせた介助をおこなう必要があるため、自信を持って「オムツ交換は得意な介助」だと言える方は多くないでしょう。
今回は、オムツ交換のなかでも特に工夫が必要な「片麻痺の患者さんのオムツ交換」について詳しく解説します。
片麻痺の病態も解説するので、この記事を読むと「片麻痺の患者さんのオムツ交換」を自信を持っておこなえるようになるでしょう。
片麻痺の患者さんのオムツ交換でよくあるお悩み
まずは、片麻痺の患者さんのオムツ交換で、よくあるお悩みについてご紹介していきます。
- オムツがずれていたことで、服まで汚染してしまう
- 患者さんの身体の動かし方が限定されているため、オムツ交換に時間がかかる
- 寝たきりの患者さんの場合、オムツ交換がスムーズにできない
片麻の痺患者さんのオムツ交換には、以上のようなお悩みがありました。
やはり、基本のオムツ交換では対応できない場合あり、介護の現場では経験から「片麻痺の患者さんのオムツ交換」のポイントを学ぶことが多いようです。
片麻痺とは
片麻痺の患者さんのオムツ交換のお悩みを解決するためには、まずは片麻痺の特徴を知る必要があります。
ここでは、片麻痺の病態と注意すべきポイントについて解説します。
片麻痺の病態
片麻痺とは、左右どちらかにみられる上下肢の運動麻痺のことをいいます。
つまり、体の片側が自由に動かない状態です。
原因の多くは、脳血管障害で、脳梗塞後や脳出血後の後遺症として片麻痺が残る場合が多いでしょう。
患者さんは、今までできていた日常生活動作が難しくなります。
例えば、片麻痺の状態はただ片手もしくは片足が動かないだけではなく、バランスもとれません。
ふらふらしてしまい、安定して立っていることが難しくなるだけでなく、座っている状態でもめまいのようなふらつきが出る場合もあります。
また、感覚障害が起こるケースもあり、麻痺側の手足のしびれが残ることや感覚が鈍く感じることもあります。
麻痺側は筋力や体を支える力も低下するので、脱臼やケガに注意する必要があるでしょう。
このように、片麻痺の患者さんの介助は注意すべきポイントがあり、外から分からない体の状態に常に配慮する必要があります。
片麻痺の患者さんのオムツ交換
片麻痺の患者さんの特徴や注意すべきポイントがわかったところで、ここからはオムツ交換の手順やポイントを解説していきます。
オムツ交換の必要物品
まずはオムツ交換に必要な物品から準備していきましょう。
【必ず準備する物品】
- 新しいオムツ
- 尿取りパッド
- おしりふきシートやタオル
- 廃棄物入れ
- 使い捨て手袋
【必要であれば準備する物品】
- 交換用シーツ
- 着替え
- 陰部洗浄用シャワーボトル
オムツ交換の手順
次にオムツ交換の手順を解説していきます。
片麻痺の患者さんの場合、身体の動かし方が制限されるため、工夫すべきポイントがいくつかあります。
テープ式の交換方法とパンツ式の交換方法を、基本のオムツ交換の流れに加えて、それぞれ解説していきます。
基本のオムツ交換は、以下の流れです。
- 患者さんに説明をする
- オムツ交換の準備をする
- 古いオムツを外し、排泄物をふき取る
- 新しいオムツを付ける
- 後処理をおこなう
1.患者さんに説明をする
まずは、患者さんに今からおこなう介助を説明し、同意を得ましょう。
排泄介助は、患者さんにとって羞恥心を感じてしまうことも少なくありません。
患者さんの気持ちに寄り添い、親身になって接することが大切です。
また、患者さんに自分でできることは協力してもらうと、患者さん本人や介護者にとってもスムーズなオムツ交換がおこなえるでしょう。
2.オムツ交換の準備をする
まずは、オムツ交換の準備をしましょう。
新しいオムツを広げておくと交換がスムーズです。
オムツの広げ方にもコツがあり、テープ式とパンツ式で異なります。
【テープ式】
テープ式のオムツの前後を持ち、2〜3回ギャザーを伸ばします。
これにより、ギャザーが立ち上がるので横漏れしにくくなります。
【パンツ式】
新しいオムツの中に手を通し、前後にギャザーを伸ばします。
尿取りパッドを併用する場合は、パンツの中にセットしておきます。
この時、尿取りパッドがパンツのギャザーの内側に収まるようにセットしましょう。
3.古いオムツを外す
次に、古いオムツを交換します。
【テープ式】
まずは、患者さんに横向きになってもらいましょう。
横向きの体位が安定しない場合は、無理せず介助者2名で介助します。
この時、古いオムツを外しやすいように、体が向く方のテープ部分を体の下に敷きこみましょう。
周囲が汚れないように、排泄物をオムツの一部分を使って包みます。
おしりふきシートやタオルで、陰部とおしりを拭きます。
古いオムツを丸め込みながら、今度は患者さんに反対側に向いてもらい、古いオムツを乗り越える形でオムツを抜き取りましょう。
【パンツ式】
患者さんには、トイレの便座に座ってもらいます。
準備が整ったら、患者さんに手すりを持ってもらい立ち上がってもらいましょう。
パンツ式のオムツは下着のように下げるか、オムツの横のつなぎ目を下から左右に引っ張ると破くこともできます。
尿の場合だとオムツを下着のように下げても汚染するリスクは少ないですが、便の場合だと足や服を汚してしまうリスクがあるので、オムツを破く方法がおすすめです。
おしりふきシートやタオルで、陰部とおしりを拭きます。
4. 新しいオムツを付ける
最後に、新しいオムツを付けます。
【テープ式】
お尻を自分で上げられる患者さんには、介護者がオムツの後ろ側を持ちながら、患者さんにおしりを浮かせてもらうよう説明し、新しいオムツを装着します。
難しい患者さんは、再度横に向いてもらい、セットしていた新しいオムツを体の下に入れこみます。
その後、仰向けになってもらい、オムツをきちんと調整しましょう。
足回りにギャザーをフィットさせながら、オムツを股の間から引き上げ、テープで固定します。
この時に足周りやウエスト周りがゆるすぎると、オムツから横漏れしてしまう場合があります。
オムツを骨盤の形に合わせるように、下のテープを斜め上側に向かって止め、上のテープは斜め下側に向かって止めましょう。
テープタイプはオムツとお腹の間に指が2~3本入る程度が目安です。
【パンツ式】
患者さんに便座に座ってもらい、左右の足に新しいパンツを通し、膝辺りまで上げておきます。
次に、患者さんに手すりにつかまってもらい、立ち上がってもらいます。
この時、介助者は患者さんの後ろ側に立ちましょう。
患者さんが不安定であれば、介助者の足で患者さんの体を支えます。
新しいオムツを引き上げて、ギャザーを整えます。
後ろから介助するので、オムツの前側もしっかり引きあがっているか確認しましょう。
5.後処理をおこなう
患者さんに気持ち悪いところがないか確認して、オムツ交換が終了したことを伝えます。
排泄物の性状を確認し、施設や病院で決められている処理方法に従って処理しましょう。
片麻痺の患者さんのオムツ交換の3つのポイント
ここでは、片麻痺の患者さんのオムツ交換のポイントについて解説します。
以下で、それぞれ説明しましょう。
- 適切なサイズのオムツを選ぶ
- オムツの中心線を合わせる
- オムツ交換に必要な作業環境を整える
適切なサイズのオムツを選ぶ
まずは、患者さんの体型に合った適切なサイズを選ぶことが重要です。
片麻痺の患者さんの場合は、片方の足が動かしにくいので、オムツのギャザーがフィットせずにずれたり漏れたりする可能性があります。
患者さんが自分でオムツを引き上げる場合は、引き上げやすいように大きめのサイズを選びがちですが、大きすぎるオムツは漏れや不快感に繋がります。
パンツ式は腹部のサイズ、テープ式はお尻のサイズに合わせて選びましょう。
オムツの中心線を合わせる
漏れや不快感のないオムツ交換に大切なのは、オムツの中心線に体の中心が合っていることです。
最近のオムツは、中心に印がついている商品がほとんどなので、オムツ交換を終えたら、必ずオムツの中心線が体の中心にあるか確認しましょう。
しかし、片麻痺の患者さんは体の片側に麻痺があるため、体の中心に合わせるとオムツの片側だけ汚れてしまう場合があります。
その時は、あえて汚れやすい方にオムツを寄せて付けてみましょう。
オムツ交換に必要な作業環境を整える
片麻痺の患者さんは体をスムーズに動かすことが難しいため、オムツ交換には時間がかかる場合があります。
何度も患者さんの体の向きを変えたり、何度も必要な物品を取りに戻ると、患者さんの負担は大きくなります。
患者さんの負担を軽減するためには、オムツ交換の作業環境の調整が欠かせません。
必要な物品は必ずそろえておきましょう。
片麻痺の患者さんの特徴を理解すると「片麻痺の患者さんのオムツ交換」に自信が持てる
今回は、片麻痺の患者さんのオムツ交換について解説しました。
オムツ交換は基本のケアですが、患者さんそれぞれに合わせた介助をおこなう必要があるので、工夫しながら患者さんが快適に過ごせるようなケアを目指しましょう。